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MEBUKI IP Small Talk 6月号(2019年)

目次

1.戦略的知財活用海外展開補助金制度 -中小企業に3年間で上限420万円の補助-

2.アディダスの3本線の商標(ヨーロッパでの商標権が無効に)- 前編

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1.戦略的知財活用海外展開補助金制度
          -中小企業に3年間で上限420万円の補助-
                            パートナー・弁理士 長谷川洋

 このたび、独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)は、特許協力条約に基づく国際出願(以後、「PCT出願」という。)を活用した海外での事業展開を計画している中小企業(個人事業主も含む)に対して3年間にわたって専門家によるコンサル支援および金銭的支援の両面で支援するべく、被支援企業の募集を開始することになった。以下は、募集の概要である。なお、公示の際には、募集要領について若干の変動がありえることを断っておく。
・募集期間は、2019年6月28日~同年7月31日の約1カ月間である。
・最終採択社数は10社程度になる予定である。
・補助金は、3年間の総額で上限420万円までの予定である(変動の可能性あり)。
・費用の補助は、出願・中間応答等のかかった経費に対する50%である。例えば、経費が840万円であれば、ちょうど上限の420万円が補助されるが、経費が1000万円でも420万円までしか補助されない点には留意されたい。

 募集の前提として、①日本国内特許出願又はPCT出願を既に行っていることと、②PCT出願を今後行う予定があるか或いはPCT出願を既に行っている場合には各国移行手続きが最低1カ国でも残っていること、が要件となっている。

 他機関の海外知財に関する補助(又は助成)は、一般的には出願時の費用のみである。しかし、今回の中小機構の補助は、出願時のみならず、各国の拒絶理由通知対応、特許登録の費用の他、海外事業展開のための海外調査時の渡航費(2019年度に1回限りで、原則1名分で、かつ移動日を除く最長5日間まで)も含まれる。

 上述の支援の特徴を簡潔に言えば、
 1) 3年間という比較的長期間の支援であること、
 2) 金銭的な補助のみならず、知財戦略、事業戦略あるいは海外事業展開に関する専門的なアドバイスも行うこと、および
 3) 出願以後に要する経費も補助対象としていること、
が特徴となっている。

 最終採択社の数は10社に限られているが、興味のある中小企業さんは、2019年6月28日から公示される次のURL: 
http://www.smrj.go.jp/sme/overseas/patent/index.html
にアクセスしてみては、どうでしょうか?

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アディダスの3本線の商標(ヨーロッパでの商標権が無効に)- 前編
                            顧問・弁理士 渡邉秀治

(1)2019年6月20日の午後9時半にテレビ朝日「グッド!モーニング」ディレクターの清水氏から電話がきた。「さては、いつものか」と身構えた。テレビ朝日からのコメント依頼は、今回で9回目である。過去は、8回のうち、7回放送された。最初の頃は、スタジオで録画したこともあったが、最近は、電話コメントが多くなった。

(2)今回は、アディダスの3本線の商標権がヨーロッパで無効になったという話題に関するものであった。大筋の説明を受け、その日の午後10時にはコメント録音となった。電話を切った後、コメント録音までは30分しかなかったが、テレビドラマを見ながら、先ほどの仮のコメントが法律的に正しいのかの確認や事件の確認をインターネットにて行った。

(3)インターネットには、以下の記事やその他複数の記事があった。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190620/k10011961181000.html
ドイツの大手スポーツ用品メーカー「アディダス」が製品に使っている3本の平行線について、EU=ヨーロッパ連合の裁判所は19日、独自性に欠けるとして商標権を無効とする判断を示しました。EUの知的財産庁は2014年、「アディダス」が申請した3本の平行線の商標権を認めました。しかしベルギーの会社が無効だと訴え、2016年、知的財産庁が「独自性がない」として商標権を取り消したため「アディダス」がこの決定を不服として訴えていました。
EUの裁判所は19日、3本の平行線は「普通の図形」だとして「アディダス」の訴えを退け、商標権を無効としたEUの知的財産庁の決定を支持する判断を示しました。裁判所は、「アディダス」は3本の平行線がEU全域で他社の製品から見分けられるだけの独自性を持つと証明できていない、とも指摘しています。NHKの取材に対し「アディダス」は、この裁判所の判断を不服だとしていますが、今後、EUの最高裁判所にあたる司法裁判所に上告するかどうかは明確にしていません。

(4)上記記事などから以下の点についてポイントとなると判断した。
 ①商標の3本線が「どのような向きのものでも該当する」との記載がいずれかの記事にあったがそうであるとすると、この権利が通常考えられる位置商標(靴の所定位置に配置される3本線など)ではないことになり、かなり広い権利であること。
 ②「独自性」との表現が記事にはあるが、法律的には、「識別性」であること。
 ③今後の対応としては、アディダスの控訴があり得、または無効審判請求人の証拠にもよるがベルギーの会社であることを考慮すると、証拠はベルギ―内のものと推測され、アディダスとしては、ベルギー以外の国での権利化を目指すことも考えられること。

(5)放送は、6月21日の午前6時50分頃だった。多くのコメントを話したが、放送されたのはいつもより少ない、15秒程度のコメント(当方の写真付き)だった。放送後にアディダス情報を調べたが、やはり、対象商標は、非常に広いもので、いわゆる位置商標と言われるものでは無い模様。次月に、この商標権などの詳細を報告したい。

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