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目次
1.日本における商標のコンセント制度導入はいつになるのか
2.「共同開発契約書作成マニュアル」の配付状況他
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(1)コンセント制度
コンセント制度とは、先行登録商標の商標権者が同意をした旨の証明があれば、後に出願された商標登録出願と先行登録商標の混同を生ずるおそれを理由として拒絶しないとする制度をいう。日本の現行商標法には、このような制度はない。ただし、同制度の導入は昔から議論されてきており、今なお、議論の最中にある(注1)。
(2)完全型と留保型
一口に「コンセント制度」といっても、大別して2種類ある。1つは、「完全型コンセント制度」であり、もう1つは「留保型コンセント制度」である。完全型コンセント制度は、先登録商標の商標権者の同意があれば、当該商標の存在を理由として拒絶をされないとする制度である。完全型を採用する代表的な国は、英国、ハンガリーの他、インド、オーストラリア、ニュージーランドといった英国連邦に属する国または旧英国領の国である。これらの国では、同意書さえあれば、審査官は、これに関係する先願登録商標の存在を理由に後願商標を拒絶できない。一方、「留保型コンセント制度」は、先登録商標の商標権者の同意がある場合でも、審査官または審判官が同意を参酌しつつ、出所の混同を生ずるおそれの有無等について審査を行うこととする制度である(注2)。世界的に商標大国である中国や米国は、留保型を採用している。両国とも、同意書が後願商標を登録する唯一の許可書ではない。米国では、審査官または審判官が最終的に後願商標を登録できるかどうかを決める。中国では、審査段階での同意書提出は不可であり、審判段階でのみ同意書の提出が認められており、審判官が後願商標を登録できるかどうかを決める。ちなみに、中国の商標代理人によると、2021年夏頃から、審判段階における同意書提出による後願商標登録の可能性は低くなっているそうである。留保型コンセント制度を採用する国は結構多い(注3)。
(3)日本の現状
日本は、2022年8月17日現在、コンセント制度を採用していない。コンセント制度の無い国としては、日本の他に、韓国、タイ、インドネシアがある(注3)。日本では、2017年4月1日付施行の商標審査基準において、類似群コードに基づいて画一的に運用している商品同士の類否判断について、引用商標権者から商品・役務が類似しない旨の陳述があったときには類似群コードを適用しないで審査官が類否判断できるように要件を緩くした。また、出願人と引用商標権者に支配関係がある場合の取扱いについては、商標法第4条第1項第11号における「他人」の解釈を、出願人と「他人」である引用商標権者が支配関係にある場合、実質的には「他人」の商標ではないものとして取り扱うこととした。ただし、この審査基準の改訂は、いわゆるコンセント制度の導入を認めたものでもなく、真のコンセント制度自体の導入は見送られた。いつになったら、日本の商標法にコンセント制度が導入されるのか?
(4)その他
筆者は、今年10月に、米国弁護士(日本人)と、中国知財事務所の商標部門長(中国人)と共に、同事務所のWEBセミナーにて、日中米間の商標プラクティスの同異について、同事務所の日本顧客を聴講者として議論することになった。コンセント制度もその一つである。他に、指定商品・役務の指定の違いや、複数併記型商標の取り扱いについても話をする。セミナーの日が近くなったら再度お知らせする予定である。
(注1)
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/shohyo_shoi/document/03-shiryou/shiryou2.pdf
(注2)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2017/02/9c64c4d1c2963d676ca01105b98d7f48.pdf
(注3)
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3705
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(1)7月号にて「共同開発契約書作成マニュアル」の無料配付の状況を報告させていただいたところ、2名の方からさらに希望があり、配送準備をしている。今回の方を含め、計5人の方から配付希望をいただいた。企業知財部所属1名、元会社役員で現在顧問の方1名、法務室所属1名、ある県の知財窓口担当者1名、私の記憶ミスで所属が不明な方1名。希望者の所属について前回の報告で一部記憶間違いがあり、今回訂正させていただいた。
(2)これからも契約の勉強や実務を続けるつもりではあるが、76歳からは著作活動と近県の中小企業の知財支援と顧問活動を主に行っていきたい。著作は、最低3冊で、内容は固まっているが、それぞれ手を付け始めたばかり。1つは孫向け、1つは明細書作成関係、1つは縄文時代と知財の関係。
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