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MEBUKI IP Small Talk 12月号(2019年)

 今年も弊社のメルマガをお読みいただき、ありがとうございました。いたらない部分や、おやと思われた所が多々あったかと思いますが、ご容赦いただくと共に、今後も、遠慮なくご指摘、お問合せをいただければと存じます。来年も、引き続き、配信させていただく予定でおります。
 貴殿のご多幸と、貴社のご発展を祈念いたしまして、年末のご挨拶に替えさせていただきます。

目次

1.2019年を振り返って(ニュージーランド拠点設立など)

2.知財雑記5

3.今後の知財活動の方向性を考える

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1.2019年を振り返って(ニュージーランド拠点設立など) パートナー・弁理士 長谷川洋

はじめに
 今年も、例年通り、あわただしく過ぎようとしている。今年は、ニュージーランド知財拠点の設立・法人登記(2019年4月設立及び11月法人登記)、オランダ知財事務所訪問(同年5月)、クライアント企業様での講演活動(同年9月及び11月)、米国特許弁護士・欧州特許弁理士・日本弁理士による2回の講演会(同年10-11月)、公的機関の登録弁理士として宮城県・京都府・福岡県の中小企業サポート業務(毎月対応)などを実施した。その中で、ニュージーランド(以下、NZという。)の知財拠点の設立他につき述べたい。

(1)めぶきのNZ拠点の設立・法人登記
 今年4月、松尾代表、渡邉顧問、当方の三名でNZに出張し、オークランド市(NZ最大の都市)に拠点を設立した。加えて、「MEBUKI」の商標出願を現地代理人に依頼してきた。この出願は、半年後の今年10月に登録となった(登録No.1118984)。
 NZには、知財経験豊富な友人がいる。もう20年のつきあいである。NZ拠点設立の半年前に、日本でNZ拠点の話となり、半年かけて準備をした。今年4月に拠点を設立し、今年11月にAYH Patent & Trademarkという法人としての登記が実現した。AYHは、めぶき法人を株主とする海外関連会社という位置づけである。この拠点は、主にNZからアジア(日本、中国、韓国、台湾、東南アジア諸国)向けの特許・商標等の出願を取り扱うが、日本やその他の国からNZやオーストラリアに入る出願等の業務も扱う。
 なぜ、NZに拠点を設立したのか?と訊かれることがある。いくつか理由がある。最も大きな理由は、そこに信頼できる仲間がいるということである。次に、NZがこれからの伸びしろの期待できる国であること、特殊な言語ではなく英語で業務を行うことが可能であること、が挙げられる。もっとも、海外拠点設立の前提には、日本の企業が海外進出しているのに、特許事務所だけが日本の中で留まっていてはいけないという気持ちがある。まずは、NZから第一歩を踏み出そうと考えたわけである。

(2)NZに関する基本情報
 NZは、NZ最大の商業都市オークランド(人口:約158万人)のある北島と、首都ウェリントン(人口:約41万人)のある南島の2つの大きな島がメインとなる、人口約494万人の南半球の国である(人口は2019年のデータ)。NZ全体でもオークランド市の単位でも、年1~2%ずつ人口が増加している( https://www.stats.govt.nz/topics/population )を参照。
 NZといえば、ラグビーと酪農・農業のイメージの強い国である。オールブラックスの愛称で知られるラグビーNZ代表チームが今年日本開催のワールドカップで3位に終わったことは我々の記憶にも新しい。また、キウイで有名なゼスプリ社(Zespri International Limited)、乳製品で有名なフォンテラ社(Fonterra Co-operative Group Limited)は、日本のスーパーマーケットに陳列される商品でも目にするNZの代表的なメーカである。

(3)NZの特許及び商標の情報
 NZの特許出願は、ここ数年は年6000件前後でほぼ横ばいで推移している。2019年11月末で6003件なので、今年は、昨年より増加する見込みである ( https://www.iponz.govt.nz/about-iponz/facts-and-figures/ )を参照
この数字は、日本の年25~26万件の特許出願数と比べると、総数でも人口比でも少ない。NZは、オーストラリア(以下、AUという。)と同様、アルミニウム等の資源や農作・酪農製品を外国に輸出して、自動車などを外国から輸入する国であり、未だ、自国でハイテク製品を製造・販売する国とまでは言えない。NZの第二次産業は、未だ発展の途上にある。NZは、農業・酪農・観光以外に外貨を稼ぐため、積極的にIT(AI、IoTも含め)企業を育てようとしている。
 NZの商標出願は、年2万5000件(2018年の時点)であり、右肩上がりで年々増加している。人口比の出願数は、日本のそれよりも多い。NZでは、日本と同様に、「立体」、「色のみ」、「音」も登録対象である他、日本では登録対象外の「匂い」や「味」も登録対象となっている。詳細は、弊社のサイト( https://mebuki-iplf.jp/ip-nz.php )を参照いただきたい。

