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目次
1.食品に係る用途発明の解禁について考える
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(1)食品用途発明に関する審査基準
2016年3月23日に、特許庁から、食品の用途発明を認める審査基準とハンドブックの公表がなされ、同年4月1日から運用が開始されてから3年になろうとしている。
運用前、ある食品が公知であれば、その食品に新たな用途を見出したとしても、その食品の用途発明は認められなかった。しかし、2016年4月1日から、上記の例でいう食品用途発明が認められることになった。以下に、審査基準(注1)の事例を挙げて紹介する。
① 公知発明:成分Aを含有する食品組成物
② 本願発明:
[請求項1] 成分Aを有効成分とする二日酔い防止用食品組成物。
[請求項2] 前記食品組成物が発酵乳製品である、請求項1に記載の二日酔い防止用食品組成物。
[請求項3] 前記発酵乳製品がヨーグルトである、請求項2に記載の二日酔い防止用食品組成物。
上記事例の場合、公知発明①と本願発明②とが「二日酔い防止用」という用途限定以外の点で相違しないとしても、所定の条件を満たすときには、審査官は、両発明を異なる発明と認定する。
(2)食品用途発明の長短
上記運用によって、機能性食品の分野の活発化が促されるという長所はある。その一方、短所もある。これを、上記事例(ヨーグルトの事例)で説明する。
公知発明が単なる文献公知の発明なら問題はない。しかし、成分Aを有するヨーグルトが既に市場に流通している途中で、成分Aを有効成分とする二日酔い防止用食品組成物という特許が成立した場合、市場に流通しているヨーグルトは侵害品となるか否かという問題が生じる。「二日酔い防止用」という用途限定があるとしても、特許発明は、市場流通のヨーグルトと実質的に変わりはない。
このような問題は、今までの用途発明を認めてきた多くの分野では生じにくかった。例えば、審査基準の他の事例による「釣り用フック(公知発明)」と「クレーン用フック(本願発明)」は、同じ構造のフックでも、その製品分野が全く異なる。クレーン用フックが特許となっても、釣り用フックが侵害になるというリスクはない。
また、医薬の分野でも、食品ほどのリスクは無い。例えば、前立腺癌の抑制効果のある医薬Xがすでに製造販売されていて、当該医薬Xの有効成分Aを同じくする薄毛抑制効果のある医薬Yが特許となった場合でも、医薬Xは侵害品にならない。医薬は、用途と物質のペアの発明であり、特定の疾病を持つ患者しか服用しないことを前提とするからである。
これに対して、食品は、特定の消費者が購入するというものではなく、全ての消費者を購入対象者としている。先の例による市場流通のヨーグルトに対して、「二日酔い防止用食品組成物」の特許権者が特許権侵害の訴訟を提起した場合、どうなるのか?その特許の出願前に公知・公用の製品だから非侵害なのか?それとも「ラベル論」(注2)を適用して、裁判所は、二日酔い防止用という機能を明示したときだけに侵害を認定するのか?この問題については、今後の判決を待ちたい。
(注1)審査基準の抜粋
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/03_0204.pdf
(注2)パテント2018 Vol.71 No.3
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/2987
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