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2025年5月に都内特許事務所の事業を承継
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今年(2025年)に入り、東京都内の特許事務所Xの事業を承継するための様々な業務を行い、慌ただしい数カ月を過ごしてきた。「様々な業務」の中身の主なものは、Xと弊社の両顧客のコンフリクトチェック、事業譲渡契約、X所属の弁理士との新たな契約(雇用または業務委託)、弊社の期限管理ソフトへの入力作業、Xの主要顧客への挨拶などである。弊社は、今から3年少し前に、やはり都内にあった特許事務所の事業を承継した経験をもっている。このため、今回の事業承継の作業手順については熟知していた。2回の事業承継の経験の中で勉強になったことは沢山あるが、その中の主な事項を3点ほど(1)(2)(3)にて述べたい。
(1)事業承継の最大の壁は主要顧客同士のコンフリクトである
弊社は、8年前に2つの事務所の合併、3年前に第1回目の事業承継、そして今年の第2回事業承継という経験を積んできた。これらの経験から合併や事業承継を阻む最大の障壁は、互いの主要顧客同士のコンフリクトであると理解している。互いに競合関係にある顧客の仕事は、両顧客の同意がないと引き受けられないからである。この障壁にぶつかると、多くの場合、合併や事業承継は不可となってしまう。幸いにも、今までは越えられないほどの大きなコンフリクトはなかった。しかし、今後、事業承継を行う場合に大きな障壁がないとは言い切れない。
(2)事業譲渡には「売り時」がある
過去に、事業を売りたい・買いたいという事務所間のマッチングを行う弁理士会の企画に参加したことがある。また、そのような企画および上記2回の事業承継以外にも、他事務所から、事業譲渡の話を受けたことはある。それらの機会を通じて感じたことは、「事業譲渡の決断が遅い」ということである。もっと早い時期に事業譲渡の決断をしていれば、譲渡側も承継側もウィン・ウィンになったであろう。しかし、経営が立ち行かなくなって、顧客もほとんどいなくなってからの譲渡は、事業を承継する側からみれば魅力なしである。譲渡側の経営者は、ある程度の顧客がいるが、将来を考えると事業を譲渡した方が良いと判断した時期(好機)を逃さないことが重要である。
(3)事業承継の場合の多くの作業は事務方に重くのしかかる
譲渡側の案件を承継する場合、その案件の期限管理は必須となる。期限管理ソフトが同一であれば、作業負荷は少し減るのだが、ソフトが異なると、作業負荷は非常に大きくなる。また、期限管理のみならず、譲渡側の事務所と、承継側の事務所との間には、業務の流れも違えば、費用請求額も違う。承継側の事務所のルールにすべてを統一するのは極めて難しい。それは、譲渡側事務所の顧客事情も考慮する必要があるからである。結局、事業承継後、複数のルールが併存することになり、事務方の負荷が大きくなる。
ある予測によると、日本の特許事務所の数は、10年後には3割減になるとのことである。今後、事業譲渡・承継は全国的に増加すると思われる。弊社も、その例外ではなく、譲渡側、あるいは承継側になる可能性はある。そのときに、今までの合併・事業承継の経験が活きてくると思う。
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