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目次
1.複数意匠一括出願がいよいよ2021年4月1日からスタートなのだが…
2.知財の損害賠償制度(後半1/2)
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令和元年意匠法改正によって、従来では保護対象ではなかった建築物、店舗の内装及び画像のみが保護対象に加わったのは記憶に新しい。
ただし、全ての改正事項が一斉に施行となったわけではなく、「保護対象の拡大」および「関連意匠制度」を含む多くの改正事項は2020年4月1日に施行となったものの、「複数意匠一括出願制度」、「物品区分の廃止」及び「手続救済制度(特許と同様の救済)」は、2021年4月1日から施行の予定である。
ここでは、複数意匠一括出願を取り上げて述べてみたい。
まずは、少し前の実務経験を述べる。
実は、2020年秋頃、米国の某事務所から、複数意匠を有する米国デザインパテントに基づくパリ条約優先権を主張した日本意匠登録出願の依頼があった。この段階では、日本では、複数意匠一括出願はできなかった。特許庁にも事前に問い合わせ、法律の施行前でも、当該一括出願ができないかを訊いたが、回答は「ノー」だった。しかし、米国の出願人からの強い希望で、複数意匠一括出願を行った。おそらく、拒絶理由通知が来ると思うが、6か月経過した現時点では拒絶理由は来ていない。
複数意匠一括出願の制度に話題を切り替える。この制度は、文字通り、複数の意匠をまとめて1つの出願とできる制度である。
例えば、意匠同士が類似していなくとも100点の意匠までなら1つの出願にまとめられる。また、1つの意匠に類似する意匠が9点あって、他の10点の意匠は他の意匠に非類似である合計20点の意匠も1つの出願にまとめられる。
これだけ聞くと、なんだか得した気になる。
しかし、結論から言えば、複数意匠一括出願に、それほどの魅力はない(個人的見解)。
理由1: 出願費用は、16000円*意匠の数であり、1つの出願にまとめてもまとめなくとも特許庁に支払う費用は同じである。
理由2: 登録費用・年金も、出願費用と同じく、登録意匠の数だけ必要である。
理由3: 一部の意匠に拒絶理由があると、他の意匠に拒絶理由がなくとも、拒絶される。
理由4: 新規性喪失の例外の適用は、1つの意匠にのみ関係していても、願書に記載を要する。
ちなみに、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際意匠登録の場合、複数の意匠を1つの出願にまとめられ、意匠の数に応じて費用の減額がなされる。欧州共同体意匠(EUIPOへの出願)も同様に減額制度がある。なぜ、日本の意匠制度に意匠の数に応じた減額がないのか不思議である。
最近、お客様から意匠の出願依頼が増えている。今回の改正の中では、保護対象拡大と、関連意匠制度の大改正(関連意匠のみに類似する意匠も登録可能、関連意匠の出願が基礎出願から10年まで延長等)とが改正の目玉であるのは違いない。
一方、現時点では、複数意匠一括出願だけは費用的には魅力がなく、かつ何かメリットがあるようにも感じていない。少し様子を見て、今後の出願経験者の声も聴きながら、メリットがあるようなら利用したい。
以上
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昨年の7月号で、「(1)懲罰的損害賠償」に関し各国のものを紹介し、「(2)日本の改正方向」では、「知財重視の傾向が強まる中で、さらなる法改正(権利者優位)を期待したいし、期待できると思われる。」ことを述べた。この後半1/2(今回)では、「(3)侵害者利得の全部掃き出し」を、後半2/2(次号以後)では「(4)利益など」について述べたい。なお、以下では日本ライセンス協会発行の「LES JAPAN NEWS,Vol61,NO.2,June 2020」の『特許権等侵害に係る「損害賠償5.0」への移行と展望について~特許法102条2項による「侵害者利益吐き出し」の徹底と確立に向けて~久保 次三』(以下、文献1という。)を非常に参考にした。
(3)侵害者利得の全部掃き出し
特許法は、侵害訴訟における損害額の算定に当たって3つの体系を用意している。102条1項、2項、3項である。102条1項は、「侵害品の譲渡数量×権利者製品の単価利益額」を逸失利益(損害賠償額)として算定する規定であり、2項は、「侵害品譲渡数量×侵害品の単価利益額」(=侵害者の利益を損害額)とする規定であり、3項は、権利者が不実施の場合に適用されるもので、「侵害品の売上高×相当実施料率」の算定額が損害額となる規定である。
現行法(2019年改正)は、前半で述べたように、米国の懲罰的損害賠償制度が中国、台湾、韓国で近年採用され始めたことと、知財意識の高まりの中で侵害者にとって侵害しどくの状況を少しでも権利者有利にしたい、という背景がある。
特許法102条2項は、「侵害者利益吐き出し」に関する規定である。その規定は改正されなかった。内容は、特許権者は侵害者に対し損害賠償を請求する場合において、侵害者が侵害行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者が受けた損害の額と推定する、というものである。この条項は、大学など実施とは関係しない組織にも適用されるのか?文献1では「全く事業の実施に関与していない個人発明家や大学・研究開発機関等のような権利者に無条件に2項を適用する余地がないものと解釈されている。なお、権利者がライセンス事業として、売上ベースのランニングロイヤリティを受け取るという実施許諾をしている場合には、侵害行為によって権利者の利益が現に損なわれていることになるから2項適用が認められても良いとする説がある。」としている。文献1の著者は、2項を「無条件での侵害者利得の返還規定に拡充させるという提言である。2項を主観的損害概念から脱却させ、規範的・客観的損害概念に移行させるべきである。」としている。
現行法(2019年改正)では、1項の改正と4項を新設している。共に損害額を増加させる方向に働くものである。このことや海外状況等を考えると、さらに権利者優位の改正が行われるのは確実であると思料する。
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