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蚊の特性を利用した驚きの防虫組成物
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(1)2020年12月9日の夜のニュースをなんとはなしに聞いていたら、興味深い発明の話が耳に入った。それは、花王株式会社が、蚊が肌に停留しにくくする安全な防虫剤を開発したという話である。従来の防虫剤は、少なからず幼児などには有害であるが、特定のシリコーンオイルを含有する防虫剤は、安全でかつ蚊にさされないものだという。
詳細は、花王株式会社のWEBSITEを参照頂きたい(注)。
(2)早速、特許庁のDBにて調べてみると、下記のような6つの公開公報を見つけた。これらの内の1つは、2018年9月に最初に出願され、他の5つは、同年12月に最初に同日出願されていた。
・特開2020-097563号公報(2018年9月出願)
・特開2020-109075号公報(2018年12月出願)
・特開2020-109076号公報(2018年12月出願)
・特開2020-109077号公報(2018年12月出願)
・特開2020-109078号公報(2018年12月出願)
・特開2020-109079号公報(2018年12月出願)
(3)基本特許出願の公開公報(特開2020-097563号公報)の請求項1は、以下の通りである。
【請求項1】
避剤。
(4)この特許出願公開公報を読むと、「害虫が動物の体表面に降着した際に、肢に異物が付着して汚れるのを嫌う性質を利用できること」を見出し、「害虫の肢に親和性があり、容易に付着する物質を動物の体表面に塗布すること」により防虫効果を発揮させることがコンセプトのようである。蚊は、デング熱、ジカ熱、マラリア等の病原体を媒介し、地球上で最もヒトを殺している生物である。この発明の有効成分の本命は、ヒトへの有害性の低いシリコーンオイルである。害虫忌避剤は表面張力と粘度で数値限定されている。低表面張力で低粘度の忌避剤は、蚊の脚に触れると脚への粘着性を発揮する。蚊はそれを嫌い、吸血に必要な約1秒を経る前に飛び立ってしまう。この結果、ヒトは、蚊に刺されずに済むというわけである。
(5)この特許出願を見て、参考になると感じたのは2点ある。1つは、発想の転換であり、蚊の嫌う有毒成分を追及するのではなく、蚊が肌に停留しにくい塗布剤を追及したことである。もう1つは、同類の特許出願を間髪いれずに短期間で出願していることである。ある基本的発明を出願後1年半経過すると、その内容は強制的に公開される。その後、マイナーチェンジの発明を出願しても、自分自身の先の出願の内容が公知であるから、特許を取得するハードルが高くなる。このため、同類の出願は、なるべく短期間に集中して出願することが好ましい。
(注)https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2020/20201209-003/
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