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MEBUKI IP Small Talk 7月号(2022年)

目次

1.早期審査を行う場合の留意点

2.契約に馴染む

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1.早期審査を行う場合の留意点           パートナー・弁理士 長谷川洋

(1)出願審査請求の際、早期審査を請求すると、1〜3カ月程度で、特許庁からのファーストアクションを受け取ることができる。出願審査請求だけではファーストアクションが8〜12カ月くらいかかることを考えると、早期審査を請求すれば、かなり早く、拒絶理由通知または特許査定を受けることができる。
 早期審査は、早期権利化を可能とするのみならず、外国出願を行うかどうかを決定するのに利用もできる。特に中小企業の場合には、実施予定がなくとも、また外国出願をしていなくとも容易に早期審査を請求できるので、早期審査を利用する中小企業も多いようである。

(2)しかし、早期審査には、上記メリットだけではなく、デメリットもある。今回は、そのデメリットについてお話ししたい。
 大きなデメリットは、早期審査で権利化した場合には、早期に発行された特許公報が自社のその後の改良発明の特許性に障害となることである。出願(発明A)から特許公報の発行までの期間が仮に7カ月だったとすると、8カ月目に発明Aの改良発明Bについて特許出願を行った場合、改良発明Bは、公知となった発明Aに対して進歩性を有していなければ特許を取得できなくなってしまうのである。早期審査を行わなければ、出願(発明A)の公開は出願日から18カ月経過後であるから、改良発明Bを出願する時間的な猶予は十分にある。しかし、早期審査を経て非常に早く特許を取得してしまうと、改良発明Bを出願するための期間は非常に短くなってしまうのである。このことから、改良発明Bの出願を控えているような場合には、出願(発明A)の早期審査を行わない方が良い。

(3)ここで、出願(発明A)の特許公報発行から1年以内であれば、新規性喪失の例外の適用を受けて、改良発明Bについて正当に特許を取得できるだろうか?答えは「ノー」である。日本では、特許出願公開公報や特許公報発行は、新規性喪失の例外規定の適用外なのである。

(4)出願(発明A)について早期審査を請求した後に改良発明Bを権利化する必要性がでてきたときには、出願(発明A)について特許公報が発行される時期をできるだけ後ろにずらすしかない。
 その1つ目の方法は、早期審査請求後に拒絶理由通知を受けた場合に、拒絶理由のない請求項がありかつそれが出願人にとって満足する請求項であったとき、応答期限をできるだけ延期し、時間を稼ぐことである。通常の応答期間は60日であるが、料金を支払えばさらに2カ月延期できる(注)。また、費用をさらにかけることが許されるなら、拒絶応答せずに拒絶査定を受けて、補正+不服審判請求により前置審査に移行して、改良発明Bの出願を用意する時間稼ぎを行うということもできる。

(5)もう1つの方法は、拒絶理由がなくいきなり特許査定になった場合に、特許料の支払をできるだけ後ろにずらすことである。通常の30日に、さらに30日の延長ができる(特許法第108条第3項)。また、料金不足によってもっと延長する手もある。

(6)最後に、早期審査の結果、早期に特許査定を受けた場合には、是非、検討いただきたいことがある。それは、特許査定後の分割出願である。早期に特許を得たとしても、競合他社が異議申立請求を行い、特許の取り消し手段を講じてくる可能性がある。そのような場合でも、分割出願をしておけば、さらなる特許を生み出すチャンスがある。そのチャンスがあることは、もしかしたら、最初に成立した特許に対する異議申立を抑止するかもしれない。競合他社も、後から生まれる1又は2以上の特許に対して逐一異議申立を行うのは金銭的に大変なはずだからである。分割出願は、最初の親出願から3年経過するまでは出願審査請求せずに放置しておくこともできる。つまり、あまり費用をかけずして、分割出願という「特許生み出しマシーン」を用意できるのである。

注:https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/letter/kyozetu_entyou_160401.html

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2.契約に馴染む                顧問・弁理士 渡邉秀治

(1)5月号にて「共同開発契約書作成マニュアル」の無料配付の案内をさせていただいた。3人の方から希望をもらい配送した。2人の方が企業知財部所属で昔からお付き合いのある方。1人の方がある県の知財窓口担当者で数年前から数回お伺いし馴染みになった方。希望をいただき嬉しい限り。私は、蓄積した各種ノウハウを生きている間に、知財関係者にお渡ししたいと思い、顧問会社の方を中心にノウハウ移転を実行している。各種講演もその一環であり、次の勉強会もその一つ。

(2)契約に馴染むことと、契約実力向上のための勉強会
 会社に入って数年目に、特許部門の中の技術導入契約の担当になった。それがきっかけで契約に馴染むことになった。契約関係書籍や米国がらみの本(著作権、特許)を読んだ。会社勤務時代、事務所設立後、事務所リタイヤ後を通じ、契約実務に従事している。その経験やノウハウを伝えるために、また請われて、契約勉強会をある企業で実施している。その内容は、以下のとおりであり、契約に馴染むこと、契約実力向上のための勉強会(依頼者の立ち位置を考慮したコメント作成、依頼者からの情報収集の重要性を知ること、種々の考え方があること等)である。この会は、各種の契約書のデータベース化の効果もあり。
①毎月1回2時間で計12回(現在は11回目終了)。
②各回、最初に○×のテスト(7〜10問)をし、30分程度、当方が解説を行う。
③各回の10日前ほどに「相談者から契約書案が持ち込まれた。あなたはどのようなアドバイスをするか。チェックするとしたらどうするか。」として当該契約書案を参加者に送り、当日までに参加 者は、チェック案を他の参加者全員に送ると共に該企業のサーバーに保存。当日には、そのチェック案を参加者全員が説明し質疑する(各自10分程度)。
④当該回終了後、10日前後以内に、勉強した契約類型の契約書を1又は2つを該企業のサーバーに保存。
⑤全12回の契約勉強会の対象は以下のとおり。
 第1回:秘密保持契約
 第2回:特許共同出願契約
 第3回:特許ライセンス契約(日本、米国を中心)
 第4回:商標ライセンス契約(日本)
 第5回:商標ライセンス契約(中国、米国の商標がらみも)
 第6回:著作権契約と各自の著作権がらみ案件の情報交換
 第7回:著作権契約(外国含む)と著作権講演資料説明
 第8回:共同開発契約
 第9回:共同開発契約残りと購買契約
 第10回:販売代理店契約
 第11回:渡邉契約講演資料(約170頁のパワーポイント前半)の質疑
 第12回:渡邉契約講演資料(約170頁のパワーポイント後半)の質疑

以上

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