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1.英国代理人との雑談・・・後半
2.米国の意匠特許が見直されている
3.顧問弁理士・渡邉秀治からのご挨拶
発行:長谷川国際特許事務所
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「項目」
(1)Tim氏とは・・・前月号
(2)JA KEMPについて・・・前月号
(3)雑談その1~イギリスEU離脱の場合の欧州統一特許&統一裁判所の発効開始への影響・・・前月号
(4)雑談その2~ドイツとイギリスとの対比について・・・今月号
(5)雑談その3~日本の感想・・・今月号
「詳細」
今年6月、日頃から業務上のお付き合いのあるJA KEMP(http://www.jakemp.com/en)という英国の知財総合事務所のDr.Tim Duckworth(以後、Tim氏)が弊所を訪問した。Tim氏は、毎年、春又は秋に1回、弊所に来て大量のプレゼンテーション資料を置いていき、その内の一部について30分程度のプレゼンテーションをする。今回の来日目的は、AIPPI・JAPANでの講演と、日本の顧客(弊所もその一つ)訪問である。
(4)雑談その2~ドイツとイギリスとの対比について
私から、「欧州の特許訴訟の7~8割はドイツで提起されている。英国ではなぜドイツより少ないのか?」と少し突っ込んで訊いてみた。英国での訴訟はドイツに比べて少ないか?との問いには、残念ながらYESであるとのこと。その理由は2つ。1つは、訴訟費用(弁護士費用が大きい)の敗訴者負担がドイツでは確立されているのに対して、イギリスでは確立されていないこと。このため、訴訟を提起する場合、原告は、まずドイツを考えるとのこと。もう1つの理由は、ドイツでは、特許無効と特許権侵害とは別々に争われるのに対して、イギリスでは特許権侵害訴訟の場で特許の有効・無効も争うことができるので、特許権者としてはドイツで争う方が得策と考えるとのこと。
私から、もう一つの理由として、ドイツの方が均等侵害をより広く認める傾向があるのでは?イギリスでは、文言侵害が認定されないと、ほぼ原告(権利者)が負けると聞いたことがあるが、本当か?と質問してみた。Tim氏は、これを完全否定した。イギリスでも均等侵害を認める。ドイツとの差はないと信じるとのこと。
(5)雑談その3~日本の感想
Tim氏は、日本が好きだという(私の前で嫌いだとはいわないだろうが)。特に、東京と大阪が好きだという。今回の出張でも、東京と大阪に行くとのこと。東京と大阪は、都会という点で共通するが、だいぶ違うようにも思えるが。何が好きかと問うと、街中にごみが少ない、ホテル(特にトイレ)がすばらしい、電車で容易に移動可能であること、料理が素晴らしい、などと回答。私は、内心、料理については、日本の企業や事務所がそれなりに良いところに連れていくのだから当然と感じた。他の三つについてはうなずけた。特にトイレなどは、私もいろいろな国に行くが、日本より良いトイレは見たことがない。TOTO、LIXIL(旧INAX含む)他トイレタリーメーカー万歳。
ここで、Tim氏は、少しだけ、特許にも触れた。日本の特許情報の数は、世界的にも上位。このため、外国では、日本特許調査をかなり行うとのこと。この話は、以前、どこかでも聞いた気がした。英国人から見ると、なぜ、日本の企業はこんなにたくさんの特許出願をするのだろう、と不思議がっていた。特許を取得するまでもなく、防衛の意味で出願するものが多いと回答したが、それでも不思議がっていた。おそらく、特許=矛(ほこ)であって、盾(たて)ではないのだろう。
米国における意匠特許(Design Patent)は、今まで権利範囲が狭いとの理由から、実用特許(Utility Patent)ほど利用されてこなかった。
しかし、ここ数年のアップルv.サムソンのスマートフォン特許係争において、意匠特許の権利活用の高さが脚光を浴びている。以下、今年6月20日に東京で聴講した「ダイナミックに変革する米国特許制度の現状と展望」と題した講演会の一部ではあるが、簡単に紹介したい。
この講演会は、前米国特許商標庁長官のDavid J. Kapposをはじめ、数名の米国特許弁護士による講演であった。私は、いくつかの講演の中で、特に、米国特許弁護士Matthew A. Smith(以後、スミス氏)による意匠特許の話に興味をおぼえた。
米国アップル社は、韓国サムソン社を特許権侵害で訴え、いくつかの訴訟にて損害賠償を勝ち取っているが、意匠特許権侵害による損害額の比率が極めて大きい。
アップル社の意匠特許は、下記3件である。ご興味のある方は、下記URLにアクセスされたい。
D618,677(https://www.google.co.jp/patents/USD618677?dq=D618677&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwj60d7B5vHNAhULmpQKHYGoCEQQ6AEIHDAA)
D593,087(https://www.google.co.jp/patents/USD593087?dq=D593087&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwiZvb6D5_HNAhXMq5QKHVkVDeYQ6AEIHjAA)
D604,305(https://www.google.co.jp/patents/USD604305?dq=D604305&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwiYoo6X5_HNAhXBH5QKHUytDcsQ6AEIHjAA)
意匠特許の権利侵害に対する損害賠償はなぜ高額になったか?
