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MEBUKI IP Small Talk 11月号(2021年)

目次

1.秘密特許制度と第一国出願制度の導入検討

2.会社、個人の強みなどの考察

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1.秘密特許制度と第一国出願制度の導入検討      パートナー・弁理士 長谷川洋

A.秘密特許制度
(1)2021年10月13日、木原誠二官房副長官は、記者会見で、岸田文雄首相が掲げる経済安全保障分野の法整備に関し、重要技術の特許を非公開にする「秘密特許」の導入を検討課題とする考えを示した(注1)。
(2)秘密特許制度とは、国防や国家の安全保障上の観点から、不利益をもたらす可能性がある発明の出願を非公開とする制度である。秘密制度は、アメリカ合衆国、ロシア、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ、オーストラリア、シンガポール、韓国などのいくつかの先進国を含む国々で採用されているが(注2)(注3)、日本では採用されていない。日本における唯一の秘密制度は、意匠法にのみ採用されている。
(3)第二次世界大戦終了までは、日本でも秘密特許制度を採用していたが、戦後、廃止された。現在の日本では、公序良俗に反しない限り、特許出願は出願日から18カ月経過後に強制的に公開される。中国や韓国では、日本国特許庁のデータベース(J-PlaPat)を検索して、公開された技術を入手し、自国で特許を取得し、あるいは自国の軍事技術に取り込んでいるともいわれている(注4)。日本は、外国からみたら、情報漏洩天国なのである。このような状況に危機感をもってきた日本政府は、秘密特許制度の導入の検討を始めた。

B.第一国出願制度
(1)第一国出願制度とは、その国で完成した発明については、まずは発明完成国で出願することを強制する制度である。この制度も、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、シンガポール及び韓国で採用されているが、日本では採用されていない(注2)(注3)。中国では、第3次改正専利法の施行前までは、第一国出願制度を採用していたが、第3次改正で撤廃し、その代わりに、最初に外国出願を行う際には機密審査を受ける規定が設けられた。
(2)日本では、第一国出願制度がないため、日本に存在する企業・個人は、日本で発明が完成されても、最初に外国で出願することができる。これは、国防や国家の安全保障に関する発明であっても何ら制約されない。日本では、2020年頃から、先進諸国に遅れながらも、秘密特許制度および第一国出願制度を採用すべきではないかとの提案がなされ、その是非が議論されている。

(注1)
https://www.sankei.com/article/20211013-6ADYARVEZJLUJJRFCGEQDXBXDE/
(注2)
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2020/05/8e2be5151a6472d1e4c7b19909f4d071.pdf
(注3)
https://www.benseiren.gr.jp/news/2019/10/2.html
(注4)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66019

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2.会社、個人の強みなどの考察               顧問・弁理士 渡邉秀治

(1)最近4年間ほど、特許庁事業の知財ビジネス評価書・提案書の作成に関わっている。その中で、ここ2年は、内閣府から出ている経営デザインシート簡略版を私なりにアレンジした1枚シートを作成し、使用している。中小企業の社長さんにそのシートを活用してヒアリングをしているが、次の3点が気になる。この気になる点は、個人、特許事務所にも当てはまる感があり。
イ.ヒアリング時にその会社の強みを聞いているが、どこの会社(他の会社)でも当てはまるものが出てくることが多い。
ロ.顧客への提供価値についても聞いているが、顧客側の目線ではなく、会社側の目線で考えたものが非常に多い。
ハ.将来の展開についての考えが出てこない場合が多い。

(2)上記3点以外も気になる点があるが、この3点は主なものである。ヒアリング時などに社長さん方にアドバイスしていることを下記する。
イ.強みは、リピートされる項目、要因であり、また競合との中で5%以内に入るもの。そのようなものが無い場合、それを作る活動が経営戦略、生き残り戦略の主要部分となる。
 私は、社会人として、知財にずっと従事していたが、メインは特許業務であった。しかし、現在、リピートされ、依頼を受ける仕事は、契約や知財戦略や中国商標である。1万人を超える弁理士、会社の多くの元知財部員の中で、5%以内に入っていると他人から思われるものは、特許ではなく、契約、知財戦略、商標なのである。
 現在、知財戦略通信講座の講師の3年目を行っているが、受講者の方に「あなたの強み」を訊いているが、どの方も、この5%以内、リピートされるもの、という観点が無い。
ロ.顧客への提供価値についても、「このようなサービスができる」「顧客のニーズを直接把握し、商品企画に結び付けている」など、こちら側目線のものなっており、客の価値に関係しないものとなっている。
 これは、特許事務所の場合にも当てはまる。また、個人の生き残りの際も、客目線での思考が重要なポイントとなる。
ハ.将来の展開について、すぐに出てくる社長さんの場合、その企業は利益などの面で良い企業が多いという印象。いつも思うのは、将来など不確かなものは、確定的なものを考えたり、記載したりする必要はない。将来は、どんどん変わっていくものであり、そのとき、そのときの最善と思うものでよい。多くの人は、これが正解である、というものが出てくるまで考え、または出てこないので考えるのを止める。しかし、君子豹変で良いのである。PDCAを回せば良いのである。仮説、検証の繰り返しでも良い。

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