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目次
インド改正特許法(2024年3月15日施行)の主な改正事項
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先月、インド経済が将来的に上昇する可能性があること、およびインドの特許制度が非常に特殊であることをお話しした。今月は、2024年3月15日施行のインド改正特許法の内、日本企業・個人が知っておきたい主な事項(改正後に緩和された事項のみならず、厳しくなった事項もある)を紹介する(注1,注2)。
1.情報提供義務(特許法第8条(1)、特許規則第12条(1))
インドでは、インド出願の対応外国特許出願がある場合に、そのステータス(国名、出願番号、出願日、出願の状態、公開日及び登録日)を報告しなければならない。この報告(最初の報告という。)の期限は、インドへの出願日(PCT出願の場合にはインドへの移行日)から6カ月である。この点は、改正前後で変わらない。
改正前後で変更となった点は、以下の点である。
(改正前) 最初の報告後、新たな対応外国出願の発生または最初に報告した対応外国出願の更新のようなステータスの変更が生じた場合、その変更が生じた日から6カ月以内に、その情報をインド特許庁に提供しなければならなかった。対応外国出願の数が複数あれば、その情報提供の回数も増え、インド特許出願1件につき10回以上提出することも少なくなかった。
(改正後) しかし、改正法下では、最初の報告からステータスの変更が生じても、その都度、情報を提供する必要はなくなった。インド特許庁の審査官から第1回審査報告書(日本でいう拒絶理由通知に相当)が通知された際に、審査官からの要求に基づき、3カ月以内(+3カ月の延長可)に情報を提供すればよいことになった。すなわち、情報提供は、インド出願時から6カ月以内、および拒絶理由通知を受けた日から3カ月以内の原則2回で済むこととなった。この義務については、法改正により緩和されたといえる。
2.対応外国特許出願の審査経過報告義務(特許法第8条(2)、特許規則第12条(3))
インドでは、インド特許出願の対応外国特許出願がある場合には、インド特許庁長官からの要求に基づき、出願人は、対応外国特許出願のオフィスアクション、調査報告、特許付与クレームを提出しなければならない。オフィスアクション等が非英語で記載されている場合には英訳と共に提出する必要がある。
(改正前) 拒絶理由通知に、定型的に審査経過報告の提出要求が盛り込まれていたので、出願人は、ほぼ例外なく、インドの拒絶理由通知を受けた後6カ月以内に、対応外国出願の調査報告書、拒絶理由通知、特許許可クレーム等を提出していた。
(改正後) インドの審査官は公的データベースを用いてインド国外の出願情報を参照する必要がある旨、法律上、明確化された。この結果、審査官は、必ず、出願人に、審査経過報告を要求するわけではなくなった。ただし、審査官は、出願人に対して、理由を付したうえで審査経過報告を要求することもできることが改正法に明記された。したがって、審査官から要求があった場合には、出願人は、その要求から2カ月以内に(+3カ月の延長可)、各国の審査経過報告を提出しなければならない。このように、各国の審査経過報告を100%必要というわけではないが、要求があれば2カ月という改正前より短い期間内に審査経過を報告する必要がある。このため、この義務については、出願人にとって必ずしも緩和されたとはいえない。
3.特許発明の実施報告義務(特許法第146条(2)、特許規則第131条(2))
インドでは、特許登録後、特許権者は、特許発明の実施・不実施の報告(不実施でも報告要)を義務付けられている。
(改正前)実施・不実施の報告は、毎年必要であった。
(改正後)実施・不実施の報告は、3年に1回(2年おき)で済むことになった。
この義務については、法改正により緩和されたといえる。
4.出願審査請求期間の短縮化(特許法第11条B、特許規則第24条B(1))
(改正前) 出願審査請求は、優先日から48カ月以内に行う必要があった。
(改正後) 出願審査請求期間は、優先日から31カ月以内に短縮化された。これは、インド出願日(PCT出願日)が2024年3月15日またはそれ以後の出願に適用される。今後、改正法の施行後にPCT出願した場合、インドへの移行手続期限と出願審査請求期限は同一となる。よって、インドへの移行と同時に出願審査請求すると考えておいた方がよい。これは、改正後、出願人とっては厳しくなった事項である。
(注1)Patent (Amendment) Rules, 2024: Key Changes
(注2)KEY CHANGES AS PER THE PATENTS (AMENDMENT), RULES, 2024
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