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MEBUKI IP Small Talk 1月号(2022年)

目次

1.めぶき・東京オフィスの稼働

2.個人から組織へ

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1.めぶき・東京オフィスの稼働            パートナー・弁理士 長谷川洋

(1)東京オフィスの紹介
 先月、2021年の活動の一つとして、都内の特許事務所の事業承継について報告させていただいた。東京オフィスは、特許庁から徒歩3分程度、地下鉄の銀座線・虎ノ門駅や日比谷線・虎ノ門ヒルズ駅からも徒歩3分程度の非常に利便性の高い場所にある。東京オフィスは、今年2022年初頭から業務を開始した。昨年11月〜12月末にかけて、我々は、2022年からの業務開始に向けての様々な準備に追われた。2カ月あれば十分かと思っていたが、実際に準備作業を行ってみると2カ月では十分ではなかった。優先順位の低い作業は、今年に残さざるを得なかった。その一方で、事業承継の挨拶状の国内外クライアントへの送付、旧事務所のクライアントの訪問又はWEB会議などの優先順位の高い作業は昨年中に終了する必要があった。
 事業承継した事務所は、先月のメルマガでお伝えしたように、商標代理業務の多い事務所である。クライアント様の中には、鞄メーカのような製造業を営む会社の他、大手百貨店のようなサービス業を営む会社もある。全てのクライアント様とはいかないが、昨年末、一部のクライアント様を訪問し、今まで通りのサービス(顧問となっている場合には同条件)を提供することを説明させていただいた結果、ご理解いただいた。訪問させていただいたクライアント様には感謝の一言に尽きる。

(2)商標に関するコミュニケーションの一部紹介
 先日、マドリッド・プロトコルに基づく国際商標登録出願(以後、「マド・プロ出願」と略す。)の際に中国や米国を指定国に含めるべきか否かについて、旧事務所スタッフと話した。私とそのスタッフとの意見は、中国と米国についてはマド・プロ出願の指定国から外す方が良いと考える点で一致していた。その理由を次に述べる。 中国と米国は、商標出願数世界第一位と第二位の国でありながら、他の国と
は大きく異なる商標審査・保護システムをもっている。
 中国は、日本と異なる指定商品・役務の基準をもっている。このため、よほどシンプルな商品・役務でない限り、指定商品・役務の記載を補正せよとの指令が来る。しかも、商品等の区分と指定商品との組み合わせが中国の基準に合わないと、それを是正する手段がない。日本であれば指定商品に合わせて区分を変更できるが、中国ではその補正が許されない。クライアント様の中には、結局、中国のみに別途、商標を出願したクライアント様もいる。
 米国は、指定商品・役務を日本よりも具体的に記載することを要求する。マド・プロ出願は、本国(日本企業であれば日本)で登録した商標の指定商品・役務で出願するが、必ずと言ってよい程、WIPOを経由して、米国特許商標庁から、指定商品・役務を具体的に記載せよとの拒絶理由がくる。そうなると、米国弁護士の代理なしでマド・プロ出願することでコスト削減しようとしても、拒絶理由対応のために米国弁護士の代理にて拒絶応答しなければならなくなるので、コスト削減のメリットはなくなる。なお、WIPOのウェビナーでは、大手電機メーカの出願戦略が紹介され、米国についてはマド・プロ出願の指定国から外して別途直接出願するとのことであった。
 以上の理由から、中国と米国だけは、マド・プロ出願の指定国に含めず、直接、その国に出願する方が良い。ちなみに、中国では、日本の商標登録出願のパリ条約優先権を主張して出願すると、その優先権を維持するために、まず、日本の指定商品・役務のまま中国語に翻訳して出願しなければならない。大抵の場合、日本の指定商品・役務では中国の基準に合わないので、補正命令が来る。補正命令を低減してコスト削減を優先するには、パリ条約優先権を主張しないで中国に出願する方が良い。ただし、その場合には、出願日は日本の出願日ではなく中国の出願日とみなされる。コストよりも先願日を早く確保したいといった事情がある場合には、パリ条約優先権を主張して中国に出願することをお勧めする。

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2.個人から組織へ                   顧問・弁理士 渡邉秀治

(1)60歳を過ぎてから知的資産報告書、ビジネスモデルキャンバス(BMC:Business Model Canvas)、知財ビジネス報告書(特許庁事業)に携わってきた。それらの経験やサラリーマン時代の役職経験を踏まえ、組織の生き残り、拡大には以下のことが重要であると思うようになった。

(2)知的資産報告書では、知的資産を、人的資産、組織の構造資産(組織資産ともいう)、外部との関係資産の3つに分類している。中小企業が中小企業のままであるのは、従業員の技・知識や勘など、従業員が退職するとその企業が失う人的資産を組織資産にしないからである。換言すれば、暗黙知(言語化されていない知)を形式知(言語化や画像化されている知)に変えていないから。この考えは、会社の各部門でも言える。組織が成長、拡大しないのは、人的資産を組織資産化しない、形式知化しないからである。

(3)BMCでは、ビジネス上の重要な要素を9つとし、その要素を視覚的に分類し、ビジネスモデルの作成・把握をしている。この9個の分類を行うフレームワークは非常に重要であるが、もっと重要なものが、そのフレームワークで挙がってきたもののスケジュール化と実施フォローである。これは、課内会議や部門会議などで、提案され、やりましょう、となったが、その後の進展が無い場合と同じように重要な点である。方向付けや決定された事項が、言ったきり、決定しただけになるのは、①スケジュール化と、②担当決めと、③フォローチェック者決めとがなされていないから。BMCや会議では、上記①②③を決めなければ時間の無駄となる。ただし、BMCは、他の目的もあるので、その目的が達成されればかなりの成果となる。なお、フォローチェック者は、利害関係者以外の者にすること。

(4)知財ビジネス報告書を作成するために中小企業を訪問し、3時間ほどヒアリングするが、人的資産が組織資産化されていないことがうかがえ、また、時々、社長から会議の問題が出てくる。その折に、上述の(2)(3)のお話をさせていただいている。いろいろな会社、団体があるが10人程度までは、個人経営の延長で可能であり、組織的な考えはそれほどしなくてもよい。しかし、30人以上になると、組織としての動き、システムが必要になる。20人前後が踊り場であり、経営者の思考、行動の変化が必要となり、変化しないと成長しない。

(5)私自身の反省もあり、3社の顧問会社様と3つの顧問特許事務所様に、私の人的資産を組織資産にしてもらうべく、言語化、画像化してお渡しをすることを始めた。このメルマガの記事もその一つと考えている。 

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