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MEBUKI IP Small Talk 12月号(2018年)

目次

1.世界最長の国内移行期間を持つPCT加盟国

2.年の瀬に思うーミュンヘンにて

3.世界の知財、日本の知財、日本の生きる道

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1.世界最長の国内移行期間を持つPCT加盟国

パートナー・弁理士 長谷川 洋

(1)2018年1-9月の国内の特・実・意・商の各出願累計件数をみると、昨年同期比で全てマイナスである。特許と意匠はマイナス3%以内であるが、商標はマイナス5~6%にものぼり、実用新案に至ってはマイナス15%超である(注1)。

一方、日本国特許庁を受理官庁とする国際出願に関しては、2018年1-9月の累計件数は、特許、意匠、商標ともに昨年同期比で全てプラスとなっている。

日本は、知財権取得について国内から海外にシフトしていると言っても過言ではない。

(2)さて、PCT(国際特許条約)の加盟国・地域の数は、2018年11月1日時点で152カ国である。大半の加盟国の国内・域内への移行期間は、優先日から30カ月若しくは31カ月である。

米国への移行期限は優先日から30カ月である。欧州特許庁への移行期限は優先日から31カ月である。これらは一切延長できない。ただし、日本と同様、移行申請だけを期限内に行っておけば、所定期間内に翻訳文の後出しが可能である。

追加料金を支払えば、移行期間を延長できる国もある。例えば、中国では、移行期限は、優先日から30カ月であるが、追加料金を払えば、2カ月延びる。トルコでは、移行期限は、優先日から30カ月であるが、追加料金を払えば3カ月延長できる。

しかし、もっともっと長く移行期間を延長できる国もある。

その国とは、カナダとシンガポールである(注2)。カナダは、追加料金を支払えば、優先日から30カ月までの移行期間を、優先日から42カ月まで延長できる。実に1年間も延長できる。そして、おそらく当方の知り得る限りでは世界最長の国であろうシンガポールでは、優先日から30カ月までの移行期間を、優先日から48カ月まで延長できる。この延長期間はカナダのそれより半年長い。

もし、優先日から30カ月の間に移行国が決められなかったとしても、カナダとシンガポールに限っては、その先1年若しくは1年半の間に移行できる。今まで、何度か、お客様からお問合せをいただき、両国への移行を検討したことがある。

(3)2018年も残りわずかとなった。同時に平成もあと残り4カ月であり、少し寂しい感じである。思えば、昭和から平成になったときには、まだメーカの研究職についており、雪の中、研究所で仕事をしていて、平成になった感激に浸っていた。その後数年先にバブル崩壊がくるとは予想もしていなかった。あれから30年、平成から新元号になろうとしている。はたして、自分は何らかの感動を持つだろうか?ともあれ、今年も大変お世話になりました。来年もよろしくお願いします。

注1:https://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/pdf/syutugan_toukei_sokuho/201809_sokuho.pdf

注2:https://www.wipo.int/pct/en/texts/time_limits.html

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2.年の瀬に思うーミュンヘンにて

Menlo Systems GmbH 橋口恵

今年の10月までミュンヘンにあるバイエルン州所属のバイオテック・クラスター管理組織で働いていた橋口です。ご縁があり、同じ建物内のレーザー関連企業に転職し、11月からそちらで働いています。ミュンヘン郊外にあるマックスプランク量子光学研究所のノーベル賞受賞者の研究室からスピンオフした企業で、光周波数コムやテラヘルツシステムなど先端の光学関連機器の研究開発・販売を行っています。

年の瀬の忙しさというのは少なくとも日・米・独では共通のようで、当社でも注文や依頼が立て込んでいます。とは言え、21日でクリスマス・年末休暇に入った企業も多いようです。年末・年始は12月31日から1月1日に花火などでカウントダウンはしますが、それ以外特にお祝いの雰囲気はなく、1月2日から始業の企業がほとんどです。

アメリカ時代はユダヤ教やイスラム教など様々な宗教の人に配慮して、年末に挨拶をする際には“Merry Christmas”とは言わずに“Happy Holidays”と言った方が良いよ、と同僚に教わりましたが、こちらでは普通に“Frohe Weihnachten(よいクリスマスを)”と言っている人が多いように感じます。

