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目次
1.特許法等の一部を改正する法律が可決成立(令和3年5月21日法律第42号)<その2>
2.契約の成立は日本では口頭でOK 、英米や中国では(後半)
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先月に引き続き、今年5月に成立した特許法等の一部改正法の中で個人的に注目すべきと思う点について説明する。 主な改正事項については、先月のメルマガに列挙しているので、そちらを参照いただきたい。今月は、「特許権の訂正等における通常実施権者の承諾を不要とする」という改正点について紹介する。
改正法施行前では、特許権の範囲に影響を与える行為、例えば、特許権者が訂正審判請求、異議申立および無効審判における訂正請求、特許権の放棄を行う際には、専用実施権者および質権者からのみならず、通常実施権者からも承諾を得なければならなかった。
しかし、通常実施権者は、ときには、1つの特許権に対して数百人・社を超える場合もあり、全ての通常実施権者からの承諾を得られずに、訂正審判請求や訂正請求を行うことができない事態もあった(注1)。
その一方で、通常実施権は、自己の実施行為に対する特許権者からの訴追を免除されれば足り、特許権の効力範囲が狭くなって自己の実施行為が当該範囲外となったとしても大きなデメリットはないと考えられる。ただし、筆者の個人的な見解ではあるが、通常実施権者にとって、特許権の効力範囲が小さくなって自身の実施行為を守る防御壁がなくなると、それなりにデメリットが生じると思う。
このような特許権者と通常実施権者との利益バランスを考慮し、有識者による検討を重ねた結果(注2)、改正法施行後は、訂正審判請求、訂正請求および特許権の放棄にあたっては、通常実施権者からの承諾を要しないこととなる。
改正法施行後、特許権者は、通所実施権者の承諾なく訂正審判請求等を行うことができる。このため、通常実施権者が自身の承諾を要すると考える場合には、ライセンス契約の条項の中に、承諾を要する旨を特別に取り決めておく必要がある。契約上、何も決めていないと、原則通り、特許権者は通常実施権者に何も通知せず、訂正審判請求、場合によっては特許権の内の一部または全部を放棄してしまうかもしれないからである。これは、独占的通常実施権者といえども例外ではない。独占的通常実施権者も、契約上、特別に取り決めを置くことを主張して特許権者と契約を締結するのが良い。
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最近、契約関係の講演や全国の知財窓口支援において、日本と欧米の契約の成立の違いについてお話をする機会が増えた。契約業務は、会社時代、特許事務所経営時代を通じ、業務時間の5%前後を費やしてきた。2004年の弁理士会のパテント誌に「技術関連契約において必要とされる基本知識,ノウハウ」という題目の寄稿論文を発表したが、その折りにも、日米の違いについて一部触れていた。今回は、前回の日本法に続き、英米と中国についてお話をする。
(1)英米法
英米人にとって、神との関係も契約であり、これこそが、契約の観念の原点である。また、互いに侵略しあってきた欧州、異人種のるつぼである米国では、意思表示は文章によって詳細かつ明確にする必要があり。英米では、相手が約束を破ることを前提に契約書を作成。
英米法では、合意(Consensus)と契約(Contract)は、明確に異なる。英米法では、単なる合意(申込と承諾のみの場合)は、契約とはならないとされる。契約とは、法律上強行可能な合意であり、合意に加えて、さらに約因(Consideration)もしくは捺印証書方式(署名、捺印(会社印)、交付)が必要とされる。「約因」の考え方、運用は、英米法独特のものである。なお、Considerationは、約因以外に、「対価」、「交換的な約束」等として訳されている。合意を正当づけるだけの十分な理由がなければならないという考え方。Agreementは、合意、同意、契約などと訳されているが、単なる合意ととらえると、契約(Contract)とは異なるが、米国では、ほぼ契約と同義として把握されている由(米国弁護士神頭氏談)。
米国との契約で対価が1ドルとなっているものを見た方がおられるかもしれない。私も見た経験がある。ウィキペディア(Wikipedia)によれば、『英米法における契約(Contract)とは「当事者間の合意から派生する契約法および他の適用されるべき一切の法規範によって法的意味を付与された権利義務の総体」とされる。契約が効力を有するためには約因が必要であり、当事者間の合意だけでは契約は成立しないとされている。そのため、無価値の物品の売買においても、対価として1ドル支払う慣習がある。』
(2)中国法
中国契約法によれば、下記条文から分かるように、日本とほとんど同じ考え方のようである。口頭で承諾(合意、同意)をすれば契約が成立する。
第10条 当事者は、書面方式、口頭方式及びその他の形をもって契約を締結することができる。法律、行政の法規が書面方式を採用することが規定された場合、書面形式を採用しなければならない。当事者の間に書面形式の使用を定めた場合、書面形式を採用しなければならない。
第13条 当事者は各種の契約を締結する際、申込、承諾の方式をとるものとする。
第16条 申込は、申込を受ける側に到達した時点から、その効力を生じるものとする。電子データ方式による契約締結の場合、受取人が特定のシステムを指定して電子データを受け取るときには、当該電子データが、当該特定システムに受信された時間を、到達時間とし、特定システムを指定していない場合、当該電子データが受取人のいずれかのシステムに受信された最初の時点を、到達の時点とする。
第21条 承諾とは、申込を受ける側が申込に同意する意思表示をいう。
第23条 承諾は申込が確定された期限以内に、申込者に届かなければならない。承諾期限を確定していない場合、承諾は下記規定に従って到達しなければならない。
(一)対話の方式で申込を行なう場合、即時に承諾をしなければならない。但し、当事者に別途の約定がある場合は、この限りではない。
(二) 非対話の方式で申込を行なう場合、承諾は合理的期限内に届かなければならない。
第25条 契約は承諾が効力を生ずる時点より、成立するものとする。
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