(4)隣国のオーストラリア(以下、AUという。)との知財の関係性
 AUは、NZよりも国土が大きく、人口も多い。当然、特許出願も商標出願もNZより多い。かつて、AUとNZは、国境を超えた知財の法律面での統一化を検討したことがある。しかし、NZの議会の反対で、この統一は実現しなかった。このため、例えば、コンピュータプログラム自体はAUでは特許保護対象であるが、NZでは特許保護対象ではない。これは私の推測にすぎないが、AUは、NZを飲み込もうとしているのではないか。例えば、2年前に、AUの大手知財事務所IPHがNZの知財事務所AJ Parkを買収したのも理解できる。
 上記のように、知財の法律上の統一は現時点では実現していないが、2017年、代理人制度の統一化は実現した。この制度は、Trans-Tasman IP Attorneys Boardという。統一資格試験に合格して特許弁理士となれば、AUでもNZでも特許出願を業務代理できる。商標に関しても、統一資格試験に合格して商標代理人となれば、両国の出願代理が可能である。詳細は、https://www.ttipattorney.gov.au/を参照いただきたい。ちなみに、NZでは、商標出願の業務としての代理は、商標代理人資格を有していなくとも可能である。

(5)今後の予定
 2020年は、NZでの営業(講演活動も含む)をスタートする予定である。営業は、NZ在住の仲間に依るところが大きい。めぶき法人は、日本の知財に関して講演をすることで営業のサポートをしていこうと考えている。

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2.知財雑記5              弁理士 須澤修

 今回は、知財係争に対して必要だと思う点を挙げてみる。守りと攻めの両者に共通するポイントである。

1.企業トップの了解
 当然のことではあるが、守りであっても攻めであっても企業トップの了解が不可欠である。知財係争は、基本、会社と会社の喧嘩であるから。また、知財係争をどのように進めるかについても企業トップの了解がベースとなる。企業トップとは、社長、CEO(Chief Executive Officer、最高経営責任者)等である。
 例えば、知財担当が争いたい場合であってもトップが経営の観点から見て妥結する方針であれば妥結させる。知財担当が妥結したい場合であってもトップが争う方針であれば争う。

2.係争シミュレーション
 守りであっても攻めであっても係争シミュレーションが欠かせない。係争シミュレーションとは、係争モデルを作り、それを使って模擬することをいう。
 例えば、知財権(相手方又はこちら側の特許権等)を抽出して、それで係争が生じた場合を模擬する。ミュレーション結果に基づき、それぞれの対応、事業への影響、係争に要する費用、決着等を予想して、予算、係争の処理手順、対向手段、社内体制、広報等の準備をしておく。
 係争シミュレーションをして充分な準備をしておくと、大きな成果を挙げる可能性が高まる。この係争シミュレーションは、知財担当が経営トップに判断を求める前に必ず実行すべきものであり、また、経営トップへ、その内容を説明すべきものである。

3.社内外の関係部門・専門家との連携
 守り、攻めのいずれの知財係争であっても、社内外の関係部門、専門家等との連携は欠かせない。
 社内の場合、例えば、守りの場合、特許であれば開発設計部門、商標であれば販売部門等の社内部門との連携が必要になる。製品の仕様変更、ブランド変更等に直結する場合もあるからである。
 社外の専門家等との連携もした方がよい。例えば外部の弁護士、弁理士等である。これにより外部から見た目での客観的な評価や係争対応等が可能となる。費用を抑えるため、全て自前で係争処理をする場合、独善的な自己評価に陥って係争の見通しを誤り、結局、高くつく場合がある。

4.迅速な対応
 知財係争の場合、往々にして迅速な対応が必要となる場合がある。大きな事柄については事業責任者や会社トップと直結した迅速な報告・指示ルートが必要である。一方、知財担当に任せてよい事柄については権限委譲して知財担当が迅速に対応できるようにすると時機を逃さず適切な対応が可能となる場合が多くなる。

5.まとめ
 その他にも挙げたい点はあるが、それらを列挙していくと総花的になってしまうため、以上の4点に留める。
 次回も引き続き知財係争について述べたい。

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3.今後の知財活動の方向性を考える   顧問・弁理士 渡邉秀治

 47年間に渡って知財活動をしてきた。明細書作成、アイデア検討、商標調査、無効審判、特許訴訟、海外紛争・訴訟、知財関係契約、知財管理、特許事務所経営、知財コンサル、など知財がらみの仕事は、ほぼ網羅してきた。管理を行っていたときも実務が好きで、一定割合は実務に割いていた。
 知財分野では、ここ10年間で大きく変化が起こりつつある。第一は、知財部署が扱う範囲の拡大。知財権から知財へ、さらに知的資産へと拡大しつつある。経済産業省の知的資産報告書や内閣府の経営デザインシートや特許庁の知財ビジネス評価書・提案書が実務で使用されている。
 第二は、知財がらみの拡大との関係で、人事部、総務部との関係が必要になってきたこと。それは、情報流出防止対策や知財担当者が技術者とのコネクションに強みがあることに起因するもの。技術者やキーマンの退職時の対策、社内教育の改善につながる。
 第三は、アイデア創成⇒権利化⇒活用、の流れの中の最初と最後の「アイデア創成」と「活用」の両端にも力を入れる必要があること。アイデア創成は、継承性が必要であり、教育が必要。活用の強化は、中国の知財方針にも明記されているが、実際に行うとすると、とても難しい。知財の目的は、模倣防止ばかりではなく、10個以上の目的があり、会社の状況によって異なる。その目的に沿って活動しているか、をフォローすることが最も重要。他には、知財流通を考えること。

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