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MEBUKI IP Small Talk 10月号(2021年)

目次

1.特許法等の一部を改正する法律が可決成立(令和3年5月21日法律第42号)<その3>

2.特許の優位性についての評価

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1.特許法等の一部を改正する法律が可決成立(令和3年5月21日法律第42号)<その3>
                           パートナー・弁理士 長谷川洋

 先月に引き続き、今年5月に成立した特許法等の一部改正法の中で個人的に注目すべきと思う点について説明する。
令和3年改正法についての解説は、今回の第3回目が最後である。

注目点は、「特許料等の官費値上げ」である。

 特許庁は、最近、出願審査請求費用の値上げをしたばかりであるが、来年の令和4年4月1日から、特許と商標についての特許料・登録料(登録料は特許と商標の両方)、年金(年金は特許のみ)および更新料(更新料は商標のみ)の値上げを行う。加えて、PCT出願の各種手数料とマドプロの個別指定手数料も値上げになる。
 本年10月22日現在、パブリックコメント募集終了の段階であり、未だ料金は確定していない。
しかし、特許庁の提案は、すでに下記URLに明示されており、よほどのことがない限り提案のまま確定する。一度、ご覧いただきたい。
 今回の値上げはかなり大きい。中には、改定前の料金の1.5〜2.0倍のものもある。

<料金改定案>
https://www.jpo.go.jp/news/public/iken/210716_ryokin_minaoshi.html

 特許庁に値上げの対象出願について電話で問い合わせたところ、PCT出願以外は、値上げの対象は、令和4年4月1日およびそれ以後に料金の支払いを行う案件とのこと。また、PCT出願の関係手数料は、PCT出願時を基準とするとのことである。
 このため、令和4年4月1日よりも前に特許出願した件であっても、令和4年4月1日以降に特許料や年金を支払う場合には、値上げされた新料金を支払わなければならない。
 このため、令和4年3月31日までの間に、駆け込みの料金納付が予想される。
 また、PCT出願についても、令和4年3月31日までの駆け込み出願が予想される。

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2.特許の優位性についての評価               顧問・弁理士 渡邉秀治

 最近、知り合いの弁理士さんから「特許の優位性について評価してほしいという依頼があった」とのことで問い合わせがあった。その中で「優位性というのは、つまりその特許の強さと、その特許がカバーする製品の市場での有用性だと思います。」との言があった。
 私は、知財ビジネス評価書や提案書の作成に2017年から携わっていて知財価値評価も行ってきた。しかし、市場での有用性までも含めた知財価値評価の経験はない。しかしながら、彼への回答として、「私どもの知財ビジネス評価書作成メンバーの中には弁理士会の知財価値評価部会の主要メンバーの者がおり、その者は裁判所案件も携わっている。また、私の大学の後輩で、知財経営センター(旧知財価値評価センター)副センター長(であった?)の者と懇意にさせていただいており、紹介することもできる。また、今話題のIPランドスケープの専門家も紹介できる」旨、伝えた。
 加えて、「特許の優位性」を私なりに考えると、以下の点が必要だと思われると伝えた。皆さまのご意見をお伺いしたいと思い、下記する。

A.特許面
(1)無効資料が無いこと。
(2)請求範囲が広いこと。
(3)権利残存期間が長いこと。
(4)共有ではないこと。
(5)他の特許で引用されている(出願人が公知例として、審査の段階で引例として)ことが多いこと。
(6)当該特許を実施するとき、ノウハウは必要とされないか、少ないこと。
(7)外国への出願(特許)有れば好ましい。
(8)異議、無効審判、情報提供があって特許になっていれば好ましい。

B.活用面
(1)多数の侵害品(又は侵害可能性)があること。
(2)当該特許の商品への付加価値が、該商品のシェアップにつながるもの。
(3)当該技術の市場分野の広狭。広いのが良いが狭くてもシェアを多く取れれば優位性大。
(4)当該技術の市場分野が広がりつつあるか、維持中であること。
(5)当該特許を使用して商品を作るのに、設備投資などの費用が少なくてすむ。
(6)当該技術の市場分野のトップ5の会社への売り込み可能又はそれらの会社での活用が可能。なお、この観点で考えるとき、上記(5)の観点も必要。
(7)当該特許を実施するとき、ノウハウが必要とされる場合、その面での支援ができること。
 知財ビジネス評価書や提案書における知財価値評価では、定性評価と定量評価を行う。定性評価では、上記「A.特許面」の数点について記載する。定量評価では、ロイヤルティ免除方式をメインで使用し、時には利益三分法も併用して、価値額を算出する。この価値額算出は、優位性とは異なる観点となる。優位性は相対的な評価であり、特に、活用面(市場面)での優位性を求めるのは、時間がかかり、情報も少ないという厳しさがある。

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