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MEBUKI IP Small Talk 10月号(2025年)

目次

 グローバル・イノベーション・インデックスによる日本の世界ランキング(その2)

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グローバル・イノベーション・インデックスによる日本の世界ランキング(その2)
                         代表パートナー・弁理士 長谷川洋

前回の概要
 前回、2007年から世界知的所有権機関(WIPO)が毎年公表しているグローバル・イノベーション・インデックス(Global Innovation Index: GII)という各国のイノベーション能力を表す指標について紹介させていただいた。日本は、2024年のGIIの評価において、世界第13位であり、アジアで第4位であることも紹介させていただいた。日本は、同じアジアの国である韓国やシンガポールに負けているわけだが、今回は、どのような点で負けているのかを述べたい。

(1)GIIの評価項目
 GIIの評価項目は、イノベーションを生み出す環境を意味する「インプット」と、インプットにより生み出された成果物を意味する「アウトプット」に分かれている。インプットは、以下の5項目に分かれている。アウトプットは、以下の2項目に分かれている。GIIは、インプットの5項目とアウトプットの2項目の総スコアで評価される。
 インプット:
  ・制度
  ・人的資本と研究
  ・インフラ
  ・市場の洗練度
  ・ビジネスの洗練度
 アウトプット:
  ・知識・技術の成果物
  ・創造的成果物

(2)日本・韓国・シンガポールの世界ランキング比較
 まず、日本・韓国・シンガポールの世界ランキングの内訳をみてほしい。
(日本)
総合:13位
 インプット:12位
  ・制度:23位
  ・人的資本と研究:19位
  ・インフラ:13位
  ・市場の洗練度:8位
  ・ビジネスの洗練度:6位
 アウトプット:14位
  ・知識・技術の成果物:12位
  ・創造的成果物:22位
(韓国)
総合:6位
 インプット:6位→日本より上
  ・制度:24位
  ・人的資本と研究:1位→日本より圧倒的に上★
  ・インフラ:9位→日本より上
  ・市場の洗練度:15位
  ・ビジネスの洗練度:5位→日本より上
 アウトプット:10位→日本より上
  ・知識・技術の成果物:12位
  ・創造的成果物:2位→日本より圧倒的に上★
(シンガポール)
総合:4位
 インプット:1位→日本より上
  ・制度:1位→日本より圧倒的に上★
  ・人的資本と研究:2位→日本より圧倒的に上★
  ・インフラ:11位→日本より上
  ・市場の洗練度:7位→日本より上
  ・ビジネスの洗練度:3位→日本より上
 アウトプット:11位→日本より上
  ・知識・技術の成果物:9位→日本より上
  ・創造的成果物:19位→日本より上

(3)韓国・シンガポールと比較して日本に足りないこと(私見)
 日本は、インプットおよびアウトプットの両面で、韓国およびシンガポールに負けている。特に、上記(2)で★の付いている以下の(a)(b)(c)の3種類の項目で差を付けられている。
 (a)制度
 制度は、イノベーションを創出するためのハード/ソフト両面の環境である。日本が、制度のスコアを上げるには、ワンストップサービスの充実、起業プロセスの簡素化、政権横断的なイノベーション戦略の構築が必要だと思われる。
 (b)人的資本と研究
 人と研究については、韓国とシンガポールに大きく差をつけられている。対策としては、若手研究者の支援、産官学の連携強化、優秀な外国人留学生の受け入れ緩和が挙げられる。
 (c)創造的成果物
 創造的成果物では、特に韓国に差をつけられている。創造的成果物は、研究成果、知財創出も含む。日本は、最近では理系離れの傾向にあるが、資源の少ない日本では、研究開発や知財創出(特に発明・考案・デザイン)の活性化は避けて通ることはできないと思われる。今後、民間企業・公的研究機関・大学を問わず、創造的成果物をどんどん出していく必要がある。そのためにも、理系学生を増やすというインプットが必須になってくると思われる。

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