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HASEGAWA IP Small Talk 1月号(2017年)

   

「お礼のあいさつ文」本年もよろしくお願いします。

1.スペイン・ドイツ出張報告(-ドイツ編-)

発行:長谷川国際特許事務所

※本メールマガジンは弊所のお客様およびお名刺交換をさせていただいた方を対象に送付させていただいております。

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「お礼のあいさつ文」

昨年は、皆さまには、たくさんのお仕事をいただき、従業員ともども感謝申し上げます。今後も「クイックリスポンス」「お客様ファースト」「従業員を大切に」を心がけていきたいと存じます。本年もよろしくお願いします。

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1.スペイン・ドイツ出張報告(-ドイツ編-) 所長・弁理士 長谷川洋

(1)前回(昨年12月号)のあらすじ
昨年11月の16日から24日に、7泊9日でスペインとドイツに出張した。スペインでは、計画当初、弊所と仕事上付き合いのあるスペインの代理人Ms. Ezcurra(スペイン北部のビルバオ在)を訪問するだけの予定であった。しかし、仕事上のお付き合いのあるドイツの代理人(Schaefer氏)の好意により、Schaefer氏及び弊所顧問の渡邉弁理士とともに、Azagra事務所と企業SAMCA(ともにマドリードとバルセロナとの中間地点に位置するサラゴザ所在)を訪問した。

(2)いざドイツへ
ドイツは3泊4日では同じホテルの宿泊なので、毎日キャリーケースを運びながらホテルを変えていたスペインとは違って、体力的には楽であった。しかし、ドイツ滞在最終日の講演が頭の隅(いや頭の中央かもしれない)にはあったので、精神的には楽とは言えなかった。スペインからドイツへの移動に際し、若干のトラブルに見まわれた。スペインからの出国時、手荷物検査において、キャリーケース内に危険物があると言われた。お土産の一部に、レターオープナーがあったからだ。スペイン語で何やら言われたが、「わからない」と言ったら、英語のわかるスペイン担当者が出てきて、「航空会社のカウンターに戻って、これを預けてからまた来てください」という内容だった。言われるように行動し、再度、手荷物検査で無事通過できた。その間、30分くらい渡邉氏を待たせてしまった。この日は、移動日であり、ドイツのホテルに直行して就寝。

(3)ドイツ事務所の訪問
ドイツ滞在2日目は、Schaefer氏の提携事務所(Grund事務所)と、Schaefer氏の事務所とを訪問した。ドイツは、20年以上前にベルリンとフランクフルトを訪問(当時は企業の研究者として)しただけであり、しかもミュンヘンには初めて足を踏み入れた。20年前にベルリンの壁崩壊直後に、その崩壊した壁の近くで「壁の欠けら」を買ってきた当時と比べて、全く感じが違って見えた。

当時は、太った成人男性・女性が結構目についた。しかし、今回は、このような人には稀にしか会わず、かなりスリムな男女が多かった。Schaefer氏に後で聞いてみたところ、ドイツでも最近では健康志向の人が増えてきているとのこと。

さて、Schaefer氏の提携事務所は「Grund International Property Group」という弁理士3~4名の事務所であった。そこで、10~15分のブリーフミーティングを行った。Grund International Property Groupの所長(Mr. Grund)は40代くらいの賢そうな人であった。話の内容から、この方は医薬・化学関係の専門である。当方からは、日本の最近の判決(PBPクレーム最高裁判決)や用途発明解禁について話をした。

その後、Schaefer氏の事務所の所員とランチをとった。Schaefer氏の他、弁護士1人、事務員3名、日本側の2名でのランチであった。事務員の中の一人(60代の女性)は極めてユニークな方で、ランチの時の話の中心となっていた。他の事務員や弁護士は、いかにもドイツ人という感じでおとなしく、表情を変えず、何を考えているかわからない感じだったが(おそらく多くの日本人もそう思われているだろう)、話題の中心となっていた事務員だけは、ラテン風のおしゃべりな方だった。英語も、我々日本人に合わせてか、ゆっくり、はっきりと話してくれた。笑いの絶えないランチだったのを覚えている。

