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MEBUKI IP Small Talk 12月号(2024年)

目次

 欧州・ドイツ特許弁理士との談話の一幕

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欧州・ドイツ特許弁理士との談話の一幕
                   代表パートナー・弁理士 長谷川洋

(1)今年も弊社のメルマガをお読みいただき、ありがとうございました。1年は早いもので、もうすぐ2024年が終わろうとしている。今年、野球ファンの方は、ドジャースのMLBワールドシリーズ優勝や、大谷選手の50-50達成に歓喜したと推測します。また、今年は、円安の後押しもあって、昨年に比べてインバウンド消費が増加し、飲食・ホテル・観光の分野の収入が増えたそうなので、一部の企業・店舗はその恩恵にあずかったのではないだろうか。

(2)しかし、経済全体でみると、決して喜べない。昨年、日本の名目GDPは、ドイツに抜かれて世界4位となった。ちなみに、世界1位は米国、世界2位は中国である。IMFの予想によれば、日本の名目GDPは、2025年にはインドに抜かれ、世界5位に転落するそうである(注1)。インド、中国および米国は、いずれも日本より人口の多い国であるから、当然と思う人もいるかもしれない。しかし、人口一人当たりの名目GDPでは、日本は、2023年時点で世界32位であり、ドイツはもとより、英国、フランス、イタリア、さらには隣国の韓国よりも低いのである(注2)。日本の名目GDPは、人口の多さでなんとか世界4位となっているのが実情である。

(3)先月、ビジネスでおつきあいのある欧州・ドイツ特許弁理士S氏が弊社・横浜オフィスを訪れた。最近は、外国の弁護士や弁理士が来た際に、高級飲食店をあえて避け、平均レベルの飲食店にいくようにしている。費用削減という趣旨ではなく、日本人の普段の食事を知ってもらう趣旨からである。今回は、焼肉店を選んだ。ドイツ人であるS氏に訊いたところ、焼肉店には初めて来たそうである。話は、前述のGDPやドイツの景気の話題からはじまった。ドイツは、名目GDPが世界3位になったといっても、S氏自身の感覚では、全く景気がよい実感はないそうである。メルセデスベンツやフォルクスワーゲンといった自動車関係の企業の経営状態は良くないし、ロシア-ウクライナ間の戦争状態の長期化により、ドイツのエネルギー価格が猛烈に高騰している、とのこと。加えて、政治的な不安定さも最近ではめだってきたそうである。

(4)S氏とは知財の話もした。S氏は、欧州特許庁(EPO)への出願以外に、欧州各国(ドイツも当然含まれる)への出願も選択肢に入れることを勧めた。理由は、簡単で、EPOの審査を経て特許登録に至るまでの費用が非常に高いことにある。EPOでの特許登録後に、欧州単一特許制度を利用して単一特許化を選択し、または単一特許ではなく各国有効化手続を5カ国以上で行うなら、EPOの選択は費用対効果の面で正解である。しかし、単一特許を選択せず、かつ有効化手続が1又は2カ国の場合、EPOの選択は高くつく。欧州において3カ国以下で特許化するなら、その特許化したい国ごとに出願又はPCT出願移行を行う方が低コストで済む。ただし、注意すべきは、欧州には、PCT出願からの移行手続きを許容していない国(例えば、フランス)も少なくないことである。S氏は、ドイツ人ということもあり、ドイツでの実用新案も勧めた。理由は、いくつかある。第一に、ドイツの実用新案は、日本の実用新案と異なり、化学組成物も保護対象に認めている。第二に、ドイツの実用新案の費用は非常に安い。第三に、EPOの出願から分岐してドイツに出願(実用新案の出願も含む)を行った場合、両出願間で同一発明があっても良い。第四に、権利行使の際に日本のような技術評価書を用いるといった煩雑さや、権利無効の際に権利者側に責任を負わせる規定もない。第五に、これは特許も同じなのだが、侵害訴訟と、権利無効訴訟は、完全に分離されているため(これをダブルトラックという。)、権利が無効にならない限り、権利が有効である前提で侵害訴訟が進行する。これは、権利者側からすれば有利である。

(5)S氏の趣味はスキーである。日本でスキーをしたことが無いので、次に来日の際には、スキーをしたいと言っていた。私は、S氏に、日本のスキーシーズンは、1月~3月上旬であるのでその時期を外さないように、と伝えた。

(注1)経済成長を続けるインド 人口ボーナス効果もあり日本を抜きGDP世界4位に
(注2)世界の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング

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