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欧州意匠制度の一部改正
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2025年5月1日に、欧州意匠制度の一部改正が施行された。来年2026年7月1日には、さらに追加の改正が行われる予定である。
欧州諸国で意匠権を取得する場合、権利取得希望者は、
(A)欧州各国ごとに意匠出願するか、
(B)EU加盟国に対して一括で意匠権の効力が及ぶ出願をEUIPO(スペイン王国に設立される欧州意匠・商標庁である)に行うか、または
(C)ハーグ条約に基づく国際意匠登録出願を行って欧州各国またはEUを指定するか、
のいずれかを選ぶことになる。
今回の改正は、(A)には関係がなく、(B)または(Cの一部)においてEU諸国全部に権利効力が及ぶ欧州意匠権を取得する場合に関係する。
今月、欧州代理人によるウェビナーの中で改正の主要部分が紹介された。ここでは、欧州代理人によるスピーチの内容に限定した改正概要を述べたい。
改正概要
以下、すでに今年5月1日から施行された内容に限定して述べ、来年7月1日改正予定の概要については省略する。
(1)国際意匠分類意匠に関係なく最大50意匠を一出願可能
従来は、ロカルノ条約という国際意匠分類内であれば複数意匠を一出願可能であったが、今回の改正は、ロカルノ条約の分類内という制約が撤廃され、単純に50件を上限とした一出願を可能にした。
(2)新しいタイプの意匠保護
これが今回の改正の目玉といってもよい。
従来から、欧州意匠権の保護対象は、世界的にも広くて有名であるが、改正によってさらに広くなった。日本の意匠の保護対象もそれなりに広いが、装置の操作や出力に全く関係のない2D画像や3D画像、さらにはアニメーション(動画)までも保護対象となる点で、欧州意匠の保護対象は極めて広い。
(新たに加わった保護対象)
・表面への照明効果、ビデオゲーム内の仮想アイテム、仮想資産(非代替性トークン)などの非物理的な形態
・製品の色の移行、複雑な製品の動きといった製品の機能の移動、移行、またはその他のアニメーション
・小売店の配置、ビデオゲームやメタバースなどの仮想世界における空間の配置
(3)意匠の実施行為の追加(侵害行為としての追加ともいえる)
3Dプリンティングが追加となった。
また、デザインを記録したメディアまたはソフトウェアの作成、ダウンロード、コピー、共有、または他者への配布も追加となった。
(4)スペアパーツの供給が原則非侵害行為となった
「修理条項」が変更され、部品に関する意匠権の保有者は、第三者が製品の修理用に部品を市場に供給することを妨げることができなくなった。ただし、部品を供給する第三者は、当該部品がオリジナル製品ではないことを消費者に通知する必要がある。
(5)登録意匠表示の導入
円の中にDを入れたマーク(ここでは、“マルD”という。)に決定。ただし、登録意匠にマルDを表示することは義務ではない。
(6)欧州意匠の名称を変更
従来、コミュニティデザインという名称が使用されていたが、EUデザインという名称に変更となった。
以上が欧州代理人による改正概要であるが、欧州意匠の改正項目は他にもある。欧州意匠の改正内容にご興味のある方は、以下のURLにもアクセスいただきたい。
リンク:It is finally real – changes to EU design law start to take effect
リンク:https://www.studiotorta.com/en/on-may-1-2025-phase-i-of-the-eu-desigpackage-reform-will-start/(ページ閉鎖のため、リンク削除)
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