HASEGAWA IP Small Talk 11月号(2016年)

1.マルチクレームをさらにマルチで引用したクレームの各国取扱
2.韓国改正特許法による手続緩和
3.ブランディングは中小、中堅企業に不要か?
発行:長谷川国際特許事務所
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1.マルチクレームをさらにマルチで引用したクレームの各国取扱

                      代表・弁理士 長谷川 洋

 少し前になります。台湾の代理人と、マルチクレームをさらにマルチで引用する形式のクレーム(俗に、マルチのマルチクレーム、あるいはダブルマルチクレーム)の取り扱いに関して話す機会があった。
日本および欧州はマルチのマルチを許容している一方、台湾、中国および韓国はこれを許容していない。このあたりまでは、御存知の方も多いと思う。
しかし、台湾、中国、韓国の三カ国では、「マルチのマルチ」の考え方に若干の違いがある。以下、例を出して、説明したい。
(例)
請求項1:AとBとCとを備える○○部材。
請求項2:Bがb1である請求項1記載の○○部材。
請求項3:Cがc1である請求項1または2記載の○○部材。
請求項4:さらにDを備える請求項1~3のいずれか1項に記載の○○部材。
請求項5:請求項1~3のいずれか1項に記載の○○部材を備える△△装置。

請求項1、請求項2、請求項3までは、どの国でもOK。
問題となるのは、請求項4と請求項5である。
請求項4は、マルチクレームである請求項3の他に、請求項1、請求項2も選択可能に引用しているので、典型的なマルチのマルチである。台湾、中国および韓国のいずれの国も、請求項4を禁止している。
一方、請求項5の装置クレームに関しては、国ごとに考え方が違う。韓国は、請求項5もマルチのマルチとして禁止している。しかし、台湾と中国は、請求項5をマルチのマルチとは扱っていない。 よって、韓国では、請求項5を「請求項1または2に記載の○○部材を備える△△装置。」と変えなければならない。台湾と中国では、変えなくて良い。

2.韓国改正特許法による手続緩和
9月に、韓国代理人が弊所を訪問し、1時間ほど話をした。ためになる情報があったので、以下にその一部を紹介する。既にご存知であれば読み飛ばしていただきたい。
(1)新規性喪失例外規定適用に関する緩和
日本では、新規性喪失の例外を受けたい場合、その旨を願書に記載して出願するか、若しくはその旨を記載した書面を出願と同時に提出しなければならない。これを忘れると、例外規定の適用は受けられない。しかし、韓国では、2015年7月29日に施行された改正特許法により、例外規定適用の手続が緩和された。その規定は、施行日若しくは施行日以降に出願日をもつ出願に適用される。従前は、日本と同様、出願と同時に例外を受ける旨の主張を行い、出願から30日以内に証明書等を提出しなければならなかった。 改正法下では、出願と同時の他、A)補正可能期間、およびB)特許査定若しくは拒絶査定取消審決の謄本送達日から3カ月以内又は特許の設定登録日の内のいずれか早い方の期間内においても、新規性喪失の例外規定の適用を主張できることになった。
もし、新規性喪失の例外の適用を受けたいのに、出願時にその主張を忘れた場合には、この規定で救済可能となる。日本特許法も、そのようにやさしくなりたいものである。

(2)分割出願可能時期の拡大
従前は、分割出願可能な期間は、補正可能期間、および拒絶査定謄本送達日から30日以内(延長可)に限られていた。改正法下では、従前の期間に加え、特許決定謄本若しくは特許登録決定の審決謄本が送達された日から3ヶ月以内または特許の設定登録日のうちいずれか早い日までの期間でも、分割出願ができるようになった。この適用対象は、改正法施行日若しくはそれ以降に特許決定謄本若しくは特許登録決定の審決謄本が送達されたものである。日本に近い規定になったように思われるかもしれないが、日本の場合、拒絶査定不服審判を請求した後に特許査定若しくは特許審決を受けた場合には、分割できない。この意味では、韓国の方が日本よりも分割出願の機会は多いということになる。

3.ブランディングは中小、中堅企業に不要か?

                 オフ・カウンセル 弁理士 渡邉秀治

 当方、現在、2社のブランディングのコンサルティングをしている。私自身がブランディングに強いわけではなく、一緒にコンサルしている方がブランディングの専門家であり、私も非常に勉強になっている。ブランディングは、外向けのイメージが強いが、内部告発やSNSが盛んになっている現在では、従業員教育こそがブランディングの基礎であることを念頭に置かなくてはならない。また、ブランディングの基礎は、個人のブランディングである。長年の信頼、つきあいで仲間、友人を作る。これこそが、ブランディングの基礎。
その延長に、中小、中堅企業のブランディングがある。30年、50年と生き残ってきた会社は、ブランディングがしっかりしている証拠。ただし、今後、さらに20年、50年、100年と生き残っていくには、今までの延長のブランディングではなく、戦略的なブランディングが必要となってくる。京都の「吉兆」は、食べ残しを使い、それがオープンになり、あっという間に無くなってしまった。雪印のように大きな会社は、一旦、ブランド力が落ちても10年もたつと再建される可能性がある。しかし、中小、中堅企業は、悪評判が一度生じると、倒産の可能性が高くなる。これは資金力の差。そのため、中小、中堅企業こそ、ブランディングをしっかり行う必要がある。
確かに、商標権の取得は、今後の生き残りのために必要であるが、商標権はブランディングの一部でしかない。会社を好きになってくれる従業員、外部の人をどのようにして作っていくか、他社との差別化ポイント(好きになってくれるポイント)をどう築いていくか、が重要になる。
ブランディングの専門家に、ブランディングの基本的な考え方、手法を教えていただいており、その教えを皆様にもお伝えしたいと思っている。

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