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目次
1.ビジネス関連発明の今
2.知財雑記2
3.日、米、中の特許表示とその効果-後編
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20年前、米国における、アマゾン・ドットコムによるワンクリック特許、プライスライン・ドットコムによる逆オークション特許などの成立は、日本に、ビジネスモデル特許旋風をもたらした。その結果、2000~2002年には、年間1万8000~2万件ものビジネスモデルの特許出願がなされた(注1)。筆者は、当時、ビジネスモデルの発明に関する問い合わせの電話、発明相談、出願などに追われ、非常に多忙であった。
しかし、その後すぐ、特許庁は、ビジネスモデル関連発明に関する基準を発表し、IT(情報技術)をはじめとする何らかのハードウェアを介在させないビジネス方法については特許性が無いことを明らかにした。この結果、ビジネスモデル特許という台風は瞬く間に去った。
一方、米国はといえば、しばらくは、日本よりははるかにビジネスモデルの特許取得容易な国として君臨していた.しかし、今から5年前、Alice最高裁判決により、抽象的な概念に留まる発明(ビジネスモデルも単なるアイデアレベルのものは含まれる)は35U.S.C.101の特許保護適格性に反するとして特許されないとの判決が出された。以後、米国では、ビジネスモデルの特許出願件数は減少していくことになる(注1)。
さて、日本に話を戻す。日本では、ビジネスモデル特許という台風が去った後、この分野の特許出願は減少し続けていると思うかもしれないが、現実は異なる。2011年を底に、少しずつではあるが増加してきている。2017年の出願数はなんと約9000件である。これはピーク時の2万件の半分近い数字である(注1)。
特許庁は、ビジネス関連発明を、「ビジネス方法がICT(Information and Communication Technology)を利用して実現された発明」と定義する(注1)。これから話題に挙げる「ステーキの提供システム」(特許第5946491号)という特許発明は、ビジネス関連発明の定義からは外れるかもしれないが、ステーキを提供するというサービスに関連する発明であることには違いない。本件特許は、「いきなりステーキ」という店舗名で主に首都圏で流行っている株式会社ペッパーフードサービスの特許である。本件特許は、特許登録後、第三者により「産業上利用可能な発明に該当しない」ことを理由に異議申立を受けて特許取消決定となったが、知財高裁への審決等取消訴訟にて逆転判決を経て、特許維持に至った(異議2016−701090)。
争点は、本件特許発明の一部の構成要素である「計量器」、「札」及び「シール(=印し)」が「単に経済活動の手段」であるか(取消決定時の特許庁の判断)、それとも課題の解決手段として技術的意義を有するものとみなすか(知財高裁の判断)であった。結局、知財高裁の判断によって、本件特許は、異議申立審理中の訂正はあったものの、有効な権利として存続している。
筆者は、今月(9月)中旬、欧州を訪れた際に、オランダに本拠地を置くアーノルド・シズマ知財事務所(注2)に立ち寄り、パートナーの欧州弁理士(A氏とする)に上記ステーキの提供システムの事件を紹介した。A氏は、日本ではこれが特許になることに驚いていた。少なくとも欧州特許庁は特許しないだろうとのこと。筆者は、法学者ではないから、「ステーキの提供システム」が真に特許され得る発明であるかどうかを議論しないが、今後、この特許をきっかけに、類似の特許出願が増加するのではないか、と推測している。
(注1)https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html
(注2)https://www.arnold-siedsma.com/
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最近、アメリカと中国との間で貿易摩擦が生じている。その一因として知的財産権問題(知財問題)があるようだ。そこで、2つの大国間で摩擦が生じている知財問題をみて、何が問題視されているか、知財担当に今後何が求められるだろうか、をレビューしたい。我国は当事国ではないが、非常によい教材だからである。
(1)さて、貿易摩擦関連の報道を見ると、サイバー攻撃等による各種情報の流出が問題視されていることから、特許、意匠、商標に限らずもっと広範なものを知財(問題)として捉えているようだ。
従って、知財担当は、これらに限らず、もっと広い視点で企業、大学等のクライアントが守るべき知的資産(知財を含む)として何があるか、どのように守るか(攻めるか)を検討・行動することが期待されると思う。例えば、独特な研究・開発手法、組織も守るべき知的資産(知財を含む)かもしれない。徹底したオープン・クローズ戦略はとるべき知財戦略の1つだろう(オープン・クローズ戦略の1例:解析が困難なコア技術は特許出願せず、解析容易な周辺技術を特許出願する戦略)。クライアントの活動全般を俯瞰した知財活動や、商品の企画から開発、設計、製造、販売まで川上から川下に至る各プロセスに知財担当がより一層入り込む必要性を感じる。
また、現在、多くのクライアントにおいては、サイバー攻撃に対する防御は知財管轄でないだろう。しかし、将来、知財管轄の括りの中に、特許担当、商標担当、情報セキュリティ担当(サイバー攻撃への防御担当)・・のような組織ができるかもしれない。知財担当は、クライアントが保有する広い意味での知的資産を少なくとも把握し、守り、更に活用することが求められるかもしれない。
(2)今回の知財報道には、コピー商品の話はあまり出てこない。国によっては専らコピー商品が知財問題であった時代は過ぎ、それを脱したハイテクが知財問題として急浮上する時代になったようだ。
従って、知財担当はコピー商品に止まらず、ハイテクまでカバーする知財活動が求められるだろう。
(3)逆に、次世代通信5Gといった最先端のハイテクが問題視されている。追う者、追われる者の立場は、時代と共に逆転する場合がある。 知財担当は、攻めを検討するだけではなく、守りについてや次世代通信5Gを活用した社会(来たるべき社会)が必要とするものも、より一層検討することが求められるだろう。
(4)以上、私見を述べたが、知財問題が激化・拡大すると、知財担当の活動領域が広がり、知財担当への期待も膨らむ。知財担当はそうした機会を逃さず期待に応えられるようにしたい。
