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MEBUKI IP Small Talk 8月号(2017年)

   

1.アラブ首長国連邦について

2.各社の知財戦略(知的資産戦略構築につなげよう!)

発行:めぶき国際特許業務法人
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1.アラブ首長国連邦について        パートナー弁理士 長谷川洋

先月の事務所合併・法人化から2回目のメルマガである。今月から、アラブ首長国連邦(United Arab Emirates: UAE)の知財情報を時折、紹介したいと思う。今年(2017年)になって、JETROで開催されたUAEの知的財産関連のセミナーに参加する機会を得た。参加前には、それほど興味のある人は多くはないであろうと勝手に推測していたが、参加してみると意外や意外、多くの聴講者で会場はほぼ満席であった。UAEは、知財侵害品の経由地となっているようで、セミナーに参加してみて、日本企業も侵害の対策に興味を持っているように感じた。

今回は、ウォーミングアップの意味もあって、まずはUAEとはどのような国かについてお話ししたいと思う。UAEと聞くと、映画「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」にて、トム・クルーズが世界一の高層タワーであるブルジュ・ハリファ(高さ:828m)の外窓をスパイダーマンのように登っていくシーンを思い出す方も多いであろう。このブルジュ・ハリファは、UAEのドバイという都市にある。ちなみに、ブルジュ・ハリファが世界一高い建物であるのは、2019年の途中までである。サウジアラビアで現在建築中のジッダ・タワーは、なんと1007mにも達し、2019年には世界一高いタワーとなる予定である。
http://www.ndtv.com/world-news/worlds-tallest-building-jeddah-tower-delayed-to-2019-saudi-prince-1692494

UAEは、Abu Dhabi(アブダビ)、Dubai(ドバイ)、Ajman(アジュマーン)、Fujairah(フジャイラ)、Ras Al-Khaimah(ラアス・アル・ハイマ)、Sharjah(シャールジャ)およびUmm al-Qaiwain(ウンム・アル=カイワイン)という7つの首長国から成る。首都はアブダビに属するアブダビ市、人口は945万人(東京23区とほぼ同じ人口)、国土面積は約8万平方キロ(日本の北海道とほぼ同じ大きさ)である。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/uae/data.html
UAEを構成する7つの首長国の内、アブダビの面積はUAE全土の80%を占める。アブダビは、面積のみならず、経済でも他の7つの首長国に勝っており、UAE全体のGDPの40%を占める。

アブダビに次いで経済力のある首長国は、ドバイである。首長国ドバイは、ドバイ市のみから成る都市国家である。この点はシンガポールに似ている。前述のアブダビは石油と天然ガスを外貨獲得源としているのに対して、ドバイは石油などの天然資源には乏しく、金融・観光などの第三次産業により外貨を獲得している。また、不確かではあるが、ドバイ国民の平均年収は1,000万円を超えるとの信じられない情報もある。
http://world-conect.com/dubai-market-information
なお、アブダビとドバイ以外の他の5つの首長国は、ほぼ忘れても良いほど経済的にはアブダビやドバイには劣る。

UAEは、世界的に見ても裕福な国の一つであり、一人当たりのGDP(2014年)は、42,522ドル(約470万円)と、日本の同GDP:423万円を凌ぐ。また、UAE国籍を持つ者は全体の13%に過ぎず、残り87%は外国籍を持つ者である。UAEに進出している日系企業は322社、在留邦人は2016年において3000人を超える。
https://www.jetro.go.jp/world/middle_east/ae/basic_01.html

知財について少しだけ触れると、UAEは、特許、実用新案、意匠及び商標の各出願を可能とし、PCT加盟国(移行期限:優先日から30月)、パリ条約締約国、TRIPS協定加盟国、湾岸協力会議(GCC)加盟国である。 http://www.tamimi.com/en/magazine/law-update/section-8/march-7/patent-protection-in-the-uae.html

「GCC」については、耳慣れないかもしれないが、UAEの他、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール及びサウジアラビアのアラビア湾沿岸の6か国が加盟する地域協力機構である。GCCは、欧州でいえばEUに似た機構であり、経済協力、通貨統一、軍事協力などの様々な地域協力を目的としており、特許協力は、そのごく一部でしかない。GCCの特許制度によれば、特許審査の統一のみならず、全加盟国単一特許化を図る制度となっている。このため、GCCに特許出願を行い特許の登録に至ると、自動的に全加盟国に特許権の効力が及ぶ
http://www.tamimi.com/en/magazine/law-update/section-5/april-5/international-patent-filing-systems-pct-gcc-patents.html

