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MEBUKI IP Small Talk 2月号(2022年)

目次

1.米国における不使用商標排除の強化(商標近代化法)

2.個人の生き残り

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1.米国における不使用商標排除の強化(商標近代化法) パートナー・弁理士 長谷川洋

(1)2021年12月18日、米国において、商標近代化法(Trademark Modernization Act of 2020)が施行された。この法律は、外国(特定の国だが)からの大量の商標出願および登録商標であって使用義務を果たしていないものを排除するのが目的ともいわれている。従来から、日本の不使用取消審判に相当する当事者系の登録商標取消の制度は存在していたが、この制度による手続は、請求人に利害関係の要件を課し、かつ費用と時間のかかる司法手続に準じた当事者系手続であることから、その利用頻度が低かった。そのような事情もあって、商標近代化法は、以下(2)~(4)に記載した3つの不使用商標取消手続を規定した。詳細は、
https://www.finnegan.com/ja/insights/ip-updates/USPTO-Trademark-Modernization-Act-Rules-Become-Effective-December-18-2021.html
又はhttps://mebuki-iplf.jp/ip_us08.php を参照いただきたい。

(2)査定系取消手続(ex parte expungement)
 この手続は、商標登録後に一度も使用されていないことを理由に登録商標の取消を求めるものである。この取消手続については、商標登録後3年経過後10年までの期間内に何人ともUSPTO長官に対して請求可能である。2023年12月27日までは、商標登録から3年以上経過している限り10年を超えていても請求可能である。この手続きでは、日本の不使用取消審判と異なり、請求人側に、ある程度の不使用の立証責任がある。「これだけ調査したが、使用の事実は認められなかった」と言えるだけの調査を記載しなければならない。
 日本などの外国からの米国への商標出願は、①米国での商標の使用実績に基づくもの、②米国での使用実績はないが登録査定までには使用するもの、③外国で登録された商標について登録後の使用義務を果たすことを約束して登録を受けるもの、④マドリッド・プロトコル経由で米国登録を受けるもの等、複数のルートで登録可能である。この内、③の場合、米国で使用していなくとも商標登録を受けられる。ただし、商標登録後5年目〜6年目の間に登録商標の使用を宣誓できないと不使用の指定商品・役務については抹消となる。日本などの外国出願人は、商標登録から少なくとも5年間は、不使用でも商標登録を維持できる。
 しかし、商標近代化法の施行後は、③については、商標登録から使用の宣誓を行うまでの期間の登録維持を約束されるわけではない。誰かが査定系取消手続を請求した場合には、商標登録から5年以内であっても商標登録が取り消される可能性がある。日本からの出願人は、この点に留意すべきである。

(3)査定系再審査手続(ex parte re-examination proceeding)
 この手続は、過去の使用要件を満たさずに登録を受けたことを理由として取り消す点で、登録後に一度も使用されていないことを理由として取り消す上記査定系取消手続とは異なる。この手続は、商標登録日後5年以内に何人もUSPTO長官に請求できる。なお、請求人側に、使用義務違反で不正登録を受けたことを立証する義務がある。

(4)商標部(TTAB)の取消理由の新規追加
 従来から、他人の登録商標により損害を受けた者は、USPTOの商標部(TTAB)にその商標登録の取消を求めることができる。不使用を理由とする取消は、明文化されていないが、類似混同による損害と同様、商標登録から5年以内であれば取消請求可能である。ただし、先に述べた理由から、使用頻度は低かった。  商標近代化法は、従来制度の活用頻度の向上を趣旨として、従来からの取消事由に加えて、商標登録から3年経過後であれば(商標登録から5年経過後であっても良い。)、登録商標が全部或いは一部の指定商品役務において今まで米国市場で使用されたことがないことを理由に取消請求が可能となった。

(5)謝辞
 米国商標近代化法については、Hauptman Ham, LLPの米国特許弁護士・柿本礼奈様から助言いただきましたことをここに御礼申し上げます。

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2.個人の生き残り                   顧問・弁理士 渡邉秀治

(1)前号では「個人から組織へ」と題し、個人の知識、経験、暗黙知を組織の資産にすることの重要性をお話した。今回は、個人の生き残りについて述べたい。

(2)サラリーマン時代から、「平林商店」「藤森商店」「東海林商店」など商店経営者の感覚で仕事をしてきた。サラリーマンは、仕事が自動的に割り振られ、仕事が来るのが当たり前と思いがち。その仕事があなたを頼りにして来たのか、単に割り振られただけなのか、そこがポイント。商店は、仕事が来る、リピートが来る、商品を買ってもらう、ことが命。そのために種々の努力をし、生き残りを図る。サラリーマンも同じ気持ちで働く必要がある。実力をつけることが第1番。「THE 21」(2022年3月号)に法政大学の田中研之輔教授が「自律的なキャリア形成は、キャリア資本が鍵になる」とし、キャリア資本とは、ビジネス資本(仕事の経験や役立つスキル)、社会関係資本(人の結びつき)、経済資本(挑戦のため、生活のための資産)の3つとされている。私は、ビジネス資本の場合、業界のトップ10%以内(好ましくは5%以内)のものにする必要があると思っている。田中教授は、この3つの資本の自己の洗い出しが必要とされている。

(3)私は、成果の面では、100%+αを常に目指してきた。100%は、依頼人の目的を達成するもの。αは、依頼人の目的のさらに上をいくもの。依頼人のレベルが高い場合、αも相当に高いものとなる。また、100%は自分のベストな作業の結果のもの。手を抜くことはしない。なぜなら、若い時に卓球選手だったのだが、素人さんを相手に手を抜いた動きをすると、その動きが体に染みつき、咄嗟のときや勝負のときに、その手抜きが出てしまう。脳の働きも同じだと考えていて、手抜きはせず、常に100%以上を心がけてきた。

(4)以上のような私の考え、動き方や田中研之輔教授の示唆が個人の生き残りにどれほど役に立つかは分からない。人生80年は普通になった今、60歳、65歳を過ぎてからの人生も長い。その20年、15年の生き残りを考える時代になった。

以上

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