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MEBUKI IP Small Talk 1月号(2019年)

目次

1.TPP11協定発効(2018年12月30日発効)に伴う知財改正

2.特許ライセンス収入があったときの発明者への還元

 昨年はご愛顧を賜りまして、ありがとうございました。本年も、人と人との繋がりを大切にし、温かさが感じられる特許事務所を目指していきます。頑張っておられるお客様を思って、グローバル化した目線で最善の策を模索し、提案いたします。
 本年も宜しくお願い申し上げます。

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1.TPP11協定発効(2018年12月30日発効)に伴う知財改正  パートナー・弁理士 長谷川洋

 昨年12月30日に日本においてTPPの発効に至ったことは、既にご存知の方も多いと思う。TPPは、元々、米国を含む12カ国間で署名されたが、2017年1月に米国のトランプ大統領がTPP離脱を表明し、最終的には、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール及びベトナムの11カ国で発効するに至った。この11カ国から、TPP11協定と呼ばれている。
 TPPは、知財の改正をも包含する協定であり、日本では、特許法、商標法、著作権法の各改正が2018年12月30日に施行となった。概略は、下記のとおりである。

(1) 特許法
「審査遅延に起因する特許権存続期間の延長」(注1)
 特許出願の日から5年を経過した日又は出願審査の請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後に特許権の設定の登録があった場合には、特許権の存続期間の延長がなされる。この規定は、2020年3月10日以後の特許出願に適用される。

(2) 商標法
「商標の不正使用に対する最低限の損害賠償額の設定」(注2)
 登録商標の不正使用による商標権侵害について損害賠償請求する場合において、当該登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害額として請求できる。すなわち、現行規定に加え、商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害額(最低額)として請求することも選択可能となる。

(3) 著作権法(注3)
 a. 著作物等の保護期間の延長(旧法下の50年を70年に延長)
 b. 著作権侵害の一部非親告罪化(3つの要件を全て満たす著作権侵害を非親告罪化)
 従来は、著作権侵害の刑事罰は親告罪であったが、一部が非親告罪(つまり誰でもが告発できる)となった。3つの要件のうち、1つは「有償著作物等を「原作のまま」公衆譲渡若しくは公衆送信する侵害行為又はこれらの行為のために有償著作物等を複製する侵害行為であること」であり、いわゆるコミックマーケットにおける同人誌等の二次創作活動については,一般的には,原作のまま著作物等を用いるものではなく,市場において原作と競合せず,権利者の利益を不当に害するものではないことから、今までどおり、親告罪となる模様。
 c. 著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備(アクセスコントロールの回避等に関する措置)
 d. 配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与(配信音源の二次使用に対して商業用レコードと同様の二次使用料請求権の認可)
 e. 著作権等管理事業者が管理している著作権が侵害された場合の損害賠償に関する規定の見直し(著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額を損害額として賠償請求可とする)

(注1)https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/sangyozaisan/document/tpp_houritu_seibi_h281228/tokkyo_gaiyou.pdf

(注2)https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/sangyozaisan/document/tpp_houritu_seibi_h281228/syohyo_gaiyo.pdf

(注3)http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/kantaiheiyo_hokaisei/

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2.特許ライセンス収入があったときの発明者への還元   顧問・弁理士 渡邉秀治

 会社時代には、職務発明規程の改訂を行い、技術者の意識高揚を図ってきた。最近、ある方から、「特許ライセンス収入があったときの発明者への還元率をどうしたら良いか?収入の2%とした案を作成したが、社長から、根拠は、と尋ねられた。どう説明したらよいか教えて欲しい。」の質問があった。
 当方からは、「過去の判例では5%のものが多かったような記憶がある。また、民間企業の知財部長さんから2%ということを聞いたことがあり、当方が勤めていた会社では5%としていた記憶がある」と回答した。その後、インターネットで調べたところ、過去の判例は、2~10%が多くなっていた(注1:職務発明における発明者の貢献度と実績報償(裁判例の検討と提案)参照)。この資料によれば、以下の計算式が平成18年(ワ)24193号の判決(平成20年2月20日判決言渡)で示されているとのこと。
*相当対価=(受け取り実施料)×(1-会社の貢献度)×(共同発明者間における該発明者の貢献度)
 また、この資料では、発明者の請求が認容された裁判とその認容額がリスト化され、発明者の請求が棄却された裁判とその棄却理由がリスト化されている。また、職務発明の対価請求訴訟における超過売上げの割合が8~50%とされている。超過売上とは、売上ベースで算出する対価の計算において、発明者が受け取る相当の対価の算定根拠となる売上(全体の売上の中の何%)を指す。売上に基づく計算における「仮想実施料率」は、判例での数値は、1~5%が非常に多く、最も低い値は0.2で、最高値は20%(日亜化学事件)となっている。職務発明の対価請求訴訟における発明者の貢献度は、上述のように、判例では、2~10%が多く、20%、30%、40%(ゴーセン事件)、50%(日亜化学事件)、60%(ニッカ電測事件)も存在する。

注1:職務発明における発明者の貢献度と実績報償(裁判例の検討と提案)
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20170724160057.pdf?id=ART0010250837

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