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EPOは、2011年にEPC規則161および162を改正し、EPOにより作成されたISA&ISOに対する応答期間を、EPC規則161に基づく通知より「1ヶ月」を、「6カ月」に延長することを決定した。これに伴い、自発補正可能な期間(EPC規則137(2))も、EPC規則161に基づく通知より「1ヶ月」から「6カ月」に変更される。これらの変更は、2011年5月1日までにEPC規則161に基づく通知が発行されていない全ての出願に対して適用される。
・2010年4月1日のEPC規則改正により、出願人は、EPOが作成したISA&ISOに対して、EPC規則161に基づく通知より1カ月(延長不可能)以内に応答することが要求されてきた。そのため、欧州域内移行から応答期間迄の時間が短く、応答の準備を急ぐ必要があった。
・また、自発補正は、EPC規則161に基づく通知への応答期間(すなわち、EPC規則161に基づく通知から1カ月間)に認められてきた。
・EPOが作成した国際調査報告の見解書に対して応答する必要がある点は変更ないが、その応答期間が、EPC規則161に基づく通知から「1ヶ月」であったのが、EPC規則161に基づく通知から「6カ月」(延長不可)になる。また、自発補正可能な期間および欧州域内段階に入るための超過クレーム費用の支払い期限は、EPC規則161に基づく通知から「1ヶ月」であったのが、EPC規則161に基づく通知から「6カ月」まで認められる。
・英語にてPCT出願を行い、かつ、ISAとして日本国特許庁(JPO)を選択しなかった場合には、EPOによりISA$ISOが作成される。かかる場合には、欧州域内移行後、所定の応答期間内に応答する必要がある。今回の改正により、当該応答期間は、"EPC規則161に基づく通知から「6ヶ月」"に延長される。これは、EPOに提出する補正書および意見書について、欧州代理人とさらに詳細に相談する機会を与えるものである。
・この改正に伴い、EPOがISAではないPCT出願に関しても、自発補正可能な期間が、"EPC規則161に基づく通知より1カ月"から"EPC規則161に基づく通知より6カ月"になる。
EPOは、EPC規則71(3)に基づく通知(いわゆる特許を付与する旨の決定通知)に関するEPC規則を改正し、EPC規則71(3)に基づく通知を受け取った出願人が補正を希望する場合、特許料および発行料の支払いとクレームの翻訳文の提出とが不要となり、補正書の提出を許容することにした。なお、EPC規則71(3)に基づく通知は、出願人に書誌データを確認するよう要求する。この改正は、2012年4月1日以降に発行されたEPC規則71(3)に基づく通知を受けた全ての出願に適用される。
・EPC規則71(3)に基づく通知を受領した出願人は、審査段階で特許可能と判断されたテキストを承認するか否かを選択できる。英文明細書により欧州特許出願を行った出願人は、審査段階で特許可能と判断されたテキストを承認する場合、①クレームの仏語および独語翻訳文を提出し、②特許料および発行料を支払う必要がある。
一方、審査段階で特許可能と判断されたテキストを覆すあるいは修正したい場合には、出願人は、①補正したクレームを提出し、②補正したクレームの仏語および独語翻訳文を提出し、③特許料および発行料を支払う必要がある。出願人は、提出された補正が審査部に受理されるか否かも分からずに手続きしなければならず、審査部がその補正を受理しない場合には、審査手続きが再開されるようになっていた。
・また、改正前には、EPC規則71(3)に基づく通知により、出願人に書誌データを確認するよう求められていない。
・EPC規則71(3)に基づく通知を受領した出願人は、審査段階で特許可能と判断されたテキストを承認するかしないかを選択できることと、そのテキストを承認する場合の対応については、変更はない。
しかし、審査段階で特許可能と判断されたテキストを出願人が覆すあるいは修正したい場合には、改正後では、出願人は、①補正書を提出するのみで足りる。補正したクレームの仏語および独語翻訳文の提出および特許料や発行料の支払いは不要となる。
審査官が出願人の補正に同意した場合には、新たなEPC規則71(3)に基づく通知が発行される。出願人は、その新たなEPC規則71(3)に基づく通知を受領してから、クレーム翻訳文の提出および特許料と発行料との支払いを行うよう求められる。
・書誌データの確認の要求は、特許登録後に書誌データを訂正するケースを減らすために導入された。しかし、書誌データを確認しなかった出願人に特に制裁はない。
・2010年の時点において、EPC規則71(3)に基づく通知を受領した出願人が、審査段階で特許可能と判断されたテキストを補正することを希望するケースは、全体の約15%と少ないが、今回の改正は、出願人にとって経費削減となり、かつ、手続きの煩雑さを軽減するものとなる。提出された補正が審査部に受理されるか否かも分からずに補正した仏語および独語のクレーム翻訳文を提出しなくてもよいからである。
・一方、EPC規則71(3)に基づく通知の後の補正に対し、審査官が妥協して許可することは減少すると考えられる。もし、EPC規則71(3)に基づく通知の後の補正が審査官にとって受け入れ難いものである場合、さらに実質的な補正を提案するようになると考えられる。
・また、EPC規則71(3)に基づく通知が2回以上発行される場合、権利化までの時間が少々長くなることが予想される。早期に権利化することを希望される場合、EPC規則71(3)に基づく通知に対して早急に応答すること、および早期審査を要求することが好ましいと考えられる。
・改正前と同様に、登録後にも書誌データを訂正できるが、できるだけ早い段階で書誌データを確認する方が好ましいと考えられる。
・2度目以降のEPC規則71(3)に基づく通知が発行され、かつ、EPC規則71(3)に基づく先の通知に対して料金を支払っていた場合には、返金する旨が規則に明記された。
* 参考
2011年規則改正の情報は、下記の欧州代理人からの資料とEPOのWEBSITEからの情報を参考にした。
J.A.KEMP& CO., CIRCULAR "EPO INCREASES TIME FOR PRELIMINARY AMENDMENT OF E/PCT APPLICATIONS",2010.Nov. J.A.KEMP& CO., CIRCULAR "EPO ANNOUNCES AMENDMENT TO EUROPEAN GRANT PROCEDURE",2010.Nov. EPO, CA/D 12/10 "Decision of the Administrative Council of 26 October 2010 amending the Implementing Regulations to the European Patent Convention", 2010, Oct., http://www.epo.org/patents/law/legal-texts/journal/decisions/archive/20101108.html EPO, CA/D 12/10 "Decision of the Administrative Council of 26 October 2010 amending the Implementing Regulations to the European Patent Convention and the Rules relating to Fees", 2010, Oct., http://www.epo.org/patents/law/legal-texts/journal/decisions/archive/20101108a.html