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令和も早や2年目に入りました。中国起源の元号も今では日本のみ。唐などの古代文化(仏像、建築など)も日本に残り、独自に発展してきました。日本に生まれて良かった、と思う人が多くなるように、切に思う次第です。
今年も弊社のメルマガをお読みいただきたく、配信させていただきます。いたらない部分や、おやと思われる部分がありましたら、今後も、遠慮なくご指摘、お問合せをいただければと存じます。また、お読みになった感想などもいただければ幸いです。
目次
1.中国の改正専利審査指南における重要ポイント(その1)
2.知財雑記6
3.職務発明規程を考える
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2019年11月1日に、中国の改正専利審査指南が施行された(注1)。改正事項の内で日本の出願人にとって重要と思われる事項を2回に分けて説明する。
(1)2次分割出願時期の明確化
今回の改正では、原出願からの分割出願(1次分割出願)が単一性違反を理由とする拒絶理由通知を受けた場合で、かつ1次分割出願が審査・復審・復審に対する訴訟、に係属している場合に限り、1次分割出願からの分割出願(2次分割出願)が可能であることが明らかになった。
中国では、原出願から自発的に分割出願を行う場合、原出願が審査に係属しているか、または特許許可通知後2カ月以内に限り可能である。
しかし、原出願から分割した1次分割出願から、さらに自発的に2次分割出願を行いたい場合には、原出願の存在(原出願がまだ出願中であること)が条件となる。このため、原出願が既に特許登録あるいは放棄されていれば、自発的な2次分割出願は不可である。原出願が特許許可になった際には、必要であれば2つ以上の1次分割出願を行うのが好ましい。
一方、自発的な分割ではなく、1次分割出願に対して審査官から単一性違反を理由とした拒絶理由通知を受けた場合には、2次分割出願の機会が得られる。
今まで、2次分割出願の機会の解釈には疑義が生じていた。その疑義とは、2次分割出願は、1次分割出願に対する単一性違反の拒絶理由通知を受けた際の応答期間に限定されるのか否かと、1次分割出願が放棄、拒絶確定又は特許許可になった後も可能か否かである。この度の改正は、上記疑義を解消し、1次分割出願が放棄・拒絶確定になっていれば2次分割出願できない一方、1次分割出願の拒絶理由通知への応答期間以外でも2次分割出願が可能であることを明確化した。
なお、日本では、新たな分割出願を次から次へ行うことができる。私は6代に渡る分割出願(分割後の6代に渡る日本特許)を見たことがある。
(2)優先審査の制限及び遅延審査制度の採用
特許出願と実用新案出願を併願している場合には、特許出願に対する優先審査の請求は認められないこととなった。また、特許出願と意匠出願に限り、審査開始を1年、2年あるいは3年遅らせることを申請できることになった。
(3)ヒト胚幹細胞の保護
従来、ヒト胚幹細胞とその作製方法の発明は特許付与対象外であった。今回、体内に発育していない受精14日以内のヒト胚を利用して幹細胞を分離または取得した場合、社会道徳に違反する理由で拒絶できない、とする内容に改正された。
中国は、ヒト胚幹細胞に関する技術促進に舵をきったと思われる。
(注1)「専利審査指南」の改正に関する公告-JETRO
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20190924_1.pdf
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知財権の継続保有(年金納付可否)、知財訴訟等では、知財権の強さ(有効・無効、侵害・非侵害、知財権がカバーする規模等)の評価が重要である。特許権は、市場拡大時期に合致した旬の特許権であれば価値が高く、そうでなければ価値は低い。以下、知財権(主として、特許権)の強さの評価について述べる。
(a)知財訴訟における知財権の強さの評価
知財係争で当事者間交渉がまとまらないと訴訟で争われる(注1)。
ここで重要なのは、裁判所では、知財権の強さの評価は、知財権保有者の企業規模とは無関係に平等に扱われることである。
そのため、中小企業であっても大企業と同じ立場で対抗できる(注2、3)。
(b)知財権の強さの大きな要因:質と量
一件の知財権より、三本の矢のように、複数束ねた知財権の方がはるかに強い。単純な足し算を超える強さがある。特許網作りは、この考えに基づく。