そもそも、部分意匠を除けば、意匠は製品全体の外観だから、部品ごとに損害を算出不能である。おそらくその点にも関係するであろう理由をスミス氏はこう述べる。
米国特許法第289条は、侵害者は利益総額を限度に特許権者に支払う責任を負うと規定しており、アップル社は同条を根拠に損害賠償請求を行ったためであるという。第289条は、意匠特許特有の規定であり、通常の特許には適用されない。通常の特許の場合、寄与率(貢献度)という論理で損害賠償額が算定される。例えば、特許発明が冷蔵庫(例えば、10万円)の場合でも、冷蔵庫の一部品(例えば、5000円相当)に特許を認めるべき特徴があるとき、5000円×冷蔵庫の個数で損害額が算定される。一昔前には、冷蔵庫の価格で損害額が算定されていたが、現在では違う。しかも、損害額は、原則、特許権者の逸失利益(侵害されていなかったならば得られたが、侵害によって失ってしまった利益)に基づき計算される(原則だから、例外はある)。このため、損害額の算定が結構難しい。
ところが、意匠特許の場合には、米国特許法第289条により、原則、侵害者が不正に得た利益に基づき損害額が算定される(こちらも、原則であるから例外もある)。米国には、ディスカバリーという制度があり、特許権者は、侵害者側の利益を証明するに足る資料を入手するのにそれほど苦労しない。
このような理由から、アップル社は、スマートフォン全体の価格に基づき、かつサムソン社側の得た不正利益に基づき損害額を請求できるので、極めて高い損害額を、しかも容易に請求できるというわけである。この事件の判決は、未だ確定しておらず、サムソン社は、損害賠償額をアップル社に支払った上で、今年3月に米国最高裁に上告し、審理中である。この事件については、WEBでも多く報じられている。ご興味のある方は、下記URLにアクセスされたい。
もし、サムソン社の上告が退けられると、米国の意匠特許は有効な武器になるといえる。
(1)私、渡邉秀治は、今年の3月31日をもって、アイアット国際特許業務法人を辞め、長谷川国際特許事務所のオフカウンセル(顧問)に就任させていただきました。今後とも宜しくお願いいたします。長谷川所長とは、20年以上に渡るお付き合いをさせていただいています。互いの信頼は、確固たるものと思っています。
私は、会社を辞めた後、1995年にアイアットの前身を東京都新宿区西新宿ライオンズマンション(7坪)で創立しました。現在、会社を44歳で辞めてから22年が経ちます。今後は、次のような活動をしていきたいと思っています。基本的には、東京や横浜と、長野とを往復する生活に変わりはありませんが、メインが著作活動と顧問活動となります。その活動の中で、皆様のもとをお訪ねすることもあろうかと思いますが、そのときは、優しく(?)対応していただきたく、お願い申し上げます。
(2)略歴は以下のとおりです。
1972年 名古屋大学理学部物理学科卒業、株式会社三協精機製作所入社
1972~1995年 株式会社三協精機製作所(現在、日本電産サンキョウ)では、特許部門に所属、東京と長野に勤務。この間、特許、実用新案、意匠、商標出願、著作権、技術導入契約、共同開発契約、特許情報分析、特許管理、国内外特許紛争(米国、台湾、香港、ドイツなど)などに従事
1981年 弁理士登録(登録番号8785)
1995年 アイアット国際特許業務法人の前身である渡辺国際特許商標事務所設立。米国、中国の現地代理人であるアトーニーと毎年face-to-faceのお付き合いを継続
2000年 渡辺・長谷川国際特許商標事務所へ名称変更
2002年 アイアット国際特許業務法人設立、代表に就任
2012年 一般社団法人国際知財活用促進連盟(=IIPP)設立 (理事)
2013年 代表から降り、パートナーに戻る。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの非常勤開始。
2015年 関東経済産業局の知財経営導入事業参画(信州大学生知財インターンシップ支援他)。広島県呉高専での知財指導。
(3)主な実績*私は評論家ではなく、実務家です。
①企業時代の実績
イ.新オルゴール特許網、冷蔵庫用ダンパ特許網確立(1982、83年)。
ロ.H自動車に特許権譲渡(1984年)、商標「ザックス」をA社に譲渡(1985年)。
ハ.タイムスイッチ(米国特許第3,727,015号)に関して米国メーカーEM社と米国にて特許訴訟し和解(1989年)。
ニ.オルゴールムーブメントに関して模倣品メーカーLA社を、特許侵害(香港特許第300 of 1986)と著作権侵害にて香港にて提訴し勝訴(1991年)。
ホ.モータに関する実施権を西独メーカーPA社から取得(1992年)。
ヘ.以上の他に、・1989年から1994年にかけ20件以上の知財紛争処理。
・技術関連契約(共同開発契約、秘密保持契約など)の作成、チェック。:計約300件
・米国特許駐在制度確立。
・社内発明規定の大幅改訂。
・技術導入による実施料支払い管理システムの整備。
・100P以上になる共同開発マニュアル作成。
②事務所経営時代の実績(1995年4月~2016年3月)
イ.訴訟案件(4) 技術的専門は、電磁気学、光学など。特許のほか、商標、契約、著作権についても経験豊富です。キャッチフレーズ は、「一歩二歩散歩」(商標登録済)。
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