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目次
2023年4月1日から欧州単一特許/欧州特許統一裁判所の制度発効がスタート
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(1)欧州単一特許/欧州特許統一裁判所が来年4月からスタート
前回のメルマガで、欧州単一特許/欧州特許統一裁判所(UP/UPCという。)の制度がまもなくスタートするから、日本企業はオプトアウトの準備を急ぐべきであることを提案した。
その後、1週間もしないうちに、UP/UPC準備委員会は、EPOのサイトにて、制度発効時期の具体的な日につき言及した(注1)。欧州の知財事務所も時を同じくしてその告知をしている(注2)。準備委員会によると、今年2022年12月中にドイツが統一特許裁判所協定(UPCAという。)を批准して、来年2023年4月1日から制度発効予定とのことである。指定国で有効化した特許およびEPO係属中の出願を統一特許裁判所(UPCという。)の管轄から外すオプトアウトの申請は、来年2023年1月1日から同年3月31日の3カ月間(サンライズ期間という。)に事前受け付け可能である。オプトアウトの必要性については前回述べた。おそらく、一部の日本企業は、既に欧州指定国で有効化手続を行った特許および現在EPOに係属中の出願について、サンライズ期間中に、オプトアウトするのではないかと想像する。オプトアウトしなかった場合、2023年4月1日以降に、第三者がUPCに特許取消訴訟を提起して、特許取消判決が確定すると、せっかく各指定国で生じた特許(ただし、UPCAを批准していない国、例えば、英国、スペイン、スイス等で有効化した特許を除く。)が全滅するからである。このような全滅をセントラルアタックという。
(2)UPを選択した場合
一方、セントラルアタックを恐れず、UPCに提訴することで第三者による複数国での侵害行為を一斉に止めることができる方を優先する日本企業もあると思う。そのような日本企業は、各国有効化+オプトアウトを選択せず、欧州単一特許(UPという。)を選択すると思う。UPの選択は、欧州特許公報の発行日から1カ月と非常に短いので、期限に十分留意してUPを選択すべきである。加えて、日本企業の多くは英語で欧州特許出願を行い登録するであろう。その場合、UP選択時に、英語以外のEU公用語による翻訳文をEPOに提出する必要がある。EU公用語には、英語も含めて24種類の言語がある。英語以外の23種類の言語から1つを選んで、欧州特許の全文翻訳を用意しなければならない。
(3)翻訳文について
上述の翻訳文は、当方の知り合いの複数の欧州特許弁理士によれば、第1に、法的拘束力を持たないとのこと。つまり、翻訳文は、権利行使時に使用されないとのこと。第2に、翻訳文は機械翻訳不可とのこと(EU Reg. 1260/2012 (12))。しかし、EPOが、機械翻訳かマニュアル翻訳かの見極めをどのように行うのかは不明である。また、仮に機械翻訳であることがわかったとして、どのようなペナルティがあるかも不明であるとのこと。このため、費用をかけてでもマニュアル翻訳を用意する企業と、費用をなるべく少なくしてAI翻訳後にマニュアルで軽く修正する企業が出てくるのではないかと想像する。
(注1)https://www.epo.org/applying/european/unitary/unitary-patent/transitional-arrangements-for-early-uptake.html
(注2)https://jakemp.com/en/news/upc-to-begin-on-1-april-2023/
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