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MEBUKI IP Small Talk 5月号(2024年)

目次

 米国商標の出願時・登録後に留意すべきこと/p>

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 米国商標の出願時・登録後に留意すべきこと
                   代表パートナー・弁理士 長谷川洋

(1)はじめに
 最近、米国での商標出願の相談および依頼が増えている。それに伴い、米国の商標を扱う弁護士からアドバイスをもらう機会も増えてきている。今回は、米国で商標を出願する際および出願後の審査をパスして登録になった後に留意すべき点につき、みなさんに紹介したい。

(2)出願方法は主に6種類ある
 米国は、原則、使用している商標に権利を付与する主義を採っている(使用主義)。しかし、例外もある。米国は、米国非居住者(例えば日本人又は日本法人)が本国(例えば日本)で商標登録している場合には、それと同じ商標を米国で使用していなくとも商標登録を認めている。また、補助登録や州登録という日本にはあまりなじみの無い商標登録方法もある。以下、6種類の商標出願方法を列挙するが、みなさんが主に利用するのは、その1~4だと思う。
  その1・・・すでに米国で使用している商標を出願する
  その2・・・米国では未使用だが、近い将来使用予定の商標を出願する
  その3・・・本国での商標登録の存在を前提に米国で同じ商標について出願する
  その4・・・マドリッド・プロトコルを利用して、米国を指定国とする国際登録出願を行う
  その5・・・すでに米国で使用している商標につき出願したが、自他商品・役務の識別力が
        弱くて審査をパスできないときに補助的に登録を受ける
  その6・・・米国全土ではなく各州の州法に基づいて出願する(その州のみで保護される)

(3)米国商標法で保護を受ける商標の「使用」の考え方に注意
 上記(2)のその6のように州単位で登録を受ける場合と異なり、米国全土で商標保護を受ける場合、単一の州内でのみ使用しているときには、使用していることにならない。例えば、日本の企業または個人が米国のカリフォルニア州に工場を建設し、その工場で製造された商品を同じ州の店舗で販売していたとする。この例では、商品の流通がカリフォルニア州内で完結している。その商品のパッケージには商標が付されている。この場合、商標の使用に基づき出願できるかというと、答えはノーである。また、米国で商標を無事登録できたとして、その商標登録後5年経過後~6年経過前までの間に使用証拠と使用宣誓を行うときに、カリフォルニア州のみで商品の流通が完結しているならば、やはり登録商標を使用していることにならない。米国商標法でいう商標の「使用」は、州をまたぐ(州際通商)又は国をまたぐ(国際通商)ものでなければならない。日本の企業等が商品を米国のカリフォルニア州の店舗に輸出しているなら、それは国際通商に該当するから問題ない。

(4)色付き商標または多段併記商標の出願はできるだけ避けた方が良い
 日本では、特定の色彩を付した商標または二段併記商標を登録した後、実際にモノクロの商標や一段商標を使用していても、使用義務をはたしていると解釈される場合がある。例えば、競合他者が不使用取消審判を請求して争ったとき、商標権者が登録商標と完全同一でない商標(先の例でいうモノクロ商標や一段商標)を使用しても、登録商標の使用とみなされ、商標権者が勝つ可能性がある(ただし、使用義務をはたしていないとの解釈がなされる場合もあるので注意)。
 しかし、米国では日本と事情が異なる。
 米国では、色付き商標は、あくまでも特定色に限定した商標であり、多段併記商標はあくまでも多段表記の商標であり一段表記の商標ではない。米国登録商標と同じ色または同じ多段表記で使用しないと、登録商標を使用していることにならない。このため、米国では、将来、色を変更したり、あるいは一段表記で商標を使用する可能性が高いならば、色の限定のないモノクロ商標や一段表記の商標で出願することをお勧めする。モノクロ商標で登録した後、色付き商標を使用した場合、登録商標=使用商標ではないが、米国では、登録商標を使用していると認められる可能性は高い。ただし、モノクロ登録商標に色を付けたことにより、登録商標と相当異なる外観になるような場合にはその限りではない。
 多段表記商標に関して、よく見られる例を紹介する。日本では、出願費用の節約の意味で、多段表記で商標を出願する方も多い。例えば、日本で英語表記とカタカナ表記の二段商標を登録した後、上記(2)のその3に基づき、同じ商標につき米国でも出願したとする。日本で登録を受けている商標なので、米国で使用していなくとも登録になる。しかし、商標権者は、登録から5年後に登録を維持するべく使用証拠と使用していたことの宣誓書を提出しなければならない。登録後5年間、商標権者が一段の英語表記のみの商標しか使用していない場合には、使用証拠は不適となり、商標登録を維持できなくなる。このような事態にならないように、好ましくは日本の出願段階から、どういう商標を出願するかについて十分留意しなければならない。基本は、使用商標=出願商標である。あまり欲張って二段、三段の表記で出願しない方がよい。

以上

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