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目次
ニュージーランドでの商標の出願についての諸々
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(1)弊社は、ニュージーランドに拠点を持っている。ニュージーランドで特許・意匠・商標を出願したいお客様がいる場合、拠点を経由して現地の弁理士に種々相談して、よりよい権利化を図ることができるわけである。海外での知的材案権の取得を考える最近のお客様の中には、米国、欧州、中国のみならず、ニュージーランドも含めたオセアニアも考えている方が少なくない。そのような経緯から、今回は、ニュージーランドの商標に絞ってお話したい。
(2)日本は、特許・実用・意匠・商標の中では特許出願の数の多い国であるが、ニュージーランドは商標出願の数の多い国である。2020年のデータであるが、ニュージーランドの商標出願数は年間約27000件である(注1)。
(3)ニュージーランドにおける商標出願の数は、年々増加傾向にある。このため、ニュージーランド知財庁は、2024年に審査期間の見直しを行い、従来よりも長めの審査期間を要することを公表した(注2)。その公表内容は、商標出願日から15営業日以内に最初のオフィスアクションを発行していた過去の運用を、35営業日以内に延ばすものである。35営業日というと、2カ月弱である。しかし、2025年5月の時点でニュージーランド知財庁のウェブサイトで確認すると、前記の35営業日以内という話は更新されており、国内商標出願の場合で70営業日以内、マドリッドプロトコルに基づく国際登録出願でニュージーランドを指定国に含むもので75営業日以内、と記載されていることを確認した(注3)。日本では、早期審査をしない限り、出願から最初のオフィスアクションまでの期間はおおよそ6~8カ月である。ニュージーランドの審査は、70営業日に長期化したといってもまだ日本より速い。ちなみに、ニュージーランドでは、特許出願には早期審査制度があるが、商標出願には同制度が無い。商標に早期審査制度が無くても、現在の審査スピードを維持するなら問題はなさそうである。
(4)ニュージーランドと日本の両商標制度には、共通点が多い。あえて異なる点を挙げるなら、それは、ニュージーランドの商標制度が「匂い」の商標を保護対象としている点である。ニュージーランド知財庁のウェブサイトで提供しているデータベースにて匂いの商標を調べると、何件か見つかった。そのうちの1つを見ると、日本語訳にすると、以下のような説明が記載されていた。言葉で匂いを特定して出願するようである。
(説明)・・・日本語訳
「この商標は、ニュージーランド南島西海岸の熱帯雨林の香りを構成する香りであり、具体的には、香りに触れてから約2秒間続くシトラス(レモンピール)とタラタとダグラスファーのヘッドノート、ヘッドノートが消えてから約1秒間続くダグラスファー、リム、トアトアの甘く深みのある松脂のハートノート、そして約3秒間続くカルダモンとカシアの甘くスパイスの効いたベースノートからなる。」
(5)もう1つだけ日本とニュージーランドの相違点を挙げるなら、ニュージーランドでは、審査官は、審査をして登録可能と判断すると、商標出願の内容を第三者に公表して3カ月間の異議を申し立てる期間を与え、異議がなければ登録する、ということである。このような制度を付与前異議申立制度と称し、かつての日本の商標法も導入していた。現在、日本は、審査を通過して商標登録の後に第三者に異議の機会を与える付与後異議申立制度を運用している。
(6)先願商標調査に関して、最後に述べたい。ニュージーランドの先願登録商標を調べたいと思ったら、ニュージーランド知財庁のウェブサイトよりも、WIPOが提供するGlobal Brand Database(注4)にアクセスして調べる方が簡単である。Global Brand Databaseは、ニュージーランド以外にも、多くの先進国(日本も含む)の商標データを提供してくれる。Global Brand Databaseにアクセス誤表示されたページで、IP Officeに、IPONZを入力して検索すると、見やすい結果が得られる。一度、試してみてはいかがだろうか。
(注1)New Zealand IP Filing Trends
(注2)Lexology
(注3)ニュージーランド知財庁
(注4)WIPO Global Brand Database
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