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今年は、元日に、地震・津波の発生というおめでたくはないニュースが報道されました。
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目次
米国特許について知っておくべきこと(前編)
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(1)はじめに
米国特許出願件数は、最近の4年間(2019-2022年)で年間65万件前後と横ばいであるが、日本の29万件前後と比べて2倍以上の件数となっている(注1,注2)。米国では、2011年に、当時のオバマ大統領の署名により、AIA(Leahy-Smith America Invents Act)という新特許法が成立した。これにより、米国は、従来の先発明主義から先公表先願主義という米国特有の先願主義に舵を切った。先公表先願主義は、多くの国の先願主義とは違っているが、この違いについては、この稿では割愛する。AIAの成立の前後を問わず、そもそも、米国特許と日本特許との相違点は非常に多い。2024年1月に、複数の米国弁理士(Y氏、T氏等の日本人4名)による座談会(WEB)が開催され、米国特許の取得過程における留意点、および将来の特許訴訟を想定した留意点の話し合いが行われた。
ちなみに、米国の場合、特許弁護士(Patent Attorney)と特許弁理士(Ptent Agent)という2種類の特許代理人がいる。前者は、米国のいずれかの州の弁護士資格を有し、かつ米国特許商標庁(以下、USPTO)の弁理士試験に合格して登録を受けた者であり、USPTOに対する特許出願代理のみならず特許訴訟代理等の特許全般の代理人業務を行うことができる。後者は、弁護士資格を有さず、米国特許商標庁の弁理士試験に合格して登録を受けた者であり、USPTOに対する特許出願代理業務を行うことはできても特許訴訟の代理業務を行うことはできない。2016年と少し古いが、米国特許弁護士の登録人数は33,707人で、米国特許弁理士の登録人数は11,323人である。
以下に、当方がその座談会を聴いた内で、参考になったことをピックアップして述べたい。続きは、後編として、来月述べる。
(2)USPTOにおける審査のバラツキは非常に大きい
USPTOの審査官の能力・判断にはかなりのバラツキがあるそうである。審査官の中には、100件に1件(1%相当)しか特許許可しないという有名な審査官もいる。その審査官は、毎年、ワースト審査官として名前が公表されており、本人の改善も見受けられない。ときには、運悪く、特許許可をなかなか出してくれない審査官にあたることもあるが、出願人が審査官を変えることはできない。座談会の米国弁理士の中には、USPTOの人事により審査官が変更になったとたん、特許許可が発行されるということを何回も経験した方もいる。このような偶然に期待する以外に何か方法はないかという問題に、座談会は2つの方法を紹介した。以下、(2.a)および(2.b)に、当該方法を紹介したい。
(2.a)審査官とのインタビューを行う
座談会に出席している米国弁理士(T氏)は、今まで、審査官と1000回くらいインタビューを行ってきたという。審査官インタビューの今までの経験上、不利になったことは記憶にないという。別の米国弁理士(Y氏)は、米国代理人の中には審査官との電話インタビューで電話先の審査官と口論となる人もいる、とコメントした。米国弁理士(T氏)は、喧嘩してはダメであり、審査官の拒絶理由について理解を示すという態度が大切である、とコメントした。
(2.b)広すぎるクレームを避ける
日本では、とかく、広いクレームを作成する傾向がある。競合他社へのけん制の意味もあるかもしれない。しかし、この広いクレームをそのまま米国審査に供すると、どうなるか?USPTOの審査官の中には、「日本人・日本企業は、米国特許をナメているのか?こんな広いクレームで特許許可だせるわけないだろう。」と頭にくる審査官もいて、その場合には、広すぎる請求項1は拒絶されるのはもちろんのこと、それより下位の請求項も全部まとめて拒絶されることも多い。それのみならず、その後、クレームを減縮しても、なかなか特許許可にならないことも少なくない。座談会の米国弁理士(Y氏)は、このような経験から、「広すぎるクレームは避けた方が良い」と述べた。
(注1):USPTO 統計情報
(注2):特許行政年次報告書2023年版
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