次回は、知財をその歴史から振り返ってみようと思う。発明の特許権による保護がいつ頃どのように始まったかといった歴史を振り返ることにより、知財の将来の姿やそれへの対応の仕方がぼんやり見えるかもしれないからである。
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先月は表示方法を記載した。今月の中編は法律条文を、後編で効果を主に述べる予定だったが、今回、法律条文と効果を併せて述べることで後編とした。
特許表示と損害賠償の考え方は、中国に関しては、日本と同様に、損害賠償請求の要件とはならず、特許表示は努力義務(表示をする権利を有する)にすぎない。しかし、米国は、異なる。なお、米国では、ラッチェス=懈怠(Laches=unreasonable delay)と言う考えがある。このため、要注意だったが、最近の最高裁判決(SCA Hygiene Products Aktieblog v.First Quality Baby Products,3/21/2017)で特許侵害事件の損害賠償については、ラッチェスは、認められなかった。
http://www.ngb.co.jp/ip_articles/detail/1433.html
なお、差し止め請求は、権利期間であれば、いつでも可能だが、米国では、エストッペル=禁反言(Estoppel)というエクイティ(衡平法)上の理論があり、下記の「パテント」誌によると、「エストッペルが認められると,これまでの損害賠償請求のほか,その後の権利行使(差止請求,損害賠償請求)が制限されることとなる。」との記載があり、注意を要する。
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201501/jpaapatent201501_085-092.pdf
損害賠償の比較:
1)日本の損害賠償は3年分(民724条)、不当利得は10年(民167条)。
2)米国は、6年分。
Sec. 286. - Time limitation on damages Except as otherwise provided by law, no recovery shall be had for any infringement committed more than six years prior to the filing of the complaint or counterclaim for infringement in the action.・・・
第 286 条 損害賠償に関する時間的制限
法により別段の定めがされている場合を除き,侵害に対する訴又は反訴の提起前6年を超える時期に行われた侵害に対しては,訴訟による回復を受けることができない。・・・
3)中国は、2年分(特68条)。
第六十八条 特許権侵害の訴訟時効は 2 年とし、特許権者又は利害関係者が権利侵害行為を知った日又は知り得る日より起算するものとする。発明特許の出願公開から特許権付与までの間に当該発明を使用し、かつ適当額の使用料を支払っていない場合、特許権者が使用料の支払いを要求する訴訟時効は 2 年とする。
特許権者は他者がその発明を使用していることを知った日又は知り得る日より起算する。但し、特許権者が特許付与日以前に知った場合又は知り得る場合は、特許権付与日より起算する。
米国では、特許表示なしは、過去分の損害はカバーされません。 Sec. 287. - Limitation on damages and other remedies; marking and notice (a) Patentees, and persons making, offering for sale, or selling within the United States any patented article for or under them, or importingany patented article into the United States, may give notice to the public that the same is patented, either by fixing thereon the word “patent” or the abbreviation “pat.”, together with the number of the patent, or by fixing thereon the word “patent” or the abbreviation “pat.” together with an address of a posting on the Internet, accessible to the public without charge for accessing the address, that associates the patented article with the number of the patent, or when,from the character of the article, this cannot be done, by fixing to it, or to the package wherein one or more of them is contained, a label containing a like notice. In the event of failure so to mark, no damages shall be recovered by the patentee in any action for infringement, except on proof that the infringer was notified of the infringement and continued to infringe thereafter, in which event damages may be recovered only for in fringement occurring after such notice. Filing of an action for infringement shall constitute such notice.
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