ランチの後には、Schaefer氏の事務所を訪問した。小部屋に分かれた、古いが、おしゃれなオフィスだった。スペインもそうであったが、特許事務所や法律事務所は、大部屋で多くの人が働くというより、事務員以外は一人一部屋で働くというスタイルが多い。日本とはその点が違う気がした。

(4)EPO見学
翌日の午前中はEPOを見学し、夕方はVPP(ドイツの知財民間団体)での講演であった。宿泊したホテルとEPOとの距離は車で10分ほど。朝8時30分頃にSchaefer氏にホテルまで来てもらい、EPOに入った。今回の目的は、EPOで行われる口頭審理の見学であった。EPOでは、最近、口頭審理に出願人(当然、欧州代理人もOK)を召喚し、審理期間を短縮しようとしている。この日の口頭審理 は12件であり、午前9時に、別々の部屋で一斉に開始となった。我々は、12件の口頭審理のリストをSchaefer氏に見せてもらった。12件の内、4件が日本企業が関係している案件であった(おそらく特許権者側だったと思う)。日本企業が関係する口頭審理を優先して見学することにした。ちなみに、日本企業から口頭審理に参加していた方は皆無だった。Schaefer氏の話によると、30分程度で休憩をとりながら、夜遅くまで審理が続く案件もあるとのこと。また、長時間休憩をとらずに審理を続ける案件もあるとのこと。我々が見学しようと思っていた案件の一つは、全く休憩に入らなかったので見学対象から外れた。イギリス代理人とドイツ代理人との攻防案件を見学した。口頭審理の審判官合議体の長は、スペインの女性であり、Schaefer氏曰く、英語、ドイツ語も堪能な方であった。口頭審理の部屋には、通訳が3名いた部屋もあった。休憩に入ると、互いの代理人同士がニコニコしながら雑談でもしている様子も見られた。これについても、Schaefer氏に質問すると、お互いにビジネスと割り切っているからとのこと。EPOのすぐ近くにはドイツ特許庁もある。ドイツ特許庁もEPOと同じくらいの人数が勤務しているようである。ドイツ特許庁では、扱う特許の件数自体で比較するとEPOより少ないものの、商標や意匠の審査も行うからである。

(5)VPPでの講演
海外での正式な講演は、数年前のインドに続いて、今回で2度目になる。訪問先でのミニ講演は多数にのぼるが、緊張感は全く違う。今回の講演は、特許権侵害訴訟に関するものであった。これは、VPPからの要望であった。事前準備が結構大変で、文言侵害、均等侵害をわかりやすく説明できるような資料づくりに2週間くらいをかけた。英語のスピーチには30時間くらいかけたと記憶している。ネイティヴのような流暢でスピーディな英語で講演しようすると失敗すると思い、大きな声でハッキリと話すことを心がけた。これは、20年前に、当時の企業の研究所長から、海外講演前に指導頂いたことである。非ネイティヴでも、声を大きく、ハッキリと話せば、絶対理解してもらえると。流暢に話そうとすると、よほど達者で無い限り、何を話しているかわからないとのこと。本番、12名くらいの企業知財担当者(事務所の方も少しいた)が集まった。その中に、日本の特許事務所の駐在者もいた。その方には、質疑応答時にヘルプをしてもらった。大変助かったのを覚えている。講演自体は、一方的なアウトプットなので、先ほどのような明確で大きな声で話すと、さほど問題ではない。問題は、質疑応答である。想定外の質問も飛んでくることもあるからである。最初の質問がまさにそれであった。質問者が何を質問しているか、全くわからなかった。日本の駐在者が助け舟を出してくれ、どうやら、日本の裁判所で、裁判所による勝率に差があるのかどうか?という内容だった。これについては、事前に統計的な数字を見ていたので、そのヘルプの後に回答した。

