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目次
1.新型コロナにより延期となった海外出張
2.競業避止義務について考える(後半)
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新型コロナウイルスは、世界中の国の経済活動に影響を与えている。日本では感染者数の大きなピークは過ぎたとはいえ、第2、第3の感染者数のピークが来る可能性はある。昨年4月中旬に、弊社の松尾代表、渡邉顧問および当方は、ニュージーランドに出張して、ニュージーランド最大都市のオークランドに拠点を設立した。目的は、この拠点を、ニュージーランドと東アジア(日本含む)との間の知財サービスのハブとすることと、今後の海外第二、第三など海外拠点展開の試行(勉強)することにある。今年も3月末に、我々は、1年ぶりにニュージーランドへの出張を予定していた。
しかし、今年2月から、日本をはじめ多くの国で、新型コロナウイルスの感染防止対策が講じられ、ついには日本-ニュージーランド間の渡航が不可能となった。このため、我々はニュージーランドへの出張を延期せざるを得なくなった。
今年3月に予定していた出張では、以下を予定していた。
(a)ニュージーランド知財庁訪問および相互講演の実施
昨年、ニュージーランド知財庁(首都ウェリントン所在)にアポイントをとろうとしたが、毎年4月は業務がたてこんでいて難しいとの理由でアポイントをとることができなかった。
しかし、今回は、後述のJAMMS&WELLSと我々の仲間の尽力で、今年4月第一週に、ニュージーランド知財庁の見学、および日本とニュージーランド双方の知財講演を行うことが決まっていた。
(b)現地知財事務所での講演
我々は、現地知財事務所の一つであるJAMES&WELLS( http://www.jamesandwells.com/ )で講演を行う予定であった。
JAMMS&WELLSは、ニュージーランドでは大手の事務所であり、40~50人の弁理士資格所有者を擁し、事務員含め100名を超える事務所である。日本の弁理士の訪問および講演を大変歓迎してくれていたが、残念なことに出張は延期となった。
ニュージーランドは、地理的にも経済的にもオーストラリアと密接な関係にあり、オーストラリアの弟のような国である。同事務所を含めニュージーランドの比較的大きな事務所は、オーストラリアにもオフィスを持っている。JAMMS&WELLSは、オーストラリアの東海岸にあるブリスベンに支店を持っている。JAMMS&WELLSと異なり、オーストラリアのオフィスを本社、ニュージーランドのオフィスを支店とする事務所もある。
延期となった出張は、今年秋または来年春を予定している。しかし、新型コロナウイルス感染症については、今後、収束に向かうか、それとも新たに感染者のピークを迎えるかは誰にもわからない。
ジョンズ・ホプキンズ大学が公表しているデータ( https://coronavirus.jhu.edu/map.html )によれば、ニュージーランドの2020年6月16日現在の感染者数は1,506名、死者数は22名である。一方、日本の同日現在の感染者数は17,481名、死者数は934名である。人口比では、ニュージーランド(人口:約500万人)における感染者数割合は日本より多いが、死者数割合は日本より少ない。ニュージーランドは、現在、冬であり、これから感染者が増えるのではないかとの見方もある。ニュージーランドへの出張は、今後の感染者の増減と、日本およびニュージーランド両国の新型コロナ水際対策の行方にかかっている。
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今年の2月号にて前半(日本)を記載したが、今月号にて、後半(米国、中国)を記載する。
米国に関しては、弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所のホームページの記事(注1)が参考になると思われ、以下に記載した。下記の米国の状況は、秘密保持契約等、情報漏洩防止の規則、慣行が十分に運営されていることが反映されているようだ。
「アメリカでの競業禁止契約の普及率:アメリカでは競業禁止契約が普及しており、米国財務省によると、約3000万人の米国人従業員、つまり約5人に1人が競業禁止契約の制限下にあるとされています。なかでも、高所得の従業員に対しては、低所得の従業員に比べ競業禁止契約を結んでいる割合が高く、年収40,000ドル未満の従業員では約14%にとどまりますが、 年収150,000ドル以上の従業員では約半数が競業禁止契約を締結しているとの報告があります。」
「アメリカでは全国的に競業禁止契約に反対する動きがあります。例えば、ワシントン州では、2019年5月に年間の収入額が100,000ドル未満の者に対する「競業禁止契約」締結を禁止する法律が制定されました。続いて2019年 6月には、メリーランド州では低賃金労働者(1時間あたり15ドル以下、または年間31,200ドル以下の収入を得る労働者)に対して競業禁止契約を締結させることを禁止しました。ニューハンプシャー州やバーモント州などでも、競業禁止契約による法的拘束力を大幅に弱める法案を検討しています。この動きは、政府レベルにも及んでおり、2018年には上院議員によって、競業禁止契約の締結を禁止する法案が提出されています。」
中国の競業避止義務は、「中国における営業秘密管理マニュアル」(注2)に次のように記載されている。これは、法律で厳しく規定しないと遵守されないことと、規定しても守らない会社、従業員が多いことによると思われる。
「日系企業の場合、秘密保持義務や競業避止義務については、一旦、契約を締結しただけで対応を終わらせがちであるが、締結した契約上の義務がその通りに履行されているとは限らない。取引関係に入る前に、本当に契約内容を守れる相手であるのか、信用調査等を行うことも考えられる。また、退職者に競業避止義務を課す場合には、補償金を支払う必要があることから、競業避止義務を課した退職者のその後の足取りを、調査会社を利用するなどして追跡、確認する中国企業も少なくない。法律的、形式的な対応にとどまらず、場合によっては、そうした現実的な対応も検討する必要があろう。」
「中国では、労働契約法上、競業避止義務を課す場合に、以下の要件を満たす必要がある(第 24条)。
・ 高級管理者、高級技術者、秘密保護義務を負担する従業員を対象とすること。
・ 競業避止義務を課す期間は、2 年以内であること。
・ 一定の補償金を支払うこと 14 。補償金について約定がない場合、司法解釈(「最高人民法院による労働争議事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」)には、競業避止義務を履行した労働者は、労働契約解除または終了前の12 カ月の平均給与の 30%、または、労働契約履行地の最低給与標準額のいずれか高い方の金額に従い、月額補償金の支払いを要求できる旨、規定されている。
・ 違約金を規定することもできるが、過大な金額を規定しても、訴訟や仲裁時に限定される可能性がある。」
*注1:https://pm-lawyer.com/20190913/
*注2:https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/besshireiwa.pdf
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