しかし、束ねる知財権に、基本部分で、欠陥がないことが必要だ。基本的な欠陥が少しでもあれば何件束ねても意味をなさない。大企業が知財権を何万件保有していても、個々の知財権に何らかの欠陥があったり、基本思想部分で欠陥があったりすれば無意味だ。
欠陥がない知財権を複数束ねると強い知財権になる。
(c)旬な知財権は強い(価値は高い)
市場規模が拡大した時期に、それに対して権利行使可能な知財権は旬であり価値が高い。一方、権利行使可能な知財権であっても、市場が未発達であったり衰退した時期においては、価値は低い。
市場規模の拡大時期にそれに対して権利行使可能な特許権を保有するためには、市場拡大時期に合うような出願・権利化時期の調整、市場動向を見極めた権利化等の調整が必要だ。もっとも、それは容易でない。
(d)評価主体
知財権の強さの評価(特に、有効・無効、侵害・非侵害)では、知財権保有者による自己評価より、知財権保有者以外の他者評価の視点が大事だ(注5)。
(注1)米国では、わずかな交渉で訴訟提起が行われ、その後の1年程度のディスカバリ期間で相互に資料や証言聴取などの手続きを経て、判決が出る前に和解することが非常に多い(訴訟が提起されたものの95%程度)。中国は、今では、米国の数倍の訴訟が発生しており、訴訟大国となっている。
(注2)米国では、陪審員が判断する裁判になることが多く、日本企業は厳しいと言われ、中国では、内陸地方においては、まだ中国企業優位の判決が出やすいと言われている。
(注3)有効・無効は、訴訟まで行くような案件では、100:0ということは、ほとんど無く、60:40や30:70など判断する人によって変わるものが多い。侵害・非侵害も同様であり、しかも、最近では、必ず均等(文言的には侵害していないが、発明の効果などを考慮して侵害とする考え)の判断も必要になっている。
(注4)特に、基本特許が権利切れの後に、市場が拡大するような商品(例:液晶、DVD、太陽電池)については、市場拡大時は改良特許ばかりとなり、回避もしやすいものが多くなってしまう。
(注5)特に、競合が最も分かる。なぜなら、競合(ライバル)は、差し止めや損害賠償を恐れるため、無効調査や侵害判断を本気になって、しかもお金をかけて行うからである。
次回も引き続き雑記する。
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会社時代に職務発明規程を変更したり、報奨制度を修正したりした。特許事務所経営時代も種々の相談を受けた。現在、長野県のある会社の規程の変更案をチェックしている。そのような中での思いを下記する。
(1)過去の訴訟例の多くは、人事(扱われ方)に不満の方が退職後、元の会社へ訴訟。であるならば、職務発明規程作成時やその後の対応で、十分な準備、話し合いをしても、一定の確率で訴訟は起こる。しかし、その確率は、ほとんどゼロ。
(2)退職後の訴訟という観点でいうと、債権の時効を考慮し、実績補償方式ではなく、出願時または登録時に評価し、一括払い方式にすべき。時効は、支払うべき時点から10年(今回の民放改正で5年?)。企業時代に実績を算定するのに、時間がかかり、苦労した私としては、効率化、訴訟リスク低減の両観点から 、出願時に一括支払いを推奨。しかし、出願時では早すぎて出願内容の評価がしづらい面もあり、公開時または登録時の一括払いを第2案として推奨。
(3)特許法で定める発明者に与える「相当の利益」(相当の金銭その他の経済上の利益)は、独占的な権利による効果があった時が対象。特許があるため、他社がその商品を作れない、販売できない、となる特許は、極めて少ない。電機分野では、100件の特許があったら、せいぜい1~3件程度。バイオ、化学分野では、確率が高くなるが。現状の発明者への支払いは、技術者へのインセンチブであり、法で言う「相当の利益」ではない。技術者へのインセンチブは、お金も少しは寄与するが、お金をもらえるから良い発明をしようとするのではなく、自分の発明品が世の中に出て貢献していることや、待遇、名誉の方がより重要。重要発明者は、フェローや顧問として会社時代や退職後も優遇する制度を。この制度は、訴訟リスクも減少させる。
(4)平成27年改正法では、会社が特許を受ける権利を原始的に得る、原始使用者帰属が認められるようになったため、ここ数年、職務発明規程を変更する会社が多い。その際、従来の規程に比べ、従業者にとって不利となるような規程は、原則、認められない。今まで、実績補償方式であった企業が一括払い方式へ変更しようとする場合、よく説明し、合意を得る必要がある。この点で、改正作業は大変。
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