その他、日本ではダブルトラックなのかどうか(特許の有効・無効と、特許権侵害を別々に争うかどうか)、それともシングルトラックなのか(特許侵害訴訟の中で一緒に特許権の有効性も争えるかどうか)といったことを含め7件くらいの質問があった。Schaefer氏も、サクラとして、当方が回答できそうな質問をしてくれた。ただし、Schaefer氏の質問には、すぐには回答できず、何度か聞き直して回答した。これでは、サクラの意味がない。サクラなら、もっとわかりやすい質問にしてほしかった。

そうこうして1時間ほどが過ぎ、やっと講演が終了。課題はいろいろあったが、次回、改善すれば良いと思うことにした。

その後、講演主催者と参加者を含めた8名で夕食をとった。私と渡邉氏とは席は全く離れた。こちらは、参加者と結構真面目な話をした。後から聞いたところ、渡邉氏はウイットに富んだ不真面目な(?)話をしていたそうである。

(6)その他
帰りの飛行機だが、ルフトハンザ航空のストライキによって、予約していた飛行機がキャンセルとなった。どこで手続きをすれば良いか、だいぶ右往左往した。その日に飛行機に乗れないことも覚悟したが、ミュンヘンからの直行便ではなく、フランクフルト経由で帰国できる便に乗ることができた。こういうときは、一人旅よりも複数名の旅の方が心強い。渡邉氏が、この並んでいる列は違うのではないか?と気がついてくれて、先ほどの帰国の便に間に合ったことにも感謝したい。

以上、長くなったが、ドイツ出張の概要でした。

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2.契約の講演と、秘密保持契約の注意点(2) オフ・カウンセル 弁理士 渡邉秀治

当方、今年3月23日に株式会社情報機構のセミナー講師として東京にて講演をすることになった。一昨年に引き続いて行うもの。内容は、契約の基礎と技術関係契約のポイント(対象は、技術者様や法務関係者様)。詳しくは、下記HPを参照いただきたく。
http://www.johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC170315.php

なお、講師の紹介ですと、申し込み料金が割引となる。参加いただける方や参加の検討されている方が近くにおられましたら、割引用申し込み用紙(PDF)をメール添付にてお送りいたしますので、遠慮なく、下記メルアド宛にご連絡いただきたく。
h-watanabe@hplf.jp

昨年の9月号にて「秘密保持契約-注意点は何か?」と題して少しお話をさせていただいた。そのときは、契約相手がどこの国であるかによって、こちらの注意度が違ってくることをお話させていただいた。今回は秘密保持の対象について述べる。

最近の経済産業等、公的な部門で示されている標準な契約案には、秘密保持の対象を以下のように特定している。
『「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に開示し、かつ開示の際に秘密である旨明示した技術上又は営業上の情報、本契約の存在・内容その他一切の情報をいう。(*1)』*1:秘密保持の対象となる情報の特定は、できる限り具体的に行うことが望ましい。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/20111201sankou2.pdf

「開示の際に秘密である旨明示した」の点は、確かに対象を明確化する点で好ましい。しかし、これは、秘密保持を約束させられる側や、公的組織との間で通用する(好ましい)のであるに過ぎない。すなわち、秘密保持を約束させられる側(弱い立場)は、対象を明確化するために、「明示」は必要との主張をすることで、対象を限定できる可能性が生じる。
秘密を開示する側にとっては、常に明示できるわけでもなく、明示せずに開示してしまうことも多い。また、外国企業から提示される案には、上記のような限定が無いことも多い。また、日本知的財産協会が平成6年頃に作成している標準案にも、「明示」の限定は無い。明示する限定が無いと、対象が非常に広がる。この弊害を無くすため、契約書では次のような例外を入れて、広がり過ぎを防止しているのである。

a.相手の承諾を得たもの
b.相手から開示若しくは提供され又は知得した際に既に自ら所有し又は第三者から入手していたもので、その事実を証明しうるもの
c.相手から開示若しくは提供され又は知得した際に既に公知公用であったもの
d.・・・

契約は、当事者の力関係や商売関係が影響する。どのような理由付けで相手を説得するかが問われる。

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