街ではクリスマスマーケットが賑わいを見せています。ほとんどのマーケットが11月の後半から12月23日までの1ヶ月程屋台を出店します。クリスマスの飾り、ポメス(ポテトフライ)、カレーソーセージ、フラムクーヘン(薄型ピザ)など様々なものが売られていますが、個人的には必ずグリューヴァイン(ワインにシナモンやアニス、コリアンダーなどのスパイスを入れて温めたワイン)をカップ1杯飲むのが習慣になっています。グリューヴァインを飲みながら今年の出来事を振り返ったり、来年のことを考え始めます。個人的な感覚ではありますが、年越し蕎麦のような感じです。

年末まであと少し、大変ご多忙の方も多いと思いますが、皆様どうぞ良いお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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3.世界の知財、日本の知財、日本の生きる道

顧問・弁理士 渡邉秀治

(1)トランプ政権は、知財を切り口として中国を攻撃している。中国のトップは、代々、理系の人間であり、知財の重要性を認識している。そのため、各種の補助金や優遇策を実施し、今や中国特許出願は、1,381,594件(2017年by北京三友;以下、中国データは同じ)で日本(318,479件:注1;以下、日本データは同じ)の約4倍、米国(注2;以下、米国データは同じ:602,354件 )の約2倍、中国実用新案は、1,687,593件(2017年)で日本(6,105件)の約260倍。なお、米国は実用新案制度なし。中国意匠出願は、628,658件(2017年)で日本(31,961件)の約20倍、米国(43,272件 )の約15倍、中国商標出願は、約574.8万件(2017年)で、日本(190,939件)の約30倍、米国( 435,384件)の約14倍。

(2)当方、関東経済産業局の知財経営導入事業のお手伝いを4年間行っている。その中で、信州大学生の希望者に知財教育を毎年12時間程度実施している。過去3年は、その生徒(各年、6~8人)の中に、将来ベンチャー企業を興したいという学生はいなかった。しかし、今年は3人もいた。内一人は女性。一方、下記注3に紹介されているが、中国の大学には、「校弁企業」という大学発ベンチャー企業が多数ある。代表的なものが北京大学の「方正集団有限公司」であり、年間売上げは2兆2762億円にものぼる。清華大学の「同方股份有限公司」も売上高は1兆円を超えているとのこと。そのほかにも数千億円オーダーの売り上げを誇る校弁企業が多数ある由。米国は、「特許行政が直面する課題ー平成30年6月」によれば、2016年のベンチャー投資が75192億円と、日本1529億円の約50倍で、中国21526億円の3.5倍。大学発のベンチャーも少ないが、開業率も5%程度と日本は低い(注4)。

(3)中国、米国と比較し、日本を嘆く人がいるが、日本の良さを生かして、日本独自の自由主義、資本主義を構築していかねばならない。長寿企業が世界で圧倒的に多い日本は、人と人の関係を活かし、物事を長い目で見ることで得られる知的資産(建築、仏像、工芸品なども含む)が充実しており、今後もこの観点で世界の中で生きていこうではありませんか。具体的には、

(A)日本の違い、良さを活かすには、日本の特徴である、

①人格と労働の一体化(欧米の労働の分離に対するもの)、

②ホワイトカラーとブルーワーカーの平等化、

を考慮し、

イ:ばかでもできる、標準化を徹底的に行い

(グローバル化には必須)、

ロ:日本の労働者の質の高さを活かした、標準化そのもののレベルアップを行い

(日本国内)、

ハ:その標準化業務の上に、差別化業務を構築する

(下記Bの世界トップを狙うため)。

(B)世界のトップを狙うには、上記ハに加え、

a:技術者(時には作業者にも)には、数学教育とシステム教育とIT教育を徹底し、b:開発は、プロジェクトXに見られる頑張りではなく、品質工学(田口メソッド)など数学的なアプローチで解決。

以上のような提案をしたい。第三者的で申し訳ないが。

注1:https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2018/toukei/0106.pdf

注2:https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/USPTOFY17PAR.pdf

注3:https://www.hatsumei.co.jp/column/index.php?a=column_detail&id=227

注4:http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/h29/shoukibodeta/html/b1_2_1_2.html

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