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MEBUKI IP Small Talk 10月号(2024年)

目次

 今、画像意匠の出願が増加している

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今、画像意匠の出願が増加している
                   代表パートナー・弁理士 長谷川洋

(1)先月に続いて、意匠の話をしたい。日本は、令和元年改正法により意匠法が大きく変わった。一説には、日本の意匠登録出願の増加を図る意図があると耳にしているが、本当の意図は不明である。改正意匠法は、旧意匠法と何が異なるか?異なる点は、意匠対象の拡大、関連意匠制度の拡充、存続期間の長期化、複数意匠一出願制度の導入など多岐にわたる。詳しくは、特許庁の「令和元年意匠法改正特設サイト」(注1)を参照いただきたい。ただし、改正から5年以上経過したが、意匠登録出願の数自体は、年3万件程度でほぼ横ばいであり、出願数が改正によって大きく増加してはいないようである。

(2)しかし、年3万件の意匠登録出願に占める画像意匠の出願数が筆者の想像を超えて多いことをここで特筆したい。令和元年の改正前から、電子機器の表示画面上の画像などは、電子機器という物品を伴う条件で保護されてきた。ところが、令和元年改正意匠法は、意匠対象の拡大を行い、電子機器などの有体物を離れて、画像そのものも保護することにした。画像そのものといっても、機器の操作の用に供されるもの(例えば、PCやスマホの画面に表示されるアイコン画像)、または機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの(例えば、オートバイのウィンカーによって路面に表示される光学的な画像)に限られるので、機器に関連する画像であることは要求される。機器と関連の無い如何なる種類の画像でも保護されるわけではないことに留意願いたい。ご興味のある方は、特許庁が紹介する「画像の意匠登録事例集」(注2)を参照いただきたい。

(3)話を少し巻き戻すが、日本の意匠出願対象を種類分けして年間どのくらい出願されているかを、特許庁が公開している「特許行政年次報告書2023年」から調べてみた。その該当部分(p94-p95,注3)を見てみたところ、2022年の出願の最多分野ベスト5は、次の通りであった。画像デザインは、第2位であり、意匠対象分野の中でも2番目に多い。
    第1位・・・包装紙,包装容器等(2327件)
    第2位・・・画像デザイン(2104件)
    第3位・・・電子情報入出力機器(2049件)
    第4位・・・車両(2004件)
    第5位・・・医療用機械器具(1563件)

(4)画像デザインは、2020年から出願開始となっており、913件(2020年)⇒1716件(2021年)⇒2104件(2022年)と直近3年で急増している。実は、物品を特定しない画像のみの出願・登録を可能とする国は、そう多くはない。筆者の知っている範囲では、画像自体を広く保護対象とする代表的な地域は欧州である。米国や中国は、画像がどんなにデザイン上特徴を有していても、物品を離れて登録をしない。その意味では、日本の意匠制度は、画像に対する保護対象の広さの観点で、欧州の制度と、米国・中国の制度との中間に位置する画期的な制度ともいえる。画像自体の登録可能性を知らなかった方は、今一度、自社のビジネスを見直し、必要があれば画像意匠の出願・権利化を考えては如何だろうか。

(注1)令和元年意匠法改正特設サイト
(注2)画像の意匠登録事例集
(注3)分類別統計表(特許行政年次報告書2023年版 第2章 5.)

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