日本からGCCにパリ条約優先権を主張して出願することはできる。しかし、GCCはPCTに加盟していないため、PCT出願からGCCに移行することはできない。一方、UAEは、先に述べたように、PCTの加盟国であるため、PCT出願から移行可能である。

残念ながら、UAEは、2017年8月22日時点で、商標の国際登録を可能とするマドリッド・プロトコール、及び意匠の国際登録を可能とするヘーグ協定ジュネーブアクトを批准していない。UAEでの商標登録を希望する日本企業や日本人は、直接、UAEに出願するしかない。

次回は、UAEの知財にもう少し踏み込んでみる。

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2.各社の知財戦略(知的資産戦略構築につなげよう!)オフ・カウンセル 弁理士 渡邉秀治

当方、去る5月18日に株式会社情報機構のセミナー講師として東京にて知財戦略の策定などに関して講演をした。その講演の中で、聴講者18人の方に近々に、知財戦略を立案する必要があるか否かを聞いたところ、6割近くの方が「近々に作成しなければならない」とされた。

知財を活用すること、知財価値を評価すること、知財戦略を構築すること、が求められてきている。従来は、知財を権利化させる活動が主であった。低成長下では、差別化を考え、実行しないと、生き残れない。その差別化に必要なのが知的資産戦略の構築である。知財戦略は、知的資産戦略の構築につなげるものである。知財というと、特許をイメージしてしまうが、ノウハウ、商標、ブランディングなどを含むもの。知的資産戦略構築には、企業の強み、弱みの把握が必要。会社のシステム、仕組み、人事評価などが考慮対象となる。

知財戦略で、最近参考となるものがあった。それは日本ライセンス協会発行の雑誌に掲載されたもの。以下に当方が要約した2社のものを記載。

1.元キャノン専務 丸島儀一氏(弁理士)
(1)事業部門、研究開発部門、知財部門の三位一体
(2)知財経営:まず事業戦略があり、その事業戦略を実践させるために、知財面から考えられる多くの知恵を結集したもの。
(3)事業の弱みを消し、強みを増す、ことが知財戦略の不変の考え。
(4)事業戦略の構築:事業・技術・知財の先読みの情報共有に基づき構築。

①事業の先読み:事業部門が技術の変化、市場を含めた事業変化の先読みにより事業の弱みを消し、強みを増す協調と競争の戦略を立てる。
②技術の先読み:技術部門が基盤技術、事業化技術の変化を先読みし、事業の弱みを消し、強みを増す技術・知的創造の協調と競争の戦略を立てる。
③知財の先読み:知財部門が、事業を展開する国の事業関連制度、運用の変化を先読みし、変化に対応する協調と競争の知財戦略を立てる。

2.パナソニック 豊田秀夫氏(知的財産センター所長兼パナソニックIPマネジメント株式会社社長)
(1)軽くて強い組織づくり
知財収支の改善
知財ポートフォリオの組み替え

(2)戦略とオペレーション
戦略:全社の知財戦略と各事業密着の戦略の立案、推進機能への選択集中
オペレーション:別会社(パナソニックIPマネジメント株式会社)

(3)ポートフォリオ組み替え(保有特許の大幅減、将来事業に沿うよう)

(4)知財人材育成
事業分析、プレゼン力、変革力養成←ビジネススクールとの協業

(5)モノからコトへ

(6)従来(技術部門との提携)→今後(上流の商品企画から下流の営業)
従来(特許中心)→今後(データ保護、ノウハウ、著作権その他)

当方の講演は、これらを踏まえたもので、以下の項目を説明する予定。
Ⅰ.知財の守備範囲の拡大
Ⅱ.知財活用とブランディング
Ⅲ.知財戦略の立案と承認
Ⅳ.知財戦略構築事例
Ⅴ.戦略実施のスケジュール
Ⅵ.戦略実施の際の留意点
Ⅶ.知財マネージメント
Ⅷ.知財貧乏にならないために

次回は、今年の11月14日(火)の予定で、皆さまの参加を期待。

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