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MEBUKI IP Small Talk 5月号(2023年)

目次

1.米国の意匠特許のお話

2.技術契約の期間をどうする?

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1.米国の意匠特許のお話          パートナー弁理士 長谷川洋

(1)米国にも、日本と同様、意匠制度がある。ただし、日本では、意匠は特許法とは別の法律(意匠法)で規定されているのに対して、米国では、意匠は特許法の中で規定されている。日米間の意匠制度には異なる点が沢山ある。その主な点を挙げると、以下のとおりである。
(a)米国には、日本の関連意匠制度がない。このため、互いに類似する意匠は一つの出願に含める必要がある。日本では、ある意匠を出願後、当該意匠に類似する意匠(関連意匠という)を出願したいときには、当該意匠の出願から10年以内であれば関連意匠を出願できる。
(b)米国の意匠権の存続期間は登録から15年で満了するが(少し前までは14年であった)、日本の意匠権の存続期間は、出願日から25年で満了する(近時の意匠法大改正による)。
(c)米国の意匠権の場合、権利の存続に関して年金という制度はない。登録時に一括納付する必要がある。一方、日本の場合、意匠権の存続に関して年金制度がある。
(d)米国には秘密意匠制度はないが、日本には秘密意匠制度がある。日本の秘密意匠制度では、意匠登録から最長3年に限り、意匠の内容を非公開にできる。
(e)米国の部分意匠の場合、権利主張部分を実線で描き、権利主張しない部分を点線で描く点で日本の部分意匠と共通するが、出願後に点線部分を実線部分に変更することが可能である点で、日本の部分意匠と異なる。日本では、実線部分から点線部分への変更補正、およびその逆の補正は明らかな誤記でない限りは不可である。
(f)米国では、例えば自動車の意匠を出願する際に、その自動車のおもちゃも出願に含め、権利範囲とすることができる。一方、日本では、自動車と自動車おもちゃとは別の意匠であるため、別の出願として権利化しなければならない。日本の近時の改正において、複数意匠を一出願できるようになったが、一出願で包括的な権利を得られるわけではない。
(g)米国では、図面中に、ある部位の長さを省略する省略線を比較的自由に入れられるが、日本では、意匠の特徴に関係ない部分(例えば、電源コード)に限り省略線を入れることができるに留まり、自由には入れられない。

(2)上記(g)の省略線の相違は、米国企業から米国代理人経由で日本の我々に依頼がきた外内案件で実際に問題となった。2年ほど前、米国から、ある器具の米国意匠の出願に基づきパリ条約優先権を主張して、日本で意匠出願してほしい旨の依頼があった。その器具の一突出部分に、その長さを省略する省略線があった。日本特許庁に、省略線を消すとどうなるか尋ねたところ、パリ条約優先権を主張できなくなるおそれがあるとの回答をもらったので、省略線を含め一切図面を変えることなく日本に出願した。
 その後、日本特許庁から、省略線があることを理由とした拒絶理由を受けた(意匠が不明確であるため)。審査官に電話して、省略線は日本でも実務上使用されていることを主張した。審査官は、省略線は意匠の特徴に影響を与えない範囲で例外的に使用できるにとどまり、本件の意匠の場合には意匠を不明確なものとするから許されない、と伝えてきた。これに対して、当方は、さらに食い下がった結果、審査官は、少し検討させてほしいとして電話を切った。その後、審査官から提案があった。その提案とは以下のようなものであった。その省略線の有無にかかわらず、一突出部分の長さが図面に表れている長さとおおよそ等しいのがその器具にとって当然であることを証明してくれれば、省略線を残したままでOKということであった。早速、米国代理人と話をして、証明作業に入った。その器具を販売しているいくつかのメーカのHPの情報から、どの器具を見ても、当該一突出部分の長さはほぼ同じであるとの心証を得た。米国代理人からの情報も追加して、意見書にて説明した。
 この結果、本件の意匠出願は登録に至った。省略線という図面上の小さな問題かもしれないが、米国で登録された意匠が日本で登録になるかどうかの大きな問題であり、大変勉強になった。

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2.技術契約の期間をどうする?         顧問・弁理士 渡邉秀治

(1)最近、ある方から次のような「質問」を受けた。
「特許ライセンスではなく、ある技術を使用させてもらうという契約をする場合、契約期間はどのように定めるのがいいのでしょうか。」
(2)私の回答の要旨(前提)は以下のとおり。皆様、どう考えますか?
①特許ライセンス契約でも、5年とか区切ることがある。特許ライセンス契約では特許存続期間の場合が圧倒的に多いですが。対象が複数特許の場合に期間が5年間などと期間が区切られることがある。権利者側からの要請、ライセンシー側からの 依頼の場合があり。 どんな場合も法律的な問題(独禁法等)が無ければ期間は自由。ノウハウライセンスも同様。
(3)私の回答の要旨(詳細)は以下のとおり。
①上記の質問にかかわる技術は、ノウハウ技術の場合となると思われる。ノウハウでなければ貴社で開発できるから。ただし、ノウハウでなくても当該技術を早く自社に移転させたいときもあり得る。そうすると、以下の事項が確認ポイントと回答となる
。 A.その技術がノウハウを含むものか。⇒YESは一般的に長めになる。
B.当該技術を早く自社に移転させたいだけか。⇒YESは短めになる。
②契約期間を定める考慮ポイント
A.その技術をライセンス受けではなく、貴社で開発したらどれ程の期間がかかるか?⇒契約期間は、該期間程度以下とする。費用はどれくらい?⇒価格交渉時の基礎(参考)となる。
B.その技術は貴社ではなく第三者(競合)が独自開発したらどれ程の期間がかかるか?⇒契約期間は、該期間より大幅に短くする。
費用はどれくらい?⇒価格交渉時の基礎(参考)となる。
C.その技術の競合技術や同種技術に対する優位性の期間は?

⇒契約期間は、優位性の期間程度以下とする。
D.貴社としての使用予定期間は?
⇒契約期間は、使用予定期間程度とする。
③使用させてもらう技術に入っているノウハウとの関係
A. 非常に重要で貴社では開発できず貴社獲得に時間がかかる場合
⇒契約期間は、長くし、100%開示と貴社完全獲得することが重要。
⇒費用は、貴社が出せる範囲をまずトップに確認必要。
B. 5~10年程度で貴社開発でき、開示を受けたら貴社獲得容易。
⇒契約期間は、該期間程度とし、100%開示と貴社完全獲得の確認要。
⇒費用は、5~10年程度の開発費用(人件費など)。価格交渉時の基礎(参考)とする。
C. 5年未満で貴社開発でき、開示を受けたら貴社獲得極めて容易。
⇒契約期間は、5年未満とする。
⇒費用は、5~10年程度の開発費用(人件費など)。
④相手からの提案が貴社提案より長い場合と短い場合への対処方法をどうするか?
⇒指導受けの期間を第一ステップ、第二ステップ、第三ステップなど数ステップに分け、各ステップの期間・費用・内容など分ける案あり。この案はリスク低減のために最初にこちらから提案してもよい。

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