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MEBUKI IP Small Talk 5月号(2019年)

目次

1.特許法等の一部を改正する法律が成立(令和元年5月17日法律第3号)

2.「令和」という商標出願(日本、中国、台湾)

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1.特許法等の一部を改正する法律が成立(令和元年5月17日法律第3号)
                            パートナー・弁理士 長谷川洋

(1)2019年5月10日に可決・成立した特許法等の一部を改正する法律は、5月17日に公布された。今回の改正は、産業財産権に関する訴訟制度を改善する観点、およびデジタル技術を活用したデザインの保護・ブランド構築等の観点で行われた。改正の詳細については、特許庁のHP(注1)に譲り、ここでは、意匠法の改正の主要事項に絞って紹介したい。
 今回の改正法の施行日は、「一部の規定を除き、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされている。意匠法関連は「1年を超えない範囲」に施行される対象とされており、推測では来年4月1日か。

(2)保護対象の拡充について
 改正法下では、建物の外観、建物の内装、画像そのものも保護対象となる。この結果、日本の意匠制度は、欧州の意匠制度にかなり近いものになる。旧法下では、容易に組み立てと解体を可能とする組立家屋、定型的な画面を表示可能な電子機器等は保護対象であったが、不動産(建物など)や画像(アイコンなど)そのものは保護対象外であった。

(3)関連意匠制度の見直しについて
 保護対象の拡充と並んで大きな改正は、関連意匠制度に関するものであろう。関連意匠制度は、ある意匠(本意匠という)に類似する意匠を、同一出願人に限り、関連意匠として登録可能とする制度である。
 改正法下では、関連意匠は、本意匠が出願されてから10年という長期間にわたって出願可能となる。旧法下では、関連意匠は、本意匠の登録後では出願不可であった。ただし、改正法下においては、自身の本意匠の公開や公開実施が関連意匠の登録要件の例外となるだけであり、第三者の公知意匠によって登録不可になることはあり得る。

(4)意匠権の存続期間の変更について
 改正法下では、意匠権の存続期間は、出願の日から25年で満了することになる。現状、意匠の審査期間は約8カ月であることから、実質的に権利期間が長くなる。なお、関連意匠は、本意匠の意匠権が存続期間満了にて消滅すると、一緒に消滅する。旧法下では、意匠権の存続期間は、登録日から20年で満了するとしていた。

(5)複数意匠の一括出願可能について
 旧法下でも、組物に限って複数意匠を一意匠とみなして登録を認めていた。改正法下では、組物の範囲を拡大し、建物の内装等でデザイン上の統一感のあるものは、一意匠として登録可能となる。

(6)筆者は、今年6月に横浜の某企業において、意匠制度(改正法、ハーグ協定・ジュネーブ改正協定を利用した国際意匠登録)について講演を行う予定である。意匠は、特許と合わせ技で利用することも多い。国際的に意匠権を取得する際に特許出願に悪影響がでない工夫、Appleと三星電子のスマホ戦争から学ぶ意匠権や商標権の活用、および今回の改正による新意匠の出願対策についても言及する予定である。

(注1):
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/tokkyo/tokkyohoutou_kaiei_r010517.html

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2.「令和」という商標出願(日本、中国、台湾)   顧問・弁理士 渡邉秀治

(1)元号「令和」が今年の4月1日に発表された。平成の時は、多くの「平成」という商標出願がなされた。2019年5月7日に特許庁のJ-PlatPatという無料のデータベースを使用して検索を行った。それによれば、「令和」を含む商標権は登録されていなかった。しかし、4月以降、「令和」を含む商標出願は以下の通り、多くあった。
(A)称呼検索「レイワ」で検索:49件抽出。
①発表前は、1件のみ。それは、「愛美礼和」であり、問題となることはないだろう。
②発表後に48件。最も多いのが19件の「ベストライセンス株式会社」*この会社は、
 出願印紙代を払わず、出願している会社で、そのほとんどが費用の支払いが無いことで出願却下となっている会社。商標業界では有名。
(B)商標検索「?令和?」で検索(=「令和」を含む商標の検索):23件抽出。
①発表前は、なし。
②発表後のものは、すべて称呼検索「レイワ」の中にあり。
(C)「令和」そのものは、中華人民共和国?(519116942)?王新艶氏の2件があるが、100%登録されないであろう。平成時には、20件前後の「平成」が出願されたのであるが、すべて拒絶された。日本の皆さんは勉強されたのであろう。

(2)商標審査基準の3条1項6号によれば、単に「令和」は登録されない。「平成」のときもそうであるが「平成??」など、「平成」を含む商標は、登録された例が多い。5月7日の調査では、実際、「平成」を含む商標は、108件の登録があり。このため、「令和」のみではなく、「令和」を含む商標は登録され得る。

(3)具体的にどのようなものが登録されるかは、以下の「平成」を含む登録例が参考となる。
“平成を含む登録例の一部”
「平成の祝」「平成の宴」「平成蔵」「平成庵」「平成屋」「平成の蔵」「平成モダン倶楽部」「平成珠緑」「平成中村座」「平成教育委員会」「平成ビルディング株式会社(図形付き)」「平成美人」「平成の名車」「平成楽市楽座」「平成薬局」「平成軒」「麺処平成」「平成の杜」「平成のめざめ」「平成パッケージ」「憶えていますか平成の味を」。

(4)5月8日に中国の商標出願を調べた。「令和」を含む商標出願は、1289件もあった。その中の多くは「令和」のみ。中国人の商売意識の高さと商標への関心の高さが伺える。台湾について、5月26日に調査したら、「令和」を含む商標は13件出願され、そのうち「令和」のみは4件。なお、中国でも2014年から多区分出願が可能となったが、二区分目以降の印紙代(公費)は、一区分目と同じであり、ほとんどすべての出願が1区分のみの出願となっている。
一方、日本では多くが多区分での出願。

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