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目次
1.外国の知財弁護士・弁理士との業務上のコミュニケーションについての雑感
2.米国における特許の実施料率
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今回は、すこし柔らかい話をしてみたいと思う。
我々は、日常的に、知財を扱う海外の弁護士や弁理士(まとめて「代理人」という。)とコミュニケーションをとっている。対面や電話は年に何回かしかないが、電子メールやレターでのコミュニケーションはかなり多い。また、これは新型コロナ感染症拡大を経験した際の副産物ともいえるのだが、ときに、海外とのWEB会議もある。
20年以上も知財業界に身をおいていると、このようなコミュニケーションにもだいぶ慣れてきた。言葉の障壁の問題ではなく、どういう点に留意すべきかを掴めてきた、というのが大きな理由である。今回は、英語圏の代理人を例にとり、当該代理人とのコミュニケーションにおけるポイントをいくつか話してみたい。
(1)英語のスキルは最重要事項ではなく、むしろクリアな表現の方が重要
英語のスキルが重要ではないと言うと誤解を招きそうであるが、英語よりも重要な事があるといった方が適切かもしれない。過去を思い返すならば、私より英語の達者な人は何人もいた。もちろん、その人達の何人かは、私よりもコミュニケーション能力が高かった。しかし、その人達のなかには、英語が達者であってもコミュニケーションが下手な人もいた。それは、ツボを押さえていなかったからだろうと、思う。
一例をあげる。その問題は、電子メールやレターを、同じ日本人に対する文面で書いていることにあった。文面を見ると、ごちゃごちゃと沢山書いてあり、しかも回りくどい。日本人なら何とか読んでくれるとも思うが、外国人(このときにはアメリカ人)はどうかな?と感じた。案の定、そのアメリカ人は誤解しており、また、何を希望しているのか、と尋ねてきた。別に、日本側からの電子メールにある英文もスペルも間違っていない。何が問題で誤解を招いたのか?それは、ストレートに、かつシンプルに書いていなかったからである。実は、この点は、日本人同士でも同じことが言えるのだが、特に外国人相手だと気を付けないといけない。例えば、「あなたの主張では、審査官の拒絶を解消するのは難しいと推測します。」という文は、外国の代理人に誤解をうけやすい。特に、「難しい(difficult)」は、ときに避けるべきである。「できない」という方がよい。推測すると言っているのだから、できるかできないかを言った方がよい。断言を避ける気持ちから、「難しい」という文言を選ぶと、誤解を招く場合がある。日本人なら「難しい」を「ほぼ可能性がない」と理解するであろう。しかし、アメリカ人の中には、「難しい」を「難しいけれども、できる」と解釈する人もたくさんいる。これは文化の違いなのかもしれない。
代理人とのコミュニケーションでは、こちらが何を希望しているのか、問題は何か、等をストレートに伝える方がよい。
(2)依頼したいことは全て伝えるべき
これも日本人同士のコミュニケーションではありがちだが、いわゆる以心伝心的なコミュニケーションは、外国の代理人との間では避けた方が良い。これは言わなくてもわかるだろう、わかって当然だろうは、対外国人の場合、通用しない。
例えば、PCT出願のイギリス移行手続をイギリスの代理人に依頼する際に、依頼内容をレターにまとめるとする。PCT出願の明細書(日本語)の英語翻訳文は、日本側で用意してイギリスの代理人に送ることを想定する。その際、レターに、英語翻訳文をチェックして欲しいと思うなら、チェックしてほしいことをレターに記載すべきである。代理人なのだから、チェックするのが当然だと思っていると、チェックしないで出願されてしまう。また、費用についても同様であり、費用に制約があるなら、事前に見積をとるとか、またはイギリスの代理人に上限の費用を伝えるべきである。さもないと、びっくりするような請求書が来て、後からディスカウントを要求することにもなり、互いに不愉快な思いをしてしまう。
(3)相手のミスは躊躇なく指摘すべき
外国の代理人と長く仕事をしていると、必ずと言ってよいほど、外国の代理人側のミスに直面する。特許権や意匠権が取得できなくなるほどの大きなミスは稀であるが、再度の拒絶がくるようなミスは少なくない。これは、日本だと信じられないようなミスである。そして、もっと信じられないのが、再度の拒絶が来たからといって、必ずその対応費用が無料になるわけでもない。外国の代理人は、何の遠慮もなく、請求書を送ってくる。こんなときは、その請求書に対して、必ず異を唱えるべきである。日本側に、支払う理由がないからである。
しかし、知り合いの弁理士と話をすると、みんながそのような請求書に異を唱えるわけでもない。理由は、いろいろであり、対応が大変だから、少額だから、など。これでは、相手に、日本人は請求すればそのまま払ってくれる民族である、と思われてしまう。責任はどちらにあるのか、相手からの請求は妥当なものかを考え、相手方にミスがあるとわかったならばそれを躊躇なく指摘し、請求を無しとするか、少なくともディスカウントを要求すべきである。
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(1)めぶき代表の長谷川と私の共通の友人である米国特許弁護士がいる。ニューヨークのモンタギュー氏(Mark Montague*MXM@cll.com)である。私は、企業時代を含め、30年以上の付き合い。来日時には、東京や諏訪圏等を案内している。私は、20年以上の友人である米国特許弁護士(日本人)と、米国在住の元日本の知財部長さんとも、メールや来日時に情報交換をしている。これらの方々には、来日時に時折、事務所のクライアントさんの所で講演などをしてもらっている。
(2)モンタギュー氏に、米国特許の実施料率の状況を今年3月に問い合わせた。これは、長野県知財窓口の支援で、諏訪圏のある企業に伺った折、米国特許のライセンス受けの話が出たため。
以下は、彼からのメール。
私の会社の同僚であるダニエル・バソフに、あなたの要望を調査するよう依頼しました。 以下は彼が得た情報です。ご不明な点やご要望がございましたらお知らせください。
以下は、米国における特許およびTMライセンスのロイヤルティに関する情報の要約です。
a.以下は主要産業の平均特許使用料率です(upcounsel.comより)。
・航空宇宙, 4% ・アパレル, 6.8% ・自動車, 3.3% ・化学, 4.3%
・コンピューター, 4.6% ・建設, 5.6% ・消費財, 4.8% ・エレクトロニクス, 5.1%
・エネルギー・環境, 8% ・ヘルスケア機器・製品, 6.4% ・工業製品, 6.4%
・工作機械, 4.8% ・医薬品・バイオテクノロジー, 6% ・ソフトウェア, 9.6%
b.ブランドおよびTMライセンス。
私たちは、Gregory J. BattersbyとCharles W. Grimesによる「Licensing Royalty Rates」2022年版(Wolters Kluwer出版)のコピーを持っています。
これは、様々なブランドや商標のライセンス料率に関する非常に包括的な研究書です。異なる商標のICクラスにおける製品の料率などが詳細に記載されています。この本のリストの数ページ(商品A-B)の例を添付します。 商品と、関連商標の国際クラス番号で構成されています。
特定の商品やTMクラスについてご質問があれば、いつでも情報を提供いたします。
c.「ライセンス料率」2022年版
第7項では、ブランド・ライセンスに加え、IPSCIO/Royalty Source ™ Summary of Technology Licensed by Selected Industries (for 2020)の表が掲載されており、約9,000~10,000の業界/製品ベースのロイヤリティ・ライセンスに基づいています。このコピーはやや不鮮明であるため、以下に要約を再掲します:
*産業 平均値 中央値 最大値 最小値 カウント数
化学 4.9% 4.5% 40% 0.1% 205
インターネット 16% 11% 90% 0.0% 519
テレコム(メディアを除く) 6.1% 4.5% 59.1% 0.0% 223
消費財 5.8% 5.0% 40% 0.0% 368
*小売・レジャー
メディア・娯楽 11.7% 5.9% 80% 0.0% 96
食品 5.5% 3.8% 70% 0.1% 167
医療・健康 5.9% 4.3% 80% 0.0% 1,309
*製品
医薬品・バイオテク 7.3% 4.8% 97% 0.0% 4,350
エネルギー・環境 5.8% 4.5% 75% 0.1% 551
機械・工具 5.9% 4.5% 50% 0.5% 150
自動車 5.0% 4.0% 10% 0.5% 167
電気・電子 4.5% 4.0% 35% 0.1% 242
半導体 4.5% 3.3% 50% 0.0% 230
コンピュータ・事務機器 5.2% 4.0% 30% 0.0% 151
ソフトウェア 15% 8.8% 77% 0.0% 618
2024年版の最新版は、ウォルターズ・クルーワー・パブリッシングから
Licensing Royalty Rates, 2024 Edition | Wolters Kluwer Legal & Regulatoryで提供されている。 ただし、この書籍の価格は非常に高い。
d.その他のリソース
さらに、最新のISCIO Reports - Royalty Rate Industry Summary 2023(およびそれ以前の年)は、150米ドルでオンライン購入が可能です。 約10,000以上のロイヤリティ・レート観測に基づき、上記の表と同様に産業別に分類されている。
https://ipscio.com/?home=true#sectionをご参照ください。
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