私たちが責任をもって特許取得をサポートします

MEBUKI IP Small Talk 12月号(2021年)

目次

1.今年(2021年)を振り返って

2.会社、個人の強みなどの考察 2

__________________________________

1.今年(2021年)を振り返って          パートナー・弁理士 長谷川洋

 2021年の弊社の活動を振り返り、以下の2つの活動をご紹介する。

(1)都内特許事務所の事業承継
 弊社は、今年11月に、東京都港区虎ノ門にある田代特許事務所の事業を承継する契約を正式に締結した。事業承継のスタートは来年1月1日である。この話は、今年夏、急に飛び込んできた。弊社横浜オフィスに従たる事務所をおく田代弁理士から、同じ田代姓の田代和夫氏が所長を務める事務所の事業承継の話を伺った。この事務所は、商標業務を主とする事務所であり、40年以上もの間、業務を継続してきた。所長は、自身が高齢ということもあり、事業の譲渡先を模索していた。
 一方、弊社としては、現顧客との競合リスクもほとんどなく、商標実務を強化できる点にメリットを感じ、事業承継に手を挙げたといういきさつである。
 田代特許事務所の場所はそのまま弊社の東京オフィスとして、従業員も弊社帰属となり、来年1月から稼働する。

(2)契約勉強会
 今年8月から、顧問弁理士・渡邉秀治氏に教師になっていただき、弊社の長野茅野支店にて月1回の契約勉強会を実施している。長野茅野支店にて出席できない場合には、WEB会議ツールを使っている。勉強会は、12月の実施で5回目であり、秘密保持契約、共同出願契約、特許のライセンス契約、商標のライセンス契約という順で実施している。勉強会は、1回2時間で、○×式の小テスト、与えられた契約例からの正誤判断などを含む。また、最近の勉強会では、商標権の通常使用権許諾契約書のドラフティングが宿題として出され、当方を含む生徒は次回の勉強会にドラフトを持ち寄っている。
 多くの事務所弁理士は、どちらかといえば、契約業務よりも出願代理業務の方を多く行っている。このため、当方としては、このような勉強会は非常に重要であると考える。渡邉顧問には感謝している。勉強会は、まずは1年間継続して行う予定である。

___________________________________

2.会社、個人の強みなどの考察 2            顧問・弁理士 渡邉秀治

(1)前回、「会社、個人の強みなどの考察」(下記参照)を配信させていただいたところ、ある方から「渡邉さんが言う上位5%を目指すには、会社が何をすれば良いか?と自問自答するも、答えが浮かばない。もし、可能であれば、12月メルマガで、企業がどう行動すれば良いのか?という点に踏み込んだ記事を読んでみたい」との感想が出てきた。そこで、私なりに考えていることを以下に記す。

(2)まず、会社、事業の強みを洗い出すこと。強みは、リピートされるものやその原因である。会社内のいろんな人に聞き、またIPランドスケープ等を使い、外部の情報や知財情報から強みを探す。その強みが競合との関係で相対的にトップ5%に入っていない場合、5%以内に持っていく戦略が、経営戦略、事業戦略となる。

(3)また、強みが複数あり、それぞれに大きな差がない場合など選ぶべき強みが選択できないときは、複数、例えば3つを選び、仮の優先付けをする。優先付け1位のものを5%以内に持っていく戦略を作り、優先付け2位のものを5%以内に持っていく戦略を作り、優先付け3位のものを5%以内に持っていく戦略を作る。その3つのものを作る過程で、真の優先付けが表れてくる。そして、真の優先付け1位のものだけにするか、1位と2位のものを合わせた経営戦略、事業戦略をたてる。

(4)経営戦略、事業戦略を立てたら、それらの戦略に基づき、法務戦略や知財戦略を立てる。強みを強化するような上位の経営戦略、事業戦略が無い場合は、IPランドスケープなどを使い、自社の立ち位置を確定させ(推定し)そこから法務戦略や知財戦略をたてる。

(5)なお、大手企業の場合、強みの強化に加え、弱みの強化も必要となることが多い。そのような場合は、弱みの発見や強化の際も、上記(1)(2)(3)(4)が準用可能である。この考え方は、個人や中小企業にも適用できるが、個人や中小企業の場合は、弱みの強化は、効果が弱く、優先順位が低い。まず強みの発見、選択、強化に努めるべきと思う。

(6)付言すると、戦略、戦術の実行過程でのチェックは、必須であり、次の戦略、戦術の作成に極めて重要である。チェックは、戦略、戦術を立てた人ではなく、その人以外(例:部門中の作成関係者以外や全くの第三者)が良い。

ーーーーーーー前回の当方のメルマガーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(1)最近4年間ほど、特許庁事業の知財ビジネス評価書・提案書の作成に関わっている。その中で、ここ2年は、内閣府から出ている経営デザインシート簡略版を私なりにアレンジした1枚シートを作成し、使用している。中小企業の社長さんにそのシートを活用してヒアリングをしているが、次の3点が気になる。この気になる点は、個人、特許事務所にも当てはまる感があり。
イ.ヒアリング時にその会社の強みを聞いているが、どこの会社(他の会社)でも当てはまるものが出てくることが多い。
ロ.顧客への提供価値についても聞いているが、顧客側の目線ではなく、会社側の目線で考えたものが非常に多い。
ハ.将来の展開についての考えが出てこない場合が多い。

(2)上記3点以外も気になる点があるが、この3点は主なものである。ヒアリング時などに社長さん方にアドバイスしていることを下記する。
イ.強みは、リピートされる項目、要因であり、また競合との中で5%以内に入るもの。そのようなものが無い場合、それを作る活動が経営戦略、生き残り戦略の主要部分となる。
 私は、社会人として、知財にずっと従事していたが、メインは特許業務であった。しかし、現在、リピートされ、依頼を受ける仕事は、契約や知財戦略や中国商標である。1万人を超える弁理士、会社の多くの元知財部員の中で、5%以内に入っていると他人から思われるものは、特許ではなく、契約、知財戦略、商標なのである。
 現在、知財戦略通信講座の講師の3年目を行っているが、受講者の方に「あなたの強み」を訊いているが、どの方も、この5%以内、リピートされるもの、という観点が無い。
ロ.顧客への提供価値についても、「このようなサービスができる」「顧客のニーズを直接把握し、商品企画に結び付けている」など、こちら側目線のものなっており、客の価値に関係しないものとなっている。
 これは、特許事務所の場合にも当てはまる。また、個人の生き残りの際も、客目線での思考が重要なポイントとなる。
ハ.将来の展開について、すぐに出てくる社長さんの場合、その企業は利益などの面で良い企業が多いという印象。いつも思うのは、将来など不確かなものは、確定的なものを考えたり、記載したりする必要はない。将来は、どんどん変わっていくものであり、そのとき、そのときの最善と思うものでよい。多くの人は、これが正解である、というものが出てくるまで考え、または出てこないので考えるのを止める。しかし、君子豹変で良いのである。PDCAを回せば良いのである。仮説、検証の繰り返しでも良い。

_________________________________

CopyRight (C) MEBUKI IP Law Firm
社内用・社外用を問わず無断複製(電子的複製を含む)を禁ずる