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地方の町工場のリベンジ経営の一例
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お盆休みに、フジテレビ系列で5~6分間の企業紹介番組を見ていたら、地方の町工場を紹介する映像に興味を覚えた。その番組で紹介された会社は、三重県四日市市にある株式会社中村製作所である。この会社は、「空気以外何でも削ります」をモットーとする創業50年超の加工会社である(注1)。
前述の番組によると、この会社は、16年前に起きたリーマンショックによって倒産寸前に追い込まれたが、4代目になる現社長が「待ち」から「攻め」の経営戦略にチェンジして、リベンジを果たしたという。
この会社は、高度の切削・研磨技術を駆使して産業用ロボットや宇宙ロケットの各種部品を受注加工していたが、先に述べたリーマンショックの影響を受けて、注文が激減したという。当時は、一社取引に近い業態であったことも災いしたという。
現社長は、高度な技術を持っていても、それがビジネスにつながっていないことに課題を感じ、「削る」という技術をもっと身近なものにとの発想から新たなブランドを立ち上げた。その代表的な製品が「無水鍋」である。この鍋は、土鍋本体の開口部と金属製の蓋とがピッタリと接して圧力鍋のような環境を実現でき、誰でも簡単に料亭の味を出せるという商品とのこと。
これだけなら、製品分野を産業向け⇒一般消費者向けに変えただけともいえそうだが、この会社の素晴らしいところは、ハードウェアからソフトウェアへの転換を図ったことにあると思った。この会社は、昨年(2023年)にオープンファクトリーをつくって、「作る」「見る」「食べる」の三位一体化を実現し、観光ツアー、学生のインターンシップ、商品の体験会といった場を実現した。この場は、職人と一般消費者とをつなぐ場となっているのだ。無水鍋がどんなにすばらしくても、そのことを身をもって体験しなければ誰も買ってくれないだろう。無水鍋を使った料理を食べてもらえば無水鍋の良さを実感してくれる、ということなのだろう。
この会社は、株式会社中村製作所とは別の会社、株式会社MOLATURAを立ち上げている。株式会社MOLATURAのWEBSITE(注2)によれば、MOLATURA(モラトウーラ)とは、イタリア語で「削る」という意味だという。株式会社中村製作所と株式会社MOLATURAとの役割分担はわからないが、後者は新しいブランドを提供する会社なのだろうと想像する。
株式会社中村製作所と株式会社MOLATURAの両社の特許・実用新案登録出願、意匠登録出願および商標登録出願を特許庁のJ-PlatPatで調べたところ、2024年8月20日の時点で、特許権1件、意匠権5件、商標権9件および商標出願係属中1件がヒットした。知的財産権の多寡は別として、これらの会社は、知的財産権の取得も考えて経営を行っているものと伺える。
(注1) 株式会社中村製作所 WEBサイト
(注2) MOLATURA/私たちについて
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