私たちが責任をもって特許取得をサポートします
目次
マドリッド・プロトコルに基づく国際商標登録出願を行う際の留意点(その2)
__________________________________
(1)先月のあらすじ
先月のメルマガでは、外国に商標出願する方法として、当該国に直接出願する方法と、WIPOに対して国際出願を行う方法とがあり、国際出願には、権利化希望国が多い程コスト的なメリットがある一方で、留意すべき点もあることをお話しした。特に留意すべきは、できるだけ各指定国知財庁から暫定的拒絶理由通知が発行されないようにすることである。日本の個人または企業がマドプロ出願において米国と中国を指定した場合、これら両国から暫定的拒絶理由通知が発行されることは少なくない。それは、米国および中国における商品または役務の指定ルールが日本と大きく異なるからである。では、マドプロ出願を、米国や中国から暫定的拒絶理由通知を受けずに登録できないだろうか?今月は、暫定的拒絶理由通知をできるだけ少なくする方法案をご紹介する。
(2)米国および中国からの暫定的拒絶理由通知を少なくする方法案
(2.1)米国
米国の場合、Trademark ID ManualというUSPTOのWEBSITE内のページがある( https://idm-tmng.uspto.gov/id-master-list-public.html )。ここに、マドプロ出願の基礎となる日本商標登録出願で指定した商品・役務を英語で入力して検索すると、過去に適正な名称として登録できた例を見ることができる。例えば、”Medicines”(薬)という商品名を入力すると、”Antidiarrhealmedicines”(下痢止めの薬)とか、Medicines for intestinal disorders(乗り物酔いの薬)など多くのリストが表示される。ここで、注目すべきは、“Medicines”だけで登録された例がないことである。日本では、薬または医薬という上位概念を指定可能だが、米国では、薬という上位概念を、より下位概念に限定した特定用途薬で指定しなければならないことがわかる。理想的には、日本で商標登録出願する前に、米国への出願も考慮して、日本と米国の両国で認められる指定商品・指定役務を選定したうえで日本に出願し、その後にマドプロ出願で米国を指定したいところである。しかし、通常は、日本出願の際には、米国での権利化を考えていないことが多い。そのような場合には、マドプロ出願時に、基礎となる日本出願で指定した商品または役務の範囲内で、かつ上記Trademark IDManualを使って米国で認められる指定商品・指定役務を探すことをお勧めする。日本の出願で指定した「薬」をより下位概念の特定用途薬にばらして、マドプロ出願の指定商品の欄に列挙すれば、米国から暫定的拒絶理由通知を受ける確率を低減できる。
(2.2)中国
中国には、日本とも米国とも異なる指定商品・指定役務のリスト(類似商品及び役務区分表)がある(参考 http://www.chinalogo.or.jp/classification/ )。中国の商標局は、基本的に、このリストに掲載されている指定商品・指定役務の記載を求めている。このため、上記米国と同様、マドプロ出願時に、上記リストで指定商品・指定役務を確認することをお勧めする。
(2.3)米国と中国の指定ルールを両方満足できるのか?
ここでお気づきの方も多いと思う。はたして米国の指定ルールと中国の指定ルールの両方を満足できるのであろうか?という疑問が湧くと思う。それは正解であり、両国の指定ルールを満足することは極めてレアケースである。
ここからは重要であるが、優先すべきは、米国の指定ルールを優先することである。理由は2つある。1つは、暫定的拒絶理由通知を受けて現地代理人に拒絶解消を依頼したときの費用は、断然、米国の方が高いことである。もう1つは、中国では、マドプロ出願の指定商品・指定役務が中国の基準に合致していなくとも暫定的拒絶理由通知を発行しないケースが多いことである。中国の指定ルールは、中国直接出願に対しては厳格に適用するが、マドプロ出願に対しては緩く適用している。これは、元商標局の中国代理人の経験に基づくアドバイスである。逆に、米国は、マドプロ出願であっても自国の指定ルールを貫く。
以上より、マドプロ出願の際には、基礎となる日本商標登録出願(または登録商標)の指定商品・指定役務の範囲内で、米国のTrademark ID Manualおよび中国の類似商品及び役務区分表を使って、なるべく両国で認められる指定商品・指定役務を探し、両国の指定ルールを共に満足しない場合には米国の指定ルールを満たすのを優先すると良い。こうすると、少なくとも米国からの暫定的拒絶理由通知を防止でき、運が良ければ両国からの暫定的拒絶理由通知を防止できる。
以上
_________________________________
CopyRight (C) MEBUKI IP Law Firm
社内用・社外用を問わず無断複製(電子的複製を含む